第7話 カースト制戸籍
秀欣平は、理想と現実のジレンマに藻掻き苦しんでいた。世界の工場としての地位を得て、経済的に噛み千切りたい米国の尻尾が目前にあった。
中酷には約6割の農村戸籍(農業戸籍)と約4割都市戸籍(非農業戸籍)がある。都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために1950年後半に戸籍が導入された。以来、農村から都市への移動は厳しく制限されている。更に都市戸籍の中に強酸党党員がありその中に元高級幹部の子弟で構成されるグループ「太子党」がある。1949年の新中酷成立の前に強酸革命に参加し、日中戦争や中酷国民党との内戦で貢献した幹部たちの子女の紅二代と戦争を経験せず平和な時代に党や政府の指導者となった幹部らの子女の官二代とよばれる階層がある。強酸革命のために血を流したことがあるとして、紅二代は太子党のなかで、官二代より格上とされていたが紅二代の高齢化が進んで現役を退く人が増え官二代が頭角を現し、太子党の主流になりつつある。
紅二代である秀欣平だったが父親の失態で中央ではなく地方政府に就く煮え湯を飲まされていた。中央政府に就く紅二代の者たちが既得権を行使し、多大なの私腹を肥やすのを眉間に皺を寄せ歯を食いしばっていた。反逆精神を振る致せ地方で実績を上げ、中央政府官に擦り寄りやっとの思いで中央政府に辿り着いた。そこで見た紅二代の不甲斐なさに最高位に就く野望に現実味が帯びた。当時の高官に媚を売り近づき、会議ではぬるま湯で育った何もできない紅二代のお坊ちゃんたちを穏やかでも強い口調で押さえつけていた。古今唐主席の任期終了が近づくと後継者選びが始まったが頭角を現す者がいなかった。高級幹部たちの意見は合意に至らず次期主席を選出するまでの繋ぎ、捨て駒として秀欣平はまんまと主席の座を射止めた。
自らを繋ぎの捨て駒だと自覚していた秀欣平は最高権力者となったことをいいことに役人による腐敗政治の一掃を掲げ人民の支持を得て正義感を振りかざし、不正を建前に憎っ茎高官や自らを苔にする者たちを次々に粛清していった。党の法いや習わしの任期二年を撤廃し、強酸党の重鎮を抑え込み三期目に突入し、目の上の瘤である前主席である古今唐を党員の見守る前で露骨に追いやり、権力の強さを見せつけた。これには流石にお坊ちゃま育ちの紅二代や官二代の者も度肝を抜かれたのと同時に秀欣平の独裁的恐怖を感じずには得られなかった。
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