第51話 ギルドの説明

 その後、受付のカウンターに戻ってきた僕はカリンから試験の結果を聞かされる。当然全て作ることができたため、申請した全ての生産技能において認定登録を受けることができ、僕は無事に生産者ギルドに登録することができた。


 ランクに関しては特に変わることはなく、Gランクスタートとなった。まぁ全部オート生産だったので当然といえば当然か。


「これで登録完了ですね。お疲れ様でした。次に当施設の案内をさせていただきます」


「お願いします」


「まず、リュートさんから見て右側にあるギルドショップでは主に素材と生産キットの販売を行っています。品質やランクは限られますが、生産活動で足りない素材などはこちらで購入するといいでしょう。ただし、購入できる素材の種類や生産キットのグレードは技能のアビリティレベルではなく、当ギルドのギルドランクによって変化しますので、その点はご注意ください」


 生産活動で用いる基本的な素材に関しては、ここで買うのが手っ取り早いようだ。とはいえ、特定の品質やランクのものしか置いてない為、より良いものを必要とする場合は、自分で取りに行く必要があるだろう。


 因みに生産キットについては、試験を受ける際に必要だからと初心者向けの初級グレードに関しては貰うことができた。


 ただし、複数の技能の試験を受ける際に貰えるのは1つの技能のものまでであり、2つ目以降は有料だった。なので僕は初級調合キットを貰い、初級加工キットを購入した。値段自体は初級グレードならば技能が違っても変わらないようだ。


 なお、初級料理キットに関しては、僕は冒険者ギルドで売っていた簡易調理キットを持っていたので、購入する必要はないと説明された。


 この2つの生産キットには特に生産スキルを使った際の性能の差のようなものは無いらしいが、簡易調理キットは技能が無くても扱えるようになっており、中の道具が野外でも扱いやすいよう少し小型になっているらしい。


 なお、ギルドショップで売っている生産キットに関しては、僕が習得している生産技能の初級グレードのものと、そのひとつ上のグレードである汎用グレードのものが既に売られているらしい。


 そして、ある程度生産技能のアビリティレベルが上がったり、プレイヤー自身が特定のギルドランクになったりすると、更に上のグレードの生産キットが買えるようになるらしい。


 今後、生産もしっかりやるのならこれらの生産キットはしっかり揃えておく必要があるだろう。そして、上のグレードのものはギルドランクを上げないと購入できないらしいので、のめり込むならこちらのギルドランクもしっかり上げる必要がありそうだ。


「次に左側にあるギルドショップですが、ここでは主に生産品の販売、ならびに買取をメインに行っています。基本的に販売品に関しては定価よりも安く購入でき、売却品に関しては普通に売るよりも高く買い取るよう努力しておりますので、是非ともこちらをご利用ください。また、生産品を『納品』という形でこちらに提供していただく事も可能です」


 もう片方のギルドショップは生産品の販売と売却を行うためのものとなっているようで、商人ギルドに登録して自分で売り先を持ったプレイヤー以外が生産したアイテムのうち、使い道のないものなどはここで売ると普通に売るよりは高く売れるようになるらしい。


 また、そういった生産したアイテムを購入することも可能となっており、品質にもよるだろうが普通にNPCの露店等で買うよりは安く買えることがあるらしい。


 まぁ、今後プレイヤーの露店等が増えだしたらそっちの方が安くなったりする場合もあるかもしれないが、向こうは商人ギルドの会費などもあるだろうから、そこまで安くなることはないだろう。


 なお、納品を選んだ場合、買取と違ってお金は貰えないものの、ギルドへの貢献とみなされ、そのアイテムの出来に応じてギルドの評価に加算されるという仕組みになっているらしい。当然、評価が上がればギルドランクが上がるという仕組みになっている。


 特定のランク以上は試験があるのいうのは、冒険者ギルドと同じようだ。


「依頼関連についてですが、まず受付においてギルドショップで置いていない素材の採集や回収の依頼を提出することができます。その依頼は生産者ギルド経由で冒険者ギルドに貼られることになります。同じ来訪者が引き受けるか、誰も引き受けなかった場合は向こうで手配した冒険者に委託する形になるかと思います」


