修練騎士団
修練騎士団。
前世で言えば生徒会と似ているけど、根本的な趣旨は少し違う。
もともとは予備騎士である騎士科の生徒たちの模擬騎士団だった。その役割も騎士と関連した実習だけ。そうするうちにますます役割が拡張され校内のいろいろな事案を処理する機構になり、ついに生徒会のような存在になったのだ。
もちろん実際に生徒会の役割をするのは首脳部だけで、以外の騎士科の生徒たちには騎士実習をするだけ。
私は今その修練騎士団の会議室にロベルと一緒に来ていた。
「紹介しよう。来るやいなやボクに勝ったことで有名なテリアだぞ」
どうして自分が負けたという話をそんなに誇らしげな表情で言うのよジェリア……。
いや、ぼーっとしている場合じゃないわ。私は一歩前に進み、できるだけ優雅に見えるように挨拶した。
「こんにちは。ただいまご紹介いただいたテリア・マイティ・オステノヴァです。入学したばかりの新入生なのでまだ分からないことが多いですが、これから頑張ります。隣にいるこの子は私の執事であるロベルです」
「ロベル・ディスガイアです。お嬢様を近くで補筆しようと同じ科に入学しました」
「へえ、公女なのにすごく礼儀正しいね」
しまった、間違えたかしら? 距離を置くのはよくないけれど、だからって甘く見るのも困るんだけど。
そう思いながら今言った人を見た。端正な金髪と緑の目が印象的な美男だった。年齢は恐らくジェリアより年上。幸い、彼の笑顔は悪い気配もなく、純粋に嬉しそうだった。
それより顔が何か見覚えがあるんだけど。
「お会いできて嬉しいよ。僕はガイムス・レス・ドロミネだ。今はそこにいるゴリラ執行部長の補佐を務めている」
「誰がゴリラですか、誰が」
あ。
名前を聞いて思い出した。
ガイムス・レス・ドロミネ、『バルセイ』のストーリー後半に出てきたサブキャラだ。後半のストーリーでかなり重要だった人だ。
そういえば『バルセイ』で登場した時はもう卒業した状態だったよね。彼がまだ在学中であるのを見ると妙な気がする。
それよりジェリアが執行部長だって?
「ガイムス先輩が執行部長ではないんですか?」
「先日ボクに部長の座を押し付けたぞ」
不愉快そうに舌打ちするジェリアを見ると不本意だったようだ。
「執行部長渡したのは確かに約束通りじゃん?」
「それはボクが先輩に勝てばもらうという約束だったはずですが」
「言ったじゃん、もう君は僕より強いんだって」
「言葉ではなく勝負しましょう」
あれ? それはジェリアがガイムス先輩に負けたってこと?
ジェリアを見ると、彼女は私の疑問を察したかのようにまた舌打ちした。
「新入生の時に一度負けた。だがその後手合わせをしてくれずに逃げるだけだったぞ」
……そうなんだ。
確かに、ガイムス先輩の特性はほとんどすべての物理的特性に優位なすごい能力だから。新入生時代ならジェリアが負けたのも理解できる。
その他にも、仕事があって不在の団長と副団長以外にはほとんど全員参加したようだ。
「じゃあテリアさんは執行部に入るかい?」
「本人がそうしたいんですから。先輩はどう思いますか?」
「部長は君じゃん。君が判断しないと。まぁ、でも個人的には君に勝つほど強い子を拒否するつもりはないよ」
そのような感じでジェリアとガイムス先輩が話を着実に進めた。でもみんながそれに同意するわけではなかった。
「それは性急すぎる判断ではないでしょうか」
緑色の髪をした眼鏡少年、総務部のテニー・リブライス先輩だ。こちらも『バルセイ』に登場したサブキャラだ。
「執行部は校則に従って生徒たちを取り締まって秩序を維持します。実力が重要なのは理解できますが、それ以上にその役割に相応しい内面を持っているかがより重要です」
その通りだ。私が立証したのも物理的な実力だけだし。
しかし、ジェリアはその指摘を軽く流した。
「相応しいぞ。もしそうでないなら、後始末はボクが責任を持ってする」
「壮語する根拠はありますか?」
「勘だ」
それはダメじゃないの!?
反射的にジェリアをさっと振り返った。しかしジェリアは意気揚々とした顔で胸を張っていた。
そこで胸を張ることがどこにあるか分からないけど!!
テニー先輩も私と似たような考えなのかため息をついた。でも出た言葉は私の予想とは少し違った。
「仕方ないですね。率直に問い詰めたい気持ちは山々ですが、その勘の実績を考えると」
一体勘に何の実績があるのよ!?
