1−9 通じていない!

「え?白蛙さん。もしかして本当に池の中のペンダントを見つけてきてくれるのかい?」


 クロードが目を見開いて私に再度尋ねてきた。


「ケロッ!ケロケロッ!ケロケロケロケロケロケロケロケロケロロロロ?」


(はい!任せて下さい!その代わり見つけてきたらちゃんと感謝して下さいよ?)


そして私はクロードに右手を差し出した。ちゃんと約束の握手をしてもらわなければね。


「う〜ん……何を言っているのかはさっぱり分からないけれど、何となく引き受けてくれた気がするなぁ……。まぁ、いいか。もし無事に見つけてきてくれたら、とびきりの餌をプレゼントしてあげるよ」


「ケロケロ!ケロケロケロケロ!ケロケロケロロロロケロ」


(いいえ!餌なんかいりません!欲しいのは感謝の気持ちですから!)


 私は必死で訴えた。それなのに……。


「クロード様、見て下さい。とびきりの餌と言う言葉に反応しているようですよ?余程嬉しいのでしょうね」


 庭師さんが余計なことを言う。


『違うってば!餌なんかい・ら・な・い・の!私の好物はアブラムシとアリなの!欲しいのは感謝の気持ちなんだから!』


 ケロケロと訴えても、どうにも話は通じていないようだ。う〜……これでは拉致があかない!


『いいです!とにかく今から池に潜ってペンダントを探してきますからね?!もし見つけたらお礼を言って下さいよ?』


 私はそれだけ2人に告げると、ぴょんぴょん飛び跳ねながら池へと向かった。


「クロード様、我々も池に向かいましょう」

「そうだね、白蛙さんについていこう」


 そして蛙姿の私を先頭に、皆で池へと向かった――。



****


 池へとやってきた私は、じっと水面を見つめた。

この池がどのくらい深いのかは分からないけれど、とても透明度の高い澄んだ水なので見通しは良さそうだ。


 ただ肝心なのは……私はここで蛇に襲われかけたこと。


『どうか大きな魚や水鳥が飛んできて襲ってきませんように……』


 私はケロケロと鳴きながら神に祈った。


「見てご覧、蛙さんがケロケロ鳴いているよ」


「きっと池にやってきたので嬉しくて鳴いているのでしょうねぇ」


背後で無責任にのんびりと話しているクロードと庭師さん。


冗談じゃない、そんな訳無いでしょう?私はこれから身の危険を犯し?ペンダントを探しにこの池に潜るのだから祈りを捧げていたのだよ?


『それでは今から探してきますね!』


2人を振り返り、ケロケロと声を掛けると私は水の中へと飛び込んだ。


ポッチャーン!


 小さな水の跳ねる音を聞きながら私はプクプクと水の泡に包まれながら、ぐんぐん水底めがして泳ぎ始めた。


凄い!気持ちいいーっ!水の中、最高!


私は泳ぎが苦手だった。それなのに蛙の姿ならこんなに楽に泳げるなんて。


さてと……いくら蛙でもいつまでも呼吸が続くわけでは無いから早急にペンダントを探さなくちゃ……。


 私は目を凝らしてペンダントを探し始めた――。




 

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