合流と決着
なぜ奴がじっとしていたのか少し気になったけれど、様子を見てすぐ納得した。
奴の体の周りに渦巻くのは『崩壊』の魔力だった。そして私が粉々に粉砕した『崩壊』の奴の死体の欠片が消えた。『倍化』の奴がその欠片を吸収し、そのまま『崩壊』の魔力まで手に入れたのだ。それに戦いながら消耗した魔力まで回復したようだ。
【特性をあんなに簡単に吸収できるの?】
[いや、推測だけど……多分『倍化』の力で吸収力自体を増幅したと思うわ。同じ活用法がゲームにも描写されたの]
人質の安全を無視して討伐を優先したなら、おそらく吸収する前にやっつけることができただろう。
……そんな風に勝っても意味はないけれど。
一方、私の傷は『崩壊』の影響で再生が遅い。でも再生に魔力を注ぎ続けなきゃさらに悪化するだろう。それと傷そのものの影響で、今私は全力を発揮できない。〈選別者〉の圧倒感も減ったのが感じられた。
一方、ミッドレースアルファ完成体はまた魔力を回復し、二つの特性まで一つに合わさった。でも一匹は討伐したし、残りは一匹だけ。
……いいペナルティだね。
「グルルル……!」
奴がうなり声を下げて姿勢を下げた。突進してこようとしているのね。拳にはさっきのように『倍化』で増幅された『崩壊』の魔力を込めていた。私もそれに立ち向かうために足をかがめた。
でも地面を蹴る直前、私の後ろから突然飛び出す人影があった。
「お嬢様!!」
まさに疾風のような突進。私でさえ瞬間的に反応できなかった。私の目がやっとつかんだのは、黒いメイド服のスカートの裾だけだった。
「トリア!?」
「よくもお嬢様を!!」
トリアの手にはすでに地獄の炎のように熱い『獄炎』の魔力が集中していた。
――極拳流奥義〈深遠の拳〉
トリアとミッドレースアルファの拳がぶつかり合った。増幅された『崩壊』と圧縮された『獄炎』が瞬く間にお互いを噛みちぎり、魔力が暴れて周りをめちゃくちゃに破壊した。
「くっ……!?」
トリアは歯を食いしばって後退した。トリアの手もミッドレースアルファの手もすっかり満身創痍になっていた。
「私の奥義を相殺するとは……なかなかの奴ですね」
「トリア、大丈夫?」
「……お嬢様に聞きたくはありませんが」
トリアは私を振り返った。そして私の傷を見て顔を曇らせた。
「申し訳ありません。私が早く来ていたら……」
「そんなのは構わないわよ。まだ戦えるから。私の補助を……」
「その状態になっても戦うということですか!!」
びっくりした!?
その声の大きさに心から驚いた。しかしそれよりも、今にも泣きそうなトリアの表情が私を当惑させた。
「お嬢さんはいつも……!」
「ちょ、ちょっと待って! 説教は後で聞くわよ! 攻撃が来るのよ!」
嘘ではない。本当にミッドレースアルファが大きな魔弾を作り出していた。トリアもそれを感じ、舌打ちをしてそっちを振り向いた。
「説教、ご覚悟ください……!」
トリアは魔力を集中させた蹴りで魔弾を打ち返した。だけどまっすぐ突進してきたミッドレースアルファがまた『崩壊』を込めた拳を突き出した。トリアは今度は避けたけど、他の拳が彼女を追いかけてきた。さっき壊れた拳だった。
「!? この再生速度は一体……!」
一方、トリアの手はまだ回復していない。彼女にミッドレースアルファが拳と魔弾の猛攻を浴びせた。トリアは残りの手と足、そして魔力を利用して攻撃を受け流した。でも『崩壊』の魔力が少しずつ彼女を傷つけていた。
やっぱり私が出なければ……!
「どうかお休みください、テリア公女」
――バルメリア式結界術〈デリンの格子〉六重展開
その瞬間、トリアの前に〈デリンの格子〉が六重に展開された。その防御結界はミッドレースアルファの攻撃で簡単に破壊されたけれど、その間トリアが私を抱きしめて大きく後退した。
そして後退した私たちの前に、何人かの人が堂々と立った。
ジェリア、ロベル、そしてケイン王子。『バルセイ』の攻略対象者のうち、今回の視察に同行したメンバーたちだった。
「少し遅れたようですね。申し訳ありません」
ケイン王子が代表としてそう言った。ジェリアとロベルは私のお腹の傷を見て魔力を燃やした。
……おっと。こいつら頭に来たわね。
「君は休んでろ」
「いや、私も……」
ジェリアの言葉に反発したけれど、その瞬間ロベルは冷たい眼差しで私を睨んだ。
「休まなければ、今その傷についてアルカお嬢様にお話しします。その調子で無理をされることまで全部」
「うっ!? そ、それは卑怯じゃない!」
抗議してもロベルはただ鼻で笑うだけだった。クソ。
「せめて戦術でも任せてちょうだい。じっとしていられないわよ」
「……それで君が大人しく下がってくれるならば」
ジェリアはその言葉を残して地面を蹴った。他の三人も彼女の後を追った。
「まず足を引っ張る!」
――『無限遍在』専用技〈遍在分身〉
ケイン王子が分身を十体も生み出した。そして本体と分身が同時に〈暴悪のもり〉を展開し、ミッドレースアルファを拘束しようとした。
「クオオオオ!」
でもミッドレースアルファが巨大な魔力砲を発射した。その一撃でケイン王子の分身が全滅した。そして辛うじて回避したケイン王子の目の前に奴が現れた。
