力の糸口

「きゃあ……!」


 攻撃を受けて飛ばされ、めちゃくちゃに転がる。そしてまた立ち上がる。すでに何回目なのか分からないその過程をまた繰り返した。


「アルカ、あまり無理しないで」


 私を心配する声にもただ歯を食いしばるだけ。魔力で作り出した剣を両手に一つずつ握ったまま、もう一度前に突進した。


 ――天空流〈彗星描き〉


 魔力をまとって突進する。それを阻止したのはリディアお姉さんだった。右手にはマチェテ、左手にはナイフを持ったまま。でも私の攻撃を防いだのはマチェテだけで、ナイフは私の隙を狙った。


「っ!?」


 体を後ろに反らしてナイフを避けた。でも姿勢が崩れてしまった。リディアお姉さんはその隙を逃さなかった。


 ――『灰色の猿』専用結火剣術〈紅蓮の鎖〉


 マチェテで爆発が相次いで起こった。爆圧が私の魔力剣を破壊し、私まで衝撃波で吹き飛ばした。そうして私はまた飛ばされてしまった。しかし、今回は空中で回転して姿勢を変えた。


 ――天空流〈ホシアメ〉


 無数の魔力剣をリディアお姉さんに浴びせた。けれどお姉さんはその全てを〈紅蓮の鎖〉で壊した。そして私が〈魔装作成〉で新しい魔力剣を作った瞬間、鋭い跳躍で私の目の前に現れた。


「!?」


 同時に振り回された剣がぶつかり合った。結果は私の魔力剣の一方的な敗北。しかしリディアお姉さんは私の魔力剣を破壊しただけで、それ以上追撃してこなかった。


「焦っても意味はないわ。知ってるでしょ?」


 リディアお姉さんの訓戒を聞いて、私は頭を下げた。


 知ってはいる。修練を手伝ってほしいという私の甘えにリディアお姉さんが最善を尽くして付き合ってくれているのも、私がむやみに飛びかかるだけなのも。


 でもお姉様が現場実習に行ってからもう半月が過ぎた。その間、私に何か発展があったのかと聞くと、全然。ジェフィスお兄さんのアイデアをテストしてみようと色々やってみたけれど、収穫は一つもなかった。そもそもどうすればいいのかさえ分からないので当然だった。


 今は戦いながら魔力を感じ、自分の魔力を変化させることができるかを試していた。一番多く試した方法だけど、今までは全く効果がない。


 それでもこの方法をよく試した理由は……直感だった。


 理由はわからない。ただこの方法が正解だという漠然とした確信があった。でも根拠は全くなく、失敗だけがどんどん累積していた。ここまで来たら、私がただ時間だけを浪費しているのじゃないかなって不安さえ生じた。


 どうやらその焦りがリディアお姉さんにも伝わったようだった。


「アルカ、それで体調が悪くなったら主客転倒よ」


「私も知っています。でも……」


「もし今やるのが効果がないとしても、貴方が弱いわけではないわよ。今までの貴方を見せるだけでも十分だと思う」


 リディアお姉さんはそう言ったけど、それほどではないだろう。今までの私ならもうお姉様もよく知っているから。もしそれで十分だったら、現場実習に行く前にすでに執行部入部を許可していただろう。


 私が納得できなかったことをリディアお姉さんも感じたようだった。お姉さんは真剣な顔で私に近づいた。


「……本当に納得できないなら、いっそのこと別の試みをしてみたらどう?」


「別の試み……ですか?」


「ええ。たとえばリディアが特性を使うときの感覚を模倣してみるとか」


 特性を使う時の感覚。少し思い当たる部分はある。


 自分自身の魔力を使うときと、『万魔掌握』で魔力を集めて使うとき。見た目は同じ白光技にすぎないけれど、私自身の感覚は少し違った。多分他の特性はまたその特性なりの感覚があるだろう。


 ただし、その方法はすでに試してみた方法だった。それも一番先に。当然、何の所得もなかった。そして自分でもこれじゃないという妙な予感がして、直ちにあきらめた方法だった。


 もちろんリディアお姉さんも知っているはずだ。その時も見守っていたから。それでもこれを提案するということは……。


「ちょっと考えてみたの。始祖オステノヴァ様がどのように多様な能力を扱ったのか……についてね」


「何かわかったんですか?」


「わかったというほどじゃないわよ。ただの推測だよ。それでもリディアもジェフィスに負けるわけにはいかないからね。外見は小さくてもリディアがお姉さんなのに」


 リディアお姉さんは頬を可愛く膨らませながら鼻息を吹いた。それとなく気にしていたんだね。


「『万魔掌握』が無限の魔力を扱う原理は何?」


「え? それは……周りの魔力を引き込んで……」


「そして貴方はぶつかりながら魔力を感じるのが正しい方法だという予感がしたんだよね?」


「……? はい、そうだったんですけど」


 リディアお姉さんが何を言おうとしているのかよく分からない。二つともすでにリディアお姉さんも知っている事実だけど。


 理解できない私を置いて、リディアお姉さんは指を一本立てた。


「実はずっと模擬戦をしながら感じたことがあるの。貴方の魔力の感触が少し変わったみたいだから」


「魔力の感触ですか?」


「ええ。微妙な違いなのではっきりはないけど……ほんの少し暖かくなったような感じだね。まるで熱気を抱いたかのようにね」


 熱気。その単語が気になった。リディアお姉さんの特性は火炎系の変種である『結火』。つまり熱気と関連があるから。


「それでちょっと考えてみた。もし『万魔掌握』が他の能力を使えるなら……それはその特徴と関係があるんじゃないかってね」


 ……思いもよらない観点だった。しかし、聞いてみるともっともらしい。


「もしかしたらリディアと模擬戦を重ねながら、すでにある程度リディアの魔力を集めたのかもしれない。だからそれを感じて扱う練習を並行するのはどうかしら? ……と思ってたけど、どう?」


 最後に少し不安そうにためらうのがあまりにもリディアお姉さんらしい。


 しかし、私にはかなり大きな悟りをくれた言葉だった。だからそんなに気後れする必要はないのに。


「ありがとうございます、リディアお姉さん。一度やってみます」


 私は気を引き締めてまた修練を始めた。


 お姉様がどんな〝条件〟を持って出てきても、必ず満足させることができる人になってやる。


―――――


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