第17話:佳鈴のずっともこと、あやちーさんの出番っすね☆
伝統行事マラソン大会が終了してから数日後。
「へいへい、そこのイケてる坊ちゃん。お姉さんとイイコトしようッスよ~?」
「はい?」
時銘空也は佳鈴とよく一緒にいる女子生徒――あほの子ギャルのあやちーにウザ絡みされていた。
女子生徒の中でも小柄で子供っぽいトコ多め、ウェーブした長い茶髪いつも何かしらの飴を舐めていて、どことなく子猫っぽい印象がある。制服が萌え袖になってるところは一部の人には大うけだ。
空也はそんな少女に教室帰りの廊下で出くわして、何故か色仕掛けっぽいムーブをかまされている。
「りょ?」(※了承しましたか?の意)
「イヤです」
「あれぇ!? なにその反応おかしくないっすか?! あんたいっつも誰彼かまわずニコニコしながら『うん、いいですよー』って愛想振りまいてるじゃないっすか! なんで今回に限ってそんな塩対応!?」
「僕は別にイケてる坊ちゃんじゃないので」
「あ、坊ちゃん扱いが嫌だったんすね……。そうっすよね、めんごっす。背が低い他もろもろ小さいのって男にとってコンプレックスになりがちなのに、お姉さんあやちー一生の不覚」
あやちーの憐れむような視線は空也にぐさっと刺さった。
黙っていればよいものを素直に口に出してしまう。この辺があほの子扱いされる彼女の癖だった。
「そういうあやちーさんもお姉さんを自称するには足りない物が多すぎ――あ、いえなんでもないです」
「ぐさぁ!?」
ちょっとムスッとした空也のカウンターがあやちーの胸に突き刺さる。途中で寸止めしたものの、それはもう見事に。
「うぐぐ……ひ、ひどいっす。アタシはクーちんより年上なのに……いま絶対『お前のような貧相なメスガキのどこがおねーさんだよ……ヘッッ』って鼻で笑ったっす」
「この一瞬でそこまで想像できますかね!? それに年上って、あやちーさんは僕と同じ学年でしょう?」
「アタシの方が誕生日がはやいので年上っす」
「なんでさらっと僕の誕生日知ってるんですか……」
「まぁ、そんなのはどうでもいいとして」
「どうでもいいの!?」
「いいから付き合うっすよクーちん。黙ってついてくればあやちーが男子禁制の秘密の花園に誘ってあげるっすよ……?」
っぽわぽわぽわ~ん。あやちーのセクシーポーズ! あやちーは無駄に頭の後ろで手を組んで胸を突きだすようなセクシーポーズをしながら身体をくねらせた。
「あ、けっこうです」
っしかし、空也には効果がなかった。
っまったく興味無さそうにすたすたと立ち去ろうとしている。
「逃がさないっすよ!」
っしかし空也は回り込まれてしまった!
「ええいめんどくさい! いいからはよこっち来いっす! 早くしないと佳鈴が大変なことに……そしてあたしも大ピンチに」
「ちょ、そういう事は早く言ってくださいよ!? このままあやちーさんに付いて行けばいいんですね!」
「お、おぅ? なんかいきなり男らしさがググッと急上昇したっすね。なるほど、コレはコレで女として味わい深いものがあるやも……」
プラチナブロンドの少年の豹変にちょっとドキっとしつつ、あやちーは空也を連れてどこかへ駆けて行った。尚、彼女が急いでいる理由はあまり一所に留まっているとめんどくさい誰かさんに見つかるかもしれなかったからなのだが。
「…………あれって、クゥちゃん? それに……あの女は確か――」
本人が知らないだけで、空也を引っ張っていくその姿は、
ばっちり《重愛なヤンデレ》さんに目撃されていたのであった。
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