 2つのギルドを経由することで依頼料がそれなりにしてしまうのが難点ではあるが、自力で掲示板のスレに書き込んで頼んだりするよりも受けてもらえる可能性が高いだろう。尤も、素材の種類によってはその限りではないだろうが。


 一応、誰も引き受けなくても冒険者ギルドでNPCに頼む体にしてくれるらしく、無視されて集まらなかったということは無いようだ。ただし、その場合は委託料が追加で必要になるらしく、達成して素材を受け取る際に追加で支払う必要がある。


「後は商人や住民からの製作依頼等を、後ろにある依頼掲示板に掲示しております。基本的に認定登録済みの生産技能を用いて制作するもののみ引き受けることが可能となります。また、アビリティレベルやプレイヤーレベル等を考慮して、こちらから依頼受付をお断りする場合もあるのでご了承ください」


 生産者版の依頼掲示板は当然ながらアイテムの製作依頼となる。基本的にその時点で作ることができるアイテムの製作依頼のみを受けることができるのは当然のことだろう。これも当然、ギルドからの評価に加算されることとなる。


 また、生産者ギルドでもギルドのない村落などで制作依頼を受けることが可能らしく、その場合は冒険者ギルドの時と同じようにギルドへの報告でギルドポイントを獲得することができるらしい。


 基本的にこれまでは冒険者ギルドで受けることのできるようなものしか頼まれなかったのが、今後は生産者ギルドで受けることのできる製作依頼なども頼まれるようになるようだ。


 そういえば掲示板でギルドポイントを獲得するとクラスカードからギルドポイントの交換メニューが使えるとか書いてあった気がする。早いところ入手してどんなものがあるのかを確認しないとな。


 まだクエストしか受けられていないから、ギルドポイントは得られていないんだよなぁ……。


「最後に隣の生産ルームについて説明させていだきます。この施設に関しては、まず最初に生産者ギルドにて使用許可の届出をしていただきます。その際に使用するルームのグレードを決めてもらい、利用したい時間に応じた料金を支払っていただきます」


 そして最後は生産ルームについての説明だった。成る程、生産者ギルドに登録すれば向こうに行ったときに使えるのかと思っていたが、最初にこちらで届出を出す必要があるのか。


「その後、使用できる生産ルームの鍵をお渡ししますので時間までご自由にお使いください。なお、使用許可の申請は初回のみで、2回目以降は生産ルーム施設で直接申込可能です」


 どうやら手続きなどは最初だけで、後は直接生産ルームのある施設で申し込めば使えるようになるらしい。それなら今後は気軽に行けそうだな。


 他には特に説明は無かったようなので、僕はそのまま生産ルームの使用許可の届出をすることにし、生産ルームを借りることにした。


「生産ルームの使用許可の届出ですね。えっと、初めてのご利用ですので、部屋のグレードは一番低いものでも大丈夫かと思いますが、どうされますか?」


 ここでいうグレードというのは部屋の広さや設備のことを指す。


 基本的に、最低限の作業をするだけならグレードは一番低いものでも問題ないとのこと。かなり狭いが生産自体は普通に可能で、サービスで浄化水が使い放題だという。浄化水とは言っているが、単純に不純物をろ過した浄水のようなものらしい。


 【調合】や【料理】を始めとして、結構多くの生産活動で水は必要とするので、それが使い放題なのはありがたい限りだ。


 なお、オキナが借りている一番高いグレードの部屋はかなり広く、また生産中に気分転換する為の施設が時間内であれば無制限で利用可能とのことだった。まさに至れり尽くせりという感じだ。お金はかかるけど。


 他にも部屋の体感温度の調節を行える機能もつけることができる。たとえば【鍛治】をするのなら、部屋を冷却する機能を付けたほうがいい。


 そうでない部屋がと熱すぎて『熱中』という精神系の状態異常になる。火傷と似たスリップダメージ系の状態異常だが、追加で集中ができない状態にもなってしまうため、生産では命取りになりかねない。


