入れ替わったのは異世界令嬢!?〜その姫、傾国の美少女につき〜
空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~
♀0 モノローグなプロローグ
いつからだろうか。私が運命の人がいると信じ始めたのは。白馬の王子様。伝説の勇者。象牙の塔に籠もる大賢者。そう言った存在に乙女心にも憧れていた。神様にも毎日祈った。だけど、彼らに実際に会って私は失望した。
王子は私の容姿と体にしか興味がないし、勇者は女たらしだった。申し訳ないけれど、お世辞にも運命を感じるとは言えなかった。賢者は賢く優しい人だった。しかし、賢者は女性だった。同性婚という選択肢もあるけれど、できれば素敵な男性と私はめぐり逢いたかった。
私の運命の人はきっと賢く優しく、そして私だけを愛してくれる。そして二人の間には死さえも断絶することのできない魂の繋がりがある。私はそう信じていた。けれど、運命の人は一向に現れずに月日は過ぎ去って、私は成人を控えていた。
17歳になった時だった。この世で最も知恵のある者が名乗れる大賢者、アーシャ・ハイネッガーに私の運命の人を教えてもらうことにした。アーシャは彼岸と此岸の研究をしていた。私はどうにも運命の人はこの世界にはいないのではないかと感じ始めていた。だから、あの世のことを研究している彼女なら何か手がかりを教えてくれるのではないかと期待した。
案の定、アーシャは既に魂の研究をかなり進めていて、私の運命の人を容易く見つけてくれた。彼の名はイチノセ・リョウというらしい。やはり、彼はこの世界の人間ではないみたいだった。アーシャは投影魔法で宙に像を作り、彼の姿を見せてくれた。
彼は見慣れない黒色の服に身を包み、何やら授業を受けていた。私はもう一目惚れだった。キリッとした顔立ちに凛々しい瞳。それにこの世界では見たことのない黒髪。彼は机に頬杖をついているが、そのどこか退屈そうな横顔でさえ愛おしいと思った。
すかさず私はアーシャに尋ねた。どうやったら彼に会えるのかと。彼女は一つ頷くと答えた。「会うならラカン・フリーズの門を開ける必要がある」と。そしてこう続けた。「少し前に門に小さな穴を開けたんだ。もしかしたら魂だけなら通れるんじゃないかな?」
アーシャの話を聞いてすぐに私は是非試して欲しいと申し出ると、アーシャは最新の魔法を私にかけてくれた。「試作品の魔法だからどうなるかわからないよ?」と釘を刺されたが彼に会うためだったら何だってするつもりだった。
その日はアーシャと別れてそのまま家に帰った。いつものように夕飯を食べていつものように風呂に入って寝る。「明日は学校か。王子に会うの嫌だな」と思いながらふかふかのベッドに横になった。
翌朝、目覚めると全く知らない部屋にいた。
「ここどこ?」
不意に、胸と股の下に違和感を感じて立ち上がる。
「あれ、私の胸がない……。しかもなんかついてる!」
体を弄るも筋肉質で硬い。まるで男にでもなったみたいだ。しかも部屋は変な風体だった。過去に見たことのない調度品のようなものがあちこちにある。不思議に思いつつ、壁際に立ち鏡があったのでその前に向かった。そして気づく。
「イチノセ・リョウ?」
運命の彼になっていることに。
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