「うっ!」
強い拳がケイン王子を殴り飛ばした。他の誰かが反応する暇もなかった。それでもロベルが幻影で奴の注意を引いたけれど、奴は正確にロベルの位置を特定して魔弾を撃った。
「生意気な!」
「なめるな!」
――『冬天』専用技〈冬結界〉
――極権流〈頂点正拳突き〉
ジェリアは冷気の結界を展開した。ロベルは魔弾を相殺した。でもミッドレースアルファは全く影響を受けていないような姿で拳を振り回した。二人とも拳で殴られて飛ばされてしまった。
その時、ケイン王子が奴に飛びかかった。彼のバトルアックス形の結界兵器の中に赤い光が宿っていた。
「はああああ!」
赤い光が宿った斧と『崩壊』の魔力をまとった拳がぶつかった。斧は弾き飛ばされたけれど、奴の拳も割れて血を流した。でも奴はすぐに他の拳を突き出した。ケイン王子は拳を防いだけど、力に勝てず飛ばされてしまった。
「こいつ、強いな……!」
ジェリアはそう言って唾を吐いた。血が混じって赤くなった唾だった。
彼女をはじめ、みんな大きな傷はなかった。でもミッドレースアルファはさらに元気だった。ケイン王子が負わせた傷もすでに再生済みだ。しかも魔力量もまだ十分だ。
今度は奴が先に動いた。最初のターゲットはケイン王子。魔力をまとった拳の攻撃を、ケイン王子は斧で防いだ。しかし防御の瞬間、突然現れた魔力の塊がケイン王子を殴った。
「うくっ!?」
後ろからジェリアとロベルが同時に飛びかかったけれど、奴は蹴り一回で二人とも吹き飛ばした。瞬間的に奴が蹴りを出していた足が二つに増えたのだ。他方向から攻めていたトリアも二つに分裂した右手のパンチで押し出された。
「奴の特性は『倍化』よ! 力を増幅するだけでなく、身体部位や魔弾の
それが『倍化』の厄介なところだ。それでもあいつは上限が二倍だからマシなだけ。
私は口を開いたついでに指示まで出すことにした。
「ジェリア、トリア! 前面に出て奴の注意を引いて! ロベルは幻影で補助して! そしてケイン殿下! 分身を何体か作って牽制して、本体はこっちに来てください!」
「急に何……」
「黙って来てください! 早く!!」
三人はすでに私の指示通りに動き始めた。唯一、言うことを聞かないケイン王子は大声で呼び出した。彼は少し不満そうだったけれど、とりあえず私のところに来てくれた。
「殿下、この一帯を巨大な結界でお覆いください。〈リアンのゆりかご〉三重展開でいいと思いますの」
「なぜその技を……」
「雑談は後でしましょう。結界をご展開なさった後は、その結界魔獣をご解放ください」
私は彼の斧に宿った赤い光を指差した。すると彼は目に見えるほど当惑した顔になった。
「お待ちください、結界魔獣は私の側近と父上さえも知らない私だけの秘密です。それをどうやって……」
「雑談は後でしましょうっておっしゃいましたよね?」
「……無理です。この魔獣は極度に濃密な結界の中でしか生きられない奴です。この結界兵器でなければ……」
「
「……!」
それだけで、ケイン王子は私が言いたいことをすべて理解した。
――バルメリア式結界術〈リアンのゆりかご〉三重展開
半透明で巨大なドームのような結界が周辺一帯を覆った。まるで四方から体を締めるような感覚が感じられた。
直後、ケイン王子の斧に宿っていた赤い光がまるで煙のように漏れ始めた。やがて斧から完全に抜け出した光がますます大きくなり、建物よりも巨大な形状を作った。
それは鳥。
形も、そして魔力も巨大で圧倒的だった。戦っていた三人とミッドレースアルファの視線もすべてその魔獣に向いた。
「グオオオオ!!」」
「わっ!?」
ミッドレースアルファが魔力の衝撃波を放ち、三人を押しのけた。そして大量の魔力を集中して巨大な魔力砲を発射した。濃密な『崩壊』の怒涛が結界魔獣と正面からぶつかった。でも結界魔獣は魔力砲をさりげなく突き破ってミッドレースアルファを襲った。
「クルァッ!!」
ミッドレースアルファはまた魔力の衝撃波を放ち、結界魔獣を押し出した。でもすでに奴は全身をめった斬りされたように血まみれになった。このまま攻め続ければ倒せるだろう。
でも……。
「くっ、はあ……!?」
ケイン王子は息を吐きながら座り込んだ。彼の魔力が非常に弱くなり、赤い巨鳥も消えてしまった。その短い顕現だけで魔力を全部消耗してしまったのだ。
もちろん私はすでに予想していた。
「ありがとうございます。あとは私にお任せください」
「テリア公女!?」
――天空流〈彗星描き〉
瞬く間にミッドレースアルファの至近に到達する。
ケイン王子のおかげで、奴の動きは大きく鈍っていた。それで私は栄光の剣に魔力と精神を完全に集中した。そしてその集中が頂点に達した瞬間、剣を縦に大きく振り回した。
――天空流〈三日月描き〉
巨大な魔力の斬撃が奴を一刀両断し、『万壊電』の魔力がその体を残さず燃やして崩壊させた。
焼けた両腕と黒く焼けた地面だけが、その場に残った。
―――――
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます