第3章 動き出す世界

第95話

 4月12日、木曜日。


今日は東大の入学式があり、美冬と2人でそれに出席した。


既に授業が始まっているにも拘らず、入学式がその後にあるのは何だか違和感がある。


同じ東大出身の南さんと百合さんによると、東大の入学式は、当日が土日でない限り、毎年この日で固定なのだそうだ。


また、つい先日まで、大学の春休みを利用して、エミリアが家に滞在していた。


イギリスは水事情が悪く、その水は美容にも良くない。


軟水である日本と異なり、硬水のイギリスは水に石灰が含まれているから、肌や髪に良くないのだ。


水道水も浄水器を使わないと美味しくないし、そのままの水で緑茶を淹れると茶色くなる。


お風呂も贅沢な部類に入り、大抵のイギリス人は浴槽には浸からず、シャワーのみで済ます。


オックスフォードのような歴史ある古い町には、集合住宅の部屋に風呂がなく、シャワーしかない物件も多い。


エミリアが住むアパートは、近代的な物件なので室内に風呂があるが、一人用で狭い。


以前彼女の部屋にお邪魔した時、それを見た俺が、『週末や長期休暇の際には、日本で過ごせば良いのでは?』と口にしたから、彼女から遠慮がちにそうお願いされたのだ。


なので、空いていた美冬の隣部屋にダブルベッドや机などの家具を買い入れ、そこをエミリアの部屋として固定化し、利用して貰っていた。


その際、俺と美冬が一緒に入浴し、曜日ごとにお仲間さんともご一緒する姿を実際に目にしたエミリアは、自分も俺と一緒に入浴すると言い出した。


美冬と3人で話し合った結果、どうせ何時かは念話も覚えて貰わないとならないし、俺と美冬が愛し合う間、彼女だけ自室で我慢させておくのも忍びないという美冬の考えで、エミリアの意思を確認した上、抱かせて貰った。


勿論、美冬とは別々にだ。


『若返り』や『不老長寿』の能力もきちんと説明し、それでも俺に抱かれる事を望んだから、俺の自宅にある彼女の部屋で、1日を掛けてゆっくり相手をした。


処女で、キスしか知らなかったエミリアにはかなり刺激が強く、何度も意識を飛ばしたが、終わった後には満ち足りた表情で俺を抱き締め、長いキスをしてきた。


因みに、美冬や他のお仲間さんと行為に及ぶ際も、もう丸1日や2日も掛けたりしない。


最初だけは、お互いに我慢してきた事もあって長めになったが、俺にはダンジョン探索という仕事があるから、それだけをしている訳にはいかない。


だから大体は1回に2時間前後だ。


3人でする3組の場合のみ、3時間掛ける。


風呂で摂取される代わりに、入浴は手短に済ませて、寝室で楽しむようになった。



 ダンジョン関係では、美冬に少し手伝って貰ったせいもあり、アフリカ大陸の銀箱の回収が終わった。


これで茶箱約4200を除いた全てを回収し終え、今ではカナダの探索をしている。


アフリカ大陸の金箱の数は6015で、銀箱は7万2023個。


ユニーク81体からを含んだ入手アイテムには、『金運』35『良縁』20『開運』28『幸運』12『自己回復(A)』24『毒耐性(A)』18『状態異常無効』8『魔法耐性(A)』15『炎耐性(S)』7『飛行』4『生命力増加』6『隠密』6『結界』3『加速』6『破魔』8『子宝』31『処女の血』9『略奪』2の特殊能力と、『治癒』2『浄化』3『照明』7『造形』9『鎌鼬』2『着火』13『火球』4『消火』2の魔法がある。


