第十四話 三夜の町

 三夜の町にかなり近づいただろうか。

 周囲の景色が少し変わってきた。


「なんか暗くなってきたな。雨が降りそうな感じではないけど」

「そうか? パモ、スッパム出してくれよ。腹減ったよー」

「ぱーみゅぱーみゅー!」

「お主、物を収納できるのか。珍しい生物とは思ったが、すごいのう!」



 それから更に一時間程歩いた。思っていたより遠いな。

 今日は町で一泊するか最悪野宿か……と考えていたが、遠くにようやく

建物らしきものが見えてきた。

 あれが三夜の町か? 

 外壁は結構高さがある。

 入口には兵士らしき人が立っている。

 メルザ以外の人を見るのは初めてだな。


「おう親父! ちゃんと金持ってきたから今度は入れるよな!」

「んー? あぁ、こないだの小汚いガキじゃねえか。随分上物の

服着てやがったから気付かなかったぜ。そっちのつれはー……お前は剣士か。

見たとこそんな強そうじゃねえな。あとは……マジックアイテムとペットだな。

んじゃ入場許可証二人分で銀貨四枚だ」


 パモとカカシの分はいらないのか。こいつはラッキーだ。

 銀貨一枚の価値がよくわからないが、兵士に銀貨を渡した。


「はい確かに。これが通行証だ。騒ぎは起こすんじゃないぜ?」

「ああ。そうだこの町にいい宿はあるか? 俺たち今日はここに

泊まって行きたいんだけど」

「宿ならいくつかあるが、安くて飯がうまいのはセサミの宿だな。変わった奴だが

綺麗好きで飯は最高だぜ。この町の地図もあるが買っていくか? 銀貨一枚でいいぜ」


 かなりでかい町だし地図があると助かるな。

 この兵士に印象付けれるし買っておくか。


「わかった、どんなものか見てからでいいか?」


 兵士は頷くと、俺に地図を見せてくれた。

 地図には現在地である入口と目印となる中間地点などがはっきりかかれている。

 お店も名前入りで相当な数があるな。これは有難い。


 兵士に銀貨一枚を渡すと地図を手に持ち礼を言う。

 兵士は俺たちを見送ると門番に戻った。


「わし、道具扱いされたわい……とほほ」

「ぱみゅー! ぱみゅぱみゅぅ!」

「あはは……おかげで銀貨四枚も浮いたんだ。美味いものでも食べようぜ」

「うまいもの……久しぶりに違うものが喰えるのかぁ」

「その前に宿をとりに行くぞ。あれ、あっち側……奥の方も明かりがついてるな」


時計を持ってないから時間はわからないが、まだ暗くなるには早い気がする。


「ここは三夜の町じゃ。三段階に分かれる夜の町でな。夜しかないんじゃ」


 カカシが教えてくれた。豊富な知識はとても助かる。


「へー、夜の町か。しかも三種類の夜ね。一体どんな夜なんだ?」

「明かりつきの夜、賑わい祭りの夜、真なる夜の三つあるが、わしも実際に見たことはない。

動きまわれぬ身体じゃったからこのように移動できるのは嬉しゅーてのう」

「ぱみゅぱーみゅー」


 悲しい声をだすカカシをパモが慰めようとしている。やさ可愛い。

 しかし明かりつきの夜ってことは、この周囲一帯はとても明るいから、この場所なんだろうな。

 教えてもらったセサミの宿もこの辺りだ。

 しばらく歩いていくと、それらしき宿に到着した。

 入り口に入ると――「あらいらっしゃい。まぁいい男ね」

「すみません間違えました失礼します」

「お待ちになって! ちょっと!」


 入口で面食らった俺はすぐ外に出ようとした。

 なんだか入っちゃいけない気がしたんだ。

 なぜなら……店主はどう見ても骨だった。

 服を着てるから顔だけかもしれないが、どうみてもスケルトン。骨そのもの。


「あら、そんなに見つめて照れるじゃなーい……あ、ちょっと

出ていこうとしないで! ちゃんとするから! セクシーポーズもするから!」

「骨のセクシーポーズって誰得だよ! 門番の兵士に勧められてきたんだけど帰る!」

「んまぁ、あの男。やっぱり私に気が合ったのねぇ! いやらしい目で

じろじろみていたし。美しいって罪ね。

私はここの女将のセサミよ。気軽にせっちゃんって呼んでね」

「なぁなぁせっちゃん、飯うまいって本当か? 俺様もう腹ペコで」

「んまぁ! かわいい子! 嫉妬しちゃうわ! でも素直そうな子ね。

素直な子は嫌いじゃないわよ。泊まるならすぐに料理を出してあげるわ」

「本当か!? なぁなぁルイン、ここにしようぜ。俺様もう疲れたよー」

「……わかったよ。一泊……いや二泊でいくらになる?」

「食事は朝と夜の二回。そっちは……マジックアイテムにペットね。

ペットのご飯もつけるとして、食事は三人分かしら。銀貨八枚と

銅貨五枚ね」


 お金を払うと、三夜の町の事がさっぱりわからない俺は、女将に尋ねてみた。


「なあ女将。俺たちこの町に来るの初めてで。物の相場や町の雰囲気とかよくわからない

んだが色々教えてもらえるか?」

「……せっちゃんでしょ?」

「すみません。その……せっちゃん!」

「それじゃ食事の時にでも話すわね。今日はあまりお客もいないから

丁度暇つぶしにもなるわぁ。ひとまず部屋へ案内するわね」


 せっちゃんが指を弾くと、小さい骨Aが現れた! どうする?


 戦う

 防御

 道具

 →逃げる


 しかし後ろにまわりこまれてしまった! メルザに裾を引っ張られた! 

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