第59話 秀欣平、任期満了までは大丈夫

 四中全会が開かれる。その前に中酷国防省が人民解放軍の最高指導機関である中央軍事委員会の幹部である制服組ナンバー2ら軍幹部の九人が汚職を理由に党籍と軍籍を剥奪され粛清された。粛清されたのは秀欣平と大きな関りがある人物たちだ。

 中酷内部では遅くても任期満了の2027年に体調不良を理由に退陣させられる予想だ。体調不良を用意することで早まることも否定できない。その前兆が秀欣平派の排除だ。台湾侵攻を見据えた秀欣平の肝いりで結成された米国の海軍に対抗するロケット軍の大規模な汚職が発覚し、大量の粛清が行われた。そのポストに張遊侠の配下が代理として就いている。

 中酷では「政権は銃が作る」であり、権力より軍が強い。秀欣平の独裁のイメージが強いがそれは軍を掌握している場合だ。国際的場に秀欣平が出向いているのは名誉職として出席しているだけで何も決められない立場にある。抗日戦争・世界ファシズム戦争勝利80周年の軍事パレードで国家元首や軍の指導者が軍隊を検閲・視察する軍事儀式のことを指す閲兵で、参加した部隊の指揮官は格下げされたものが与えられ、秀欣平は恥を掻かされていた。しかもこの際、張遊侠は強酸党の長老たちと同じ席に立っていた。それも国営報道機関が流している。政敵は絶対に映さない。これは面子文化では在り得ないことだ。軍の指揮を誰が握っているかを示していると言っても過言ではない。

 四中全会は、中酷の方向性を決める最高権力者でもある200名の中央委員が集まり、全体会議が開かれる。五年間で七回。その四回目と言うものだ。

 秀欣平が権力を失っても引き摺り降ろされることはない。国内外に党内紛争で失脚するというのは強酸党が世界に混乱していると捉えられるからだ。だからと言って、中酷を冷え込ませた張本人に舵を取らせるわけにはいかない。看板は外していないが店内は閑散とした状態と同じだ。

 この実態が人民に知られれば、人民から「打倒、強酸党」の声が上がることを恐れているから秀欣平の退陣は任期満了まで健康状態の問題がない限り、延命されるだろう。まさにWindows10の延命行為に酷似している。

 












(キャスト)

秀欣平

 ✖

張遊侠

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Crazy Red 龍玄 @amuro117ryugen

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