そしてこれとは別に、俺に吸収された物として、『飼い馴らし』がある。


『任意の魔物を己のペットとして飼い馴らす事ができる。但し、その精神力が相手の魔物より1万以上高くなければ成功しない』


説明にはそうある。


『身体能力・改』の中に収容されている。


装備品はSランクの槍が3本と斧が4つ、盾と胸当て、籠手が3つずつ手に入り、Aランクの物も16個入手したが、既に沢山持っているので気に留めなかった。


あとの残りは全て、能力値の何れか1つを上げる品だった。


銀箱の中身は相変わらず貴金属、レアメタルが約8割、残りはBかCランクの装備品、美術品。


因みに、銀箱から出る貴金属やレアメタルは、やはり通常の世界の埋蔵量にも影響を及ぼしている模様。


銀箱が固まって存在する地域付近の出口から出て、通常の世界でその近辺にある鉱山や土地に『抽出』を試みると、事前に確かめた埋蔵量より半分近く落ちている。


宝箱を開ける前と後で何度か実験したので、これは事実だと思う。


ダンジョン内から通常の世界でも価値の高い品が大量に採れれば、その品の価値が急落する。


この世界の創造主は、そういった事もしっかりと考慮しているようである。


なので、予め通常の世界でその地域にある鉱山資源を『抽出』でゼロにしておけば、銀箱の数を大幅に減らせるかもしれない。


そう考え、カナダからはそれを実行している。


アフリカ大陸にある貴重な鉱山資源は、通常の世界での物を含め、ほぼ採り尽くしてしまった。


その分、代償の『耕作』と『植林』によって緑地が1割も回復したから、長い目で見れば損はさせていないと思う。


暇を見つけてはロシアと中国でも、通常の世界で鉱山に『抽出』を使っているから、その内この両国でも貴重な鉱山資源がゼロになる。


代償は支払っていないので、それが完了すれば、この2国は暫く放って置いても平気だろう。


アフリカ大陸全体で、俺が倒した魔物は約20万体。


全体の数パーセントくらいか。


魔宝石の価格が高い、強い魔物を中心に狩ったが、遭遇した3体の30万円クラスだけは、この大陸の人口抑制を維持するために、『飼い馴らし』でペット化した。


大型のライオンの雄と、巨大なさい、同じく巨大な象の魔物である。


『飼い馴らし』を受けた魔物は、他との区別のために、その身に光を帯びる。


眷族との違いは、主人の俺には従順になるが、あとは他の魔物のように自由に行動する点にある。


なので、ポイントを用いて何かを買ってやる事もできない。


当然、彼らがもし人間から何かを得ても、それが俺に転送されては来ない。


その分、彼らの維持のための精神力も必要ないので楽ではある。


入手したアイテムの内、『飛行』『幸運』『破魔』『加速』『生命力増加』と『金運』9個をエミリアに、『生命力増加』『加速』と『良縁』2個、『開運』5つを理沙さんに、『生命力増加』『加速』と『良縁』8個を美保さんに、『加速』『生命力増加』『火球』と『金運』3個、Sランクの盾と胸当てを百合さんに、『良縁』7個と『開運』7つ、Sランクの籠手を南さんに、『金運』5個と『開運』5個、Sランクの盾を吉永さんに、『加速』とSランクの籠手を仁科さんに、『良縁』3つと『加速』、Sランクの籠手を落合さんに渡した。


これでエミリアの『金運』、理沙さんの『良縁』と『開運』、美保さんの『良縁』、百合さんの『金運』、南さんの『良縁』と『開運』、吉永さんの『金運』と『開運』、落合さんの『良縁』がMAXになる。


『幸運』関係の能力である『金運』『良縁』『開運』の3つを未だレベルMAXにしていないのは、百合さんの『良縁』、エミリアの『良縁』と『開運』、吉永さんの『良縁』だけになった。


在庫整理のためもあり、今更だが、理沙さんと美保さん、百合さんの3人には、『学問成就』も食べて貰った。


法律と税理の専門的な知識を常に更新し続けなければならない理沙さん達お二人には、無駄にはならないだろう。


百合さんは、『暇な時、語学の勉強でもするね』と言って食べてくれた。


今回、所持能力の多い美冬には、残念ながら渡せるアイテムが何もなく、その分、各能力値を上げる品を5個ずつ食べて貰った。


特殊能力や魔法を覚える所持アイテムが多くなり過ぎたため、大胆に在庫整理を施し、『状態異常無効』5『自己回復(S)』5『毒耐性(S)』5『魔法耐性(S)』5『炎耐性(S)』5『氷耐性(S)』2『飛行』3『生命力増加』3『隠密』5『結界』5『遊泳』1『破魔』5『良縁』4『幸運』5『洗脳』1『勤労化』2『抽出』3『未来視』1個の特殊能力と、『治癒』5『浄化』5『光弾』1『火球』4『給水』5『放水』1『造形』5『鎌鼬』3『ハリケーン』1『魅了』1『沈黙』1『金縛り』1『解除』5個の魔法を残し、あとは全部ポイントに替えてしまった。


装備もSランクの物以外はAを各10個ずつしかストックせず、残りはポイントにしたので、そのポイントが今や30億以上もある。


お仲間さんから随時買い付ける低ランク装備も、瀬戸さんの店に卸す分以外は全部ポイントにしているから、今後もどんどん増えるだろう。


大学の授業が始まる前に、ブラジルの茶箱を全て回収した美冬は、俺の手伝いでアフリカの銀箱を回収した後、現在は魔物を倒しながらオーストラリアの茶箱を回収している。


岐阜を攻略予定だった仁科さんと落合さんは、俺の指示で、適当な魔物を狩りつつ、アメリカの茶箱の残りを回収している。


アフリカ大陸の茶箱の回収は、吉永さんに任せている。


理沙さんと美保さんには、水曜に俺に同行して貰い、俺が宝箱を回収している間、周囲の魔物を狩って貰っている。


因みに、全員がまだ探索者ランクの更新を受けていない。


こん年度中に更新すれば良いので、俺が世界中の金箱を開け終えた段階で、皆で一斉に更新する事にした。


そのため、俺はもうユニークと金箱を全て回収するまでは、銀箱にすら手を出さない。


昨年度の俺の更新は、南さんがこっそり書類上でBランクに偽装して手続きしてくれていた。


カードで手続きすると不正が効かないので、飽く迄書類上でだ。


年間登録料さえしっかり支払っていれば、今の日本ではそう煩く言われないようだ。


中国に居る美鈴、ロシアに居るアマンダ、アメリカに居るシロの所にも顔を出し、其々に、ポイントから数十の嗜好品を買ってあげた。

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