第十一話 ガラポン洞窟帰り道

 宝箱の中身を確認した俺は、メルザにな髪の事を早速伝えた。

 

「メルザ、宝箱の中にいいもの沢山入っていたぞ。中身出すからちょっと待っててくれ」


 中身を全部取り出しながら少し思うところがあった……この箱、とてもしっかりしてるな。

これを入れ物にして身体を洗えないか? 


 風呂にしばらく入れてないし、戦いで大分汚れてる。

 前世で風呂やシャワーを利用しない日なんてなかった。

 やはりあの習慣は前世特有のものだろう。


「なぁメルザ。この宝箱の中に水って入れられるか?」

「一杯に出来る程水を出せるかわからねーけどやってみる。

何に使うんだ?」

「ちょっと試したいことがあるんだ。もし水が漏れるようなら

すぐに止めて構わないから」


 メルザは燃斗と氷斗を使って水を入れていく。

 幸いにも水漏れは無いが、結構な水を出さないといけない。

 するとパモが手伝いたいらしく、宝箱の淵に乗りたいのかぴょんぴょんしていた。

 そのパモを持ち上げて宝箱の淵に置くと、パモも水を出し始めた。

 すごいぞパモ! 


「パモが水を出せるなら、俺様はそれを見てることにする!」

「じゃあメルザには燃斗を使って火を起こしてもらおうかな。剣で出そうと思ったが使用制限があるし」


 メルザは首を傾げる。


「燃斗使ってどうするんだ? お湯沸かすのか、この宝箱で」

「そう、お湯を沸かすが熱すぎない程度にだ。風呂入ってないだろ?」

「風呂ってなんだ? カエル料理のことか?」

「ガマ茹でにするつもりか……身体を温めたり綺麗にしたりするんだよ。教えるからやってくれ」


 メルザは燃斗で宝箱を温め始めた。

 この宝箱頑持って帰りたいが、いかんせんでかい……そもそも宝箱の用途

としてこんな事する奴はまずいないか。


「パモ、それくらいでいいぞ。メルザはそのまま燃斗を頼む」


 指で温度を測る。しばらくして十分温まってからメルザに止めるよう指示した。


「ふぅ、疲れたなー。これどうすんだ?」

「俺はちょっと外すから、服を全部脱いでそのお湯で身体を流したら、宝箱の中に入ってくれ」

「火傷しないか? あ、温かいくれーだな、これ。へー……」


 そういうとメルザはそのまま服を脱ごうとする。


「ちょ、待てって! 俺あっち行ってるから!」


 どうやら俺がいることお構いなしに行動する癖があるようで、メルザは赤くなる。


「入り終わったらこれ置いとくからこっちに着替えてくれ」


赤薔薇のワンピースをパモに渡し、俺は籠手を持って奥の間の扉付近へ向かった。






「これ、気持ちいいな……身体がすげー温まる。こんなの初めてだ」


 メルザは湯舟に浸かっていた。身体を洗うことはあるがお湯に浸かるなんて考えたこともない。

 一人では生きていくことだけで精一杯だった。

 ルインと出会ってから、一日がとても楽しい……そして新しい経験が山積みだ。

 彼女は思うのだった。あいつに幻魔の宝玉を使って良かったなと。

 湯船から出るとパモから着替えを受け取る。

 自分の髪色のようなワンピースを見て、少し頬を赤くした。



「これを着るのかよ。ちょっと恥ずかしいぜ……」


 パモが差し出したワンピースを被るようにして着る。

 長袖なのでさっきの服より全然暖かい。

 膝下三センチほどの長さだ。

 着替えも終わり、ホカホカになったのでルインを呼びに行く。




「おーいルイン。風呂ってやつ最高だったぜ! それとこのヘンテコな服、似合う……か?」


 俺はメルザの方を見て思った。とても綺麗だと。

 やっぱり女の子は洋服一つでも印象が随分と変わるものだ。


「あぁ、よく似合ってるぞ。メルザには赤いものが似合いそうだな」


 メルザの顔がさらにかぁーっと赤くなる。


「ば、ばかやろー! 俺様には何でも似合うに決まってるだろ!」

「んじゃ、俺も湯を浴びてくるからここでちょっと待っててくれ」


 そういうと宝箱もとい風呂の方へ行く。久しぶりの風呂、楽しみだ! 

 昔は見えにくかったから、苦労したっけな。

 久しぶりの湯舟を堪能した後、湯舟から上がり、宝箱のお湯を捨てた。


「おーいメルザー! もうこっち来ていいぞー!」


 メルザにそう呼びかけると、パモとメルザがこっちに向かい出す。


「おー、ルインもさっぱりしたか。その箱でまた風呂ってやつに入れたらなー……」

「ぱーみゅぱーみゅ!」


 それを聞いてパモが宝箱のとこでぴょんぴょん跳ねる。

 するとパモの前にあった宝箱がすっと消えた。


「ぱーみゅぱーみゅ!」


 俺とメルザは顔を見合わせて驚く。

 もしかしてパモの中に収納されたのか……? 

 パモのあのサイズには到底宝箱は収まらない。

 そういえばまだ、パモについて調べていなかったな。

 俺は目を閉じてパモをアナライズしてみた。


 エンシェントリーパルーム


 不思議生命体 狭い所を好み入り込む習性がある

 対象物を吸い込みぺたんこにして体内に保管できる

 体外へ出すと何事もなかったかのように元に戻せる

 個体により収納しておける数に限りがある

 また幻術にも精通しており様々な幻術を使用する

 絶滅危惧種で人前に顔を出すのは極稀だが人なつっこい



 こんな情報が出て驚愕した。

 パモ、お前凄かったんだな。

 ただのマスコットかと思っていたよ。

 その話をメルザにすると、飛び跳ねて喜んでいる。

 パモも真似して飛び跳ねる。


「んじゃパモ、このでかけろりんの喰い残しも吸い込んでくれ」

「ぱみゅー!」


 そういうとでかけろりんを吸い尽くしたパモ。

 ただ単純に食べ尽くしたようにも見えたが……。


「それじゃメルザの領域に帰るか」


 俺たちは来た道を戻りつつ、一つ目の宝箱もパモに回収させ

 メルザの領域へと戻っていった。

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