if XVIII
光が差し込んだ瞬間、岬全体がまるで時を止めたかのように静まり返った。風も止まり、ただ海のざわめきだけが僕たちを包み込んでいた。その光景は美しいのに、どこか胸が締めつけられるような、圧倒的な力を感じさせた。
「これが……ケートスの力なのか?」高梨が呟いた。
「いや、ただの自然の力じゃない。これは……この島自体が反応しているんだ。」綿津見くんが、何かを悟ったかのように静かに言った。
瑠海はペンダントを強く握りしめ、顔を上げた。彼女の瞳には決意が宿っていたが、どこか寂しさも見えた。僕はその姿を見て、彼女が本当に覚悟を決めているのだと感じた。
「これで、全てが終わるかもしれない。」瑠海が口を開いた。
「待ってくれ、瑠海。君にすべてを任せるわけにはいかない。僕たちはまだ、別の方法を見つけられるかもしれないんだ!」僕は彼女に向かって叫んだ。
瑠海は微笑んだが、どこか遠くを見つめるような表情だった。「凪、ありがとう。でも、私にはもう分かっているの。この島の均衡を保つためには、私がこの力を引き継がなければならない。ケートスの力と、星の力がそう訴えかけてるの。」
「そんな……でも、それじゃ君が……」僕は言葉を失った。
「大丈夫だよ、凪。私はこの運命を受け入れている。君たちと過ごしたこの時間は、私にとってとても大切なものだった。だから、もう迷わない。」瑠海の言葉には、どこか諦めにも似た静けさがあった。
その時、ペンダントが一層強い光を放ち、周囲の風景が再びざわめき始めた。海が波打ち、島全体がその力に応じて動き出しているように感じられた。僕たちはその場に立ち尽くし、何が起こるのかを見守るしかなかった。
「瑠海、やめてくれ!君を失いたくないんだ!」僕は必死に叫んだが、瑠海は静かに微笑んでいた。
「ありがとう、凪。でも、これは私の選んだ道だから……」
その瞬間、光が彼女を包み込み、周囲の風景が再び変わった。僕たちは目の前で起こっている出来事に圧倒され、動けなくなっていた。
***
目が覚めた時、僕たちは再び海岸に立っていた。何が起こったのか、一瞬理解できなかったが、周囲の静けさがそれが現実であることを告げていた。ケートスの力が、均衡を保つために動き出したのだ。
「瑠海……?」僕は急いで彼女の姿を探したが、そこには彼女の姿はなかった。
「まさか……」斉藤が動揺した様子で言った。
「彼女は……ケートスと共に消えたのか?」高梨も同じく混乱していた。
その瞬間、僕の胸に深い虚無感が広がった。瑠海は本当に自分の役割を果たして、姿を消してしまったのだろうか。彼女が均衡を保つために犠牲を払ったのだとしたら、僕たちはその犠牲をどう受け止めればいいのだろうか。
「彼女は、選んだんだ……」綿津見くんが静かに言った。「この島を守るために、自らの命を……」
僕はその言葉を聞いて、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。瑠海は僕たちのために、自分の運命を受け入れたのだ。そして、それが彼女の選択だったのだ。
「でも、それで本当に良かったのか?」僕は思わず声を荒げた。「僕たちが別の方法を見つけられなかっただけじゃないか?」
綿津見くんは黙って僕を見つめ、何も言わなかった。彼も同じように葛藤しているのだろう。
僕はその場に立ち尽くし、海を見つめた。波が静かに打ち寄せ、まるで何事もなかったかのように、岬は再び静けさを取り戻していた。しかし、僕の心の中は激しく揺れ動いていた。
「これで、本当に終わったのか……?」僕は自問自答しながら、瑠海の言葉を思い出していた。
「凪、これは私の選んだ道だから……」
彼女は笑っていたが、その笑顔は、僕にとって最後の別れのように感じられた。
***
その後、僕たちは岬を後にし、島の中心部に戻ってきた。街並みはいつもと変わらず、観光客が賑わい、夏の空気に包まれていた。しかし、僕たちの中には、何か大きなものが失われたような感覚が残っていた。
「これで終わりなのか……?」僕は何度もその言葉を繰り返した。
しかし、答えはどこにもなかった。
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