思わず突っ込みを言いそうになったけれど、じっと考えてみるとゲームでもジェリアは勘が良いということが浮き彫りになった。しかもその勘で敵や重要な手がかりを見つけたりもしたし。もしかしたら魔力の感覚と関係があるのかもしれない。後で研究してみないと。
まぁそれを除いてみても、そもそもここで人格を証明することは不可能だ。執行部が入部する時からそんなことを厳密に問い詰めるほど厳しい所でもないし。テニー先輩もただ名目上言ってみた言葉だったのだろう。
それよりそろそろだろうか。
話がまとまるやいなやジェリアは前に出た。いいタイミングだね。
「いきなり申し訳ないが、実はテリアが話したいことがあるみたいだ」
ロベルに目を向けた。彼は小さな箱を取り出して会議室の机の上に置いた。練習場で発見した邪毒陣を入れた箱だ。箱を開けると、依然として形を維持している邪毒陣が現れた。
「これは?」
「アカデミーの敷地で発見した邪毒陣です」
「……それ、本当なのかい?」
ガイムス先輩の眼差しが鋭くなった。やっぱり元執行部長、真剣になると意外とプレッシャーがある。
もちろん私は後ろめたいことはない……わけはないけど、バレない自信はあったので堂々とした態度をとった。
「第二練習場の地下で見つけたのです。この破片と照らし合わせてみてください」
「確認は後ほどしてみることにして、それで? これを設置した犯人を探そうということかい?」
「それも必要ですが、実は邪毒陣はこれ一つではありません」
「ああ、つまり僕たちが乗り出して除去作業をしないとっていうことだね」
ガイムス先輩は邪毒陣をじっと見つめながら眉をひそめた。恐らく私の提案ではなく、邪毒陣の気まずさのためだろう。
テニー先輩も箱の中をのぞき込んだ。
「邪毒陣が大量にあるのは確かに問題ですが、この程度の濃度と大きさならただの不良生徒たちのいたずらレベルですね。一つ一つが大きな問題になるとは思いませんが」
テニー先輩の言葉にほとんどの生徒が頷いた。
確かに一般的には正しい言葉だ。これが特殊な邪毒陣じゃなかったらね。しかしテニー先輩の特性はこのような邪毒陣の真価を知ることができる能力ではないので仕方がない。
一方、ガイムス先輩はやっぱり正確に見抜いていた。
「それがそうじゃないよ。これ、多数の邪毒陣が連動して領域内の邪毒濃度を強制的に高めることができる特殊な陣だよ。それがこのアカデミーに設置されたというのは単なるいたずらじゃない」
会議室がざわめき、生徒たちの面々に戸惑いが広がった。
アカデミーの時空亀裂がどこにあるかは極秘だけど、存在自体は知られている。そして災害の可能性を占うことができないバカはここにはいない。
「それは本当ですか?」
「僕の能力をかけて保証するよ。そしてこれ、邪毒陣だけで完成するんじゃない。恐らく邪毒陣を合わせて起動させる中心になる魔道具が別にあるだろうね」
すごい。邪毒陣だけ見てもそこまで当てた。話してもいないのに。
ガイムス先輩、どうやら私が思っていたより有能らしい。『バルセイ』の制作陣、どうせならこの人も攻略対象者に入れればよかったのに。
私の思考が少し脱線した間、修練技師団員たちは議論を続けた。
「その診断が本当なら、単なるいたずらとは思えませんね。もしいたずらなら、それはそれなりに度を越した生徒たちに重懲戒を下さなければなりませんが」
「そうだね。だからジェリア、部長としてどう?」
「もちろん探して全部なくさないと。ちょうど今は執行部が引き受けた仕事もあまりないので人員も多く動員できます」
おお、さすが修練騎士団。放っておいても全部やってくれそう。さらに話すつもりがなかった部分まで自分でてきぱき進み始めた。
「やはり『安息領』の仕業でしょうか」
「知らないよ。でもあいつらがやりそうなことだということは確かだよ」
安息領。
『バルセイ』の主要敵集団でもあった似非宗教でありテロ集団である。
この世界には邪毒神の他にも『五大神』という正統な神々がいる。しかし安息領は彼らの代わりに邪毒と邪毒神に仕える狂人たちだ。しかも邪毒の崇拝を強要するためにテロまで犯す。
そして堕落したピエリがその安息領の八人の最高幹部である『安息八賢人』の一員だ。
そのような意味で安息領の仕業は事実だけど、ピエリを告発するには証拠がない。一応名望の高い大英雄である彼を証拠もなしに告発することなんて可能なはずもないし。
とりあえずは邪毒陣を除去することで満足すべきだろうかしら。
「ああ、そしてこの邪毒陣は強力な隠蔽術がかかっていました。邪毒を探知する魔道具が必要でしょう」
「うん? そんなのってアカデミーにあったっけ?」
「執行部備品として三つあります。元執行部長がそれも知らなかったらどうするんですか」
「ごめん、使ってないのはよく覚えていなくて。正直、アカデミーで邪毒を探知することは別になかったよ。それに、そんなことはジェリア君が勝手にしてくれるじゃん?」
「殴ってもいいですか?」
「僕死にたくないんだ」
よし、落語はさておいて、結論は大体出たようだね。残ったことは割り込まずに任せておいても大体解決できそうだし。捜索自体もジェリアに渡したリストがあれば何とかなるだろう。
しかし、ピエリもじっとしているはずがない。直接動かなくても、彼は安息領の最高位幹部。本人は尻尾を出さないまま部下たちを動かすかもしれない。
彼を止めることはできなくても、少なくとも動きをある程度制約する方法を考えなきゃならない。
―――――
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