遺言
「お姉様、今お姉様がどれだけ怪しいか分からないですよね?」
「……う、うん? 私はよく分からないけど?」
「……」
痛い! 視線が痛い!!
私はじっと見つめるアルカの視線から逃げるために顔を背けた。それがアルカの疑いを煽ることを知りながらも。
予想通り、アルカは疑い深い目つきを全く見せなかった。
「お姉さん、私本当に真剣に聞いてるんですよ。率直に話してください」
「ほ、本当に大丈夫だったってば。そもそも貴方が見たのは夢だけじゃない? 単純な夢を重く考えすぎじゃないの?」
「……それは」
アルカの目が揺れた。
よし、チャンスだ!
「心配してくれるのは本当にありがとう。貴方のおかげで本当に元気が出るわ。でも、あまり心配しすぎると貴方の心が病んでしまうかもしれないわよ? そして私もむやみに無謀なことばかりするほどのバカではないの」
「……違いましたか?」
アルカは本当に驚いた顔をした。
こ、この……。
「と、とにかく! 私は本当に大丈夫よ。今も元気じゃない。貴方こそ夢で見たことをどうしてそんなに意識するの?」
「……予感がしました」
「予感?」
「はい。その夢が本当だという予感です。理由などはありませんけど……お姉様は今までもたくさん怪我をしてきたし、放っておけば一人でもっと傷つくという感じがします」
大げさだね。私も別に望んでそうなるわけでもないし、実際に怪我をすることはあまりない。ミッドレースアルファ・プロトタイプや完成体はちょっと規格外だからそうなっただけで。
「根拠もない予感を気にしすぎるんじゃないかしら? そして私が修練や人を救うのが好きではあるけど、だからといって自ら苦痛を喜ぶほどのマジョヒストではないもの。望んで怪我をするわけでもないし、安心していいわよ」
「でも、好きなことをするためには傷つくことくらいは甘受するじゃないですか?」
「……それは否定しないわ。でも今までひどく怪我をしたことはなかったの。怪我をしないためにもっと強くなろうとしているし。だから……」
「信じられません。私が信じるのをほしいのなら証拠をください。ロベルとトリアが私に隠しているもの、ジェリアお姉さんが持っている資料。全部私にください。教えてください。お姉様がアカデミーに来て何をしたのか、どんなことを経験したのか、そのすべてを私にありのままに」
それは困る。
四年前にはミッドレースアルファ・プロトタイプと戦う途中、ひどい重傷を負った。そして先日の視察では完成体を相手に腹部に大きな傷を負った。正直、二つとも私だから生き残っただけで、平凡な生徒レベルだったらもう死んでいるだろう。
その上、その傷は私が相手より弱くて負ったものではなかった。二つとも人を守るために負った傷に過ぎない。でもそれが知られてしまえば、せいぜい強くなっても依然として傷つくというイメージができてしまう。そうなるとなおさらアルカの追及から抜け出せなくなってしまう。
しかし私がそのようなことを考えるために固まっていること自体が、アルカにはとても怪しく見えたようだ。
「一応四年前に何があったのかははっきり知っておくべきですね」
「……今日に限ってしつこいわね」
「そういうお姉様は今日に限ってぐずしていますね。普段の堂々としたお姉様はどこに行ったんですか?」
「だから嫌なの?」
半分冗談でそう言うと、アルカは首を横に振った。
確かに私を見つめる眼差しに敵対感や嫌悪感などはない。でも何だろう、私の心が暴かれるような感じは。アルカにこんな感じを受けるのは初めてだ。
「堂々としたお姉様も、ぐずぐずしているお姉様も、修練するお姉様も、修練後の汗が本当になめたくなるお姉様も大好きです」
「ちょっと待って!? 最後に何か聞き流せない冗談が割り込んだ感じがするけれど!?」
「そんなお姉様だから無理して傷つくのが嫌なんです。前にジェリアお姉さんが不平を言うのを聞いたことがあります。お姉様は何があっても人を頼ろうとしないんだって。ロベルとトリアも同じ話をしました。そんなお姉様だからもっと不安なんです。その不吉な夢が本当に事実のようで……」
心配してくれるのは嬉しい。アルカも私のことをそれほど考えてくれるということだから。
でも、私は本当に大丈夫だけど。むしろみんな私を心配しすぎているような気がする。お願いだからやめてほしい。特にアルカはなおさら。
「アルカ。夢は夢だけなのよ。私を心配してくれるのはありがたいけれど、夢のせいで現実の私をそのように扱ってしまったら私が困るわ」
「……」
アルカはしばらく黙っていた。
私の話に納得してくれる様子ではなかった。ただ物思いにふけっただけだった。何を考えているのか分からないから不安だね。しかし、話しかけるのもちょっとアレだ。
やがてアルカはまた口を開いた。
「〝だから、さようなら。愛らしくて憎らしい妹〟」
突然の言葉。予告なしに突然出てきたその言葉が何を意味するのか、最初は気づかなかった。私の記憶の中にある言葉だったけど、最近は思い出したことがなかったから。しかも、アルカの口からその言葉が出ると思ったことは一度もなかった。
いや、アルカだけじゃない。その言葉を知っている人が他にこの世界にいるはずがない。そのため、他人の口から出たという事実に直ちに反応できなかったのだ。しかし、それも仕方なかった。
……なぜなら。
それは『バルセイ』で私がバケモノに変わる直前に最後に言った言葉……つまり、
ついに状況を理解した私の顔から血の気が抜けた感じがした。そしてアルカはそんな私の表情の変化を逃さなかった。
「この言葉、ご存知ですよね?」
「そ、それ……どこで聞いたの?」
「夢で見ました」
これ以上背を向けることはできない。アルカが言った夢には単なる夢以上の何かがある。
そう思った瞬間、私は思わずアルカの両肩を手でぎゅっと握っていた。
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