第29話 生産技能とレベル上げ
「そういえば俺、レベルアップしたんですよ! これでレベル3です!」
「あ、私も……」
ランスとミリィが楽しそうにレベルアップの報告をしていた。 普通にやってたら今頃はレベルはそれくらいまで上がっているのか。
「そ、それは良かったね……」
「リュートさんはレベル上がりました?」
「……いや、まだだね。どうやらルヴィアと一緒だと戦闘で経験値が稼ぎにくいようだからね。まぁ、ルヴィアがいるお陰で助かっているんだけど」
そう言って僕がまだレベル1だと告げると、何故だが可哀想なものを見るような目で2人がこちらを見つめてきた。やめないかそういうの。
「……あの、お気をしっかり? リュートお兄さん」
「ハハハ。お気遣いありがとう。でも、プレイヤーレベルを上げる方法は、別に戦闘に限った話じゃないからね。僕は生産技能を覚えてるから、生産活動でも経験値を稼ぐことができるんだ」
そう言うとランスは「ほぉぉ~!」と関心深そうに相槌を打ってくれた。ミリィも興味有りげな感じだ。
どうやら、このゲームでは自身の取得している技能に関連した行動を行うと、プレイヤーレベルの経験値を得られるという仕様があるらしい。
戦闘職が戦闘でプレイヤーレベルの経験値を得られるのは、戦闘技能を使うことによる活動で経験値を得ているということになる。基本的に戦闘技能は全員が持つものなので、戦闘でレベル上げをするのは誰でもできるということになる。
ただ、生産特化のプレイヤーとなると、割と戦闘向けのアビリティを切り捨てないといけないらしく、その場合は戦ってレベルを上げろというのは流石に無理な話となってしまう。
そういった場合の為に、生産技能による生産活動でもプレイヤーレベルの経験値を得られるようになっているようだ。
似たようなものでは、商人や商人ギルドに登録したプレイヤーが商売をする場合や、農家や農家ギルドに登録したプレイヤーが農耕を行う場合なども、経験値を得られるようになるらしい。
因みにそれらの活動の場合、ドラゴンの方に経験値が渡るという事も無いようなので、戦闘でルヴィアに経験値を奪われてしまう僕でもプレイヤーレベルの経験値を稼ぐことができるという訳だ。
これは、門を出る順番待ちの時――ちょうどランスに話しかけられる少し前のタイミング――に、軽く経験値について掲示板を使って調べていた際に、どこかの掲示板で書かれていたのを見つけて知ったのだが、実はベータテストでのプレイヤーレベルの経験値獲得は戦闘オンリーだったので完全な仕様変更になるようだ。
どうやらベータテスト終了後、戦闘職に対して生産職や商人ロールのプレイヤーが全くレベルが上がってなかったことを知った運営が、本サービスから変更したようだ。
その時にベータテストからの変更点にもこのことは書かれていたのを知ったが、さして生産職が多いわけでもないのでそこまで話題にならなかったらしい。僕は変更点についてもネットのまとめでしか目を通してないので、知らなくても仕方ないだろう。
その仕様のお陰かどうかは定かではないが、現在レベルトップのプレイヤーは生産職の人らしい。凄いやりこみようだな。
僕の場合、それを見越して生産技能を習得したわけではないので、完全に結果オーライという形になったのだが……何も取るものがないと思って真っ先に生産技能を覚えた数時間前の僕に感謝だ。
その後、この場に立って話すのもアレなので、僕らは森へ向かいながら、生産技能に興味を示していたランスとミリィに説明することにした。
一方でルヴィアはというと、案の定この手の話には特に興味はなさそうで、周囲をキョロキョロ見て回っていた。
敵がいたら倒しに行くつもりかもしれないが、ここは街道近くなので、そもそもそこまで現れないはずだと思う。
「いや、俺もなにか生産技能を取ろうかな〜って最初は思ってたんですけど、流石に戦闘系とか採集系とかのアビリティを優先して選んでたら、取れなかったんですよねぇ……」
「まぁ、確かに戦闘面を考慮したら中々取りにくいアビリティではあるよね。僕の場合、取れる支援職向けのアビリティが少なかったから取っただけだし」
本来ならランスのように戦闘職なら戦闘向け、生産職なら生産向けのアビリティで固めてしまった方がいいだろう。その方がその活動の際により高い補正効果を得られるからだ。
ただ、僕のように偏ったステータス配分だと必要だと思っていても、取れないアビリティはどうしても出てきてしまうのだ。
「リュートお兄さんはどういう生産技能を覚えたんですか……?」
「僕は一応、【調合】と【加工】と【料理】を習得したよ」
「み、3つも……! 余程、取れるアビリティが無かったんですね……」
再び可哀想なものを見るような目で見つめてくるランス。分かってるから皆まで言わなくていいよ?
しかし、2人とも生産技能には興味がある感じなんだな。それなら、少しアドバイスしてもいいかもしれないな。
「そうだ。もし2人が今後、生産技能を取るつもりなら、ランスなら【鍛冶】、ミリィなら【錬金】がオススメだよ」
「鍛冶? えーっと、確か取れたはずですけど……」
「私も……。でも何で……?」
「この2つの生産技能は他の生産技能とは違って、どっちも戦闘に使えるスキルやアーツを手に入れることができるんだよ」
まぁ、ベータテストから変わっていなければの話だけど、と僕は付け加える。
【鍛冶】は『パワースマッシュ』という打撃系のアーツを覚える。これは鍛治で槌を振るう際に使うアーツになり、主に硬めの金属を用いた鍛造に使うようだ。
『パワースマッシュ』は【槌術】でも覚えるアーツなのだが、【鍛治】で覚えた場合は槌以外の武器でも使えるので、打撃攻撃も使える斬撃系の武器を使っている場合はかなり強力な技となる。
例えば、ランスが使っている長槍だと刃の真逆にある石突の部分で打撃攻撃が使えるので、問題なく使えるだろう。確かベータテストのまとめにもこれを使った槍使いの情報が載っていた筈だ。
そして、【錬金】は『アルケミーファイア』を始めとした幾つかの魔術スキルを習得する。これらは本来、錬金術で作成するアイテムに四大元素の力をはじめとする属性の力を込めるためのものらしい。
これらは別名『錬金魔術』と呼ばれており、【黒魔術】の傾向で覚える属性魔術に物としては似ているらしいが、攻撃スキルとして使う際にはそれぞれのスキルで特殊な追加効果を持つようなので、魔術士であるミリィも覚えて損はないだろう。
ステータス値での条件なら、【鍛冶】はSTR100、【錬金】はINT100あれば習得可能となっている筈だ。
それにしても、生産活動ではDEXが重要な数値ではあるものの、何故かその生産技能の習得条件にはDEXが必要なものが無かったりする。一応、ジョブの場合にはちゃんと条件にあるのだが、それでもDEX50だったりする。
もしかすると、DEXって平均的にはそこまで高いわけではないのか?
まぁ、生産をメインにしようとしていないプレイヤーでも【調合】は簡単に習得することができるので、フィールド探索中に回復アイテムが切れた際に素材さえあれば間に合わせで作ることができる。
それで命拾いしたというベータテスターは意外と多かったようだ。
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