 あとは、サービスで使える浄化水に追加して「魔力水」や「過冷却水」などが使用できるようになるオプションもあるらしい。何に使うのかは不明だ。


 今回の場合、特にそれらの追加機能をつける必要はないので、最低グレードで問題なさそうだ。


「はい。問題はないですね」


「かしこまりました。因みにリュート様は【鑑定】の方はご習得されていますか?」


「いや、まだしてないですね」


「成る程。でしたら、こちらで『鑑定』のスキルが使用可能となるアイテムを、有料ですが貸し出しておりますので、ご利用になられると便利かと思います」


 どうやら【鑑定】持ちでないプレイヤー向けに『鑑定』のスキルが使えるようになるアイテムを貸し出しているようだ。それなら、僕でも作ったアイテムの詳細や品質を確かめることが出来るだろう。


 当然、僕はそのアイテムを借りることにした。


「かしこまりました。それでは最終確認です。レンタルするのは第1グレードのルーム、時間は午前7時まで、それと『鑑定ルーペ』のレンタル、で問題ありませんか?」


「はい、大丈夫です」


「かしこまりました。では、以上の条件で使用許可を提出致します。それでは今から6時間分の利用料金と『鑑定ルーペ』のレンタル料として、4000ドラドをいただきます。それとクラスカードも一緒にお渡しいただけますか?」


 本当は6時間を少し切っているのだが、料金自体は1時間単位になっているようだ。まぁ、カラオケとかのルーム料金みたいなものだろう。


 僕は利用料金を支払い、そしてクラスカードを渡すと何やら不思議に光る板の上に乗せて、空中に浮かぶ謎の光の板で操作をしながら作業を進めていく。ここら辺は妙に近代的な感じなんだな。


「初回登録、ならびに生産ルームのレンタルが完了しました。こちらのクラスカードを向こうの受付に提示すれば鍵を渡してもらえます。なお、次回以降は向こうの受付にクラスカードを提示すれば、その場で受付可能となります。本日はありがとうございました」


「ありがとうございます。それでは」


 手を振りながら見送るカリンに、僕とルヴィアも手を振り返しながら受付を離れていく。


 その後、借りた生産ルームに向かう前に、隣のギルドショップの方で森などど集めることができなかった素材を幾つか買い集めていく。まだギルドランクが低いため、そこまで多くの種類を買うことはできないが、それでもここで幾つか買っておけば何かしら試すことができるだろう。


 特に【加工】で使う木材関係は思ったよりも安かったので幾つか買い込んでおいた。初心者武器より使い勝手がいいものが出来るといいが。


「主殿、何だかウキウキしておるの。意外とモノ作りは好きなのかの?」


「うーん、どうだろう。ものを作るってのは学校の授業くらいしかしたことがないからなぁ。でも楽しみなのは確かだよ」


 同級生の中にはプラモデルを作ったりするのにハマっているという人も居たが、僕はあまり手を付けたことは無かった。


 とはいえ、確かに民芸品の体験授業があったときは結構楽しかった気がする。陶芸を体験したり、竹細工を作ったりやったっけ。


 そう考えると、意外と生産活動は肌にあっているのかもしれないな。


「さて、それじゃあ生産ルームに向かおうか」


「うむ。行こうぞ」


 そして、ひとしきり素材を買った僕はルヴィアと共にすぐ隣にある生産ルームのある施設へと入る。


 さっきは受付の女性にクラスカードを見せた段階でギルド登録を進められたが、今回は特に問題はなく、レンタルした部屋の鍵を渡されることとなった。


 その後、手渡された鍵に書かれている部屋の番号を奥の転移ゲートで入力する。すると、その部屋に直接移動できるのでそこで生産活動が開始することになる。


 因みに既に借りてるプレイヤーのルームに入りたい場合、向こうから入室の許可を受けていればここでその部屋の番号を入力することで入室可能となる。


 そして転移して辿り着いた生産ルームは、部屋の広さ的には僕が一人暮らししている部屋よりもだいぶ狭いものとなっており、最低限必要となるであろう机と椅子、そして流し場が用意されているだけだった。


 まぁ、生産するだけなら特に問題はなさそうな広さだろう。ここで横になると少し面倒そうだが、流石に勿体ないだろう。

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