第22話 暗雲の依頼

 「全然喋ってくれなかったじゃ~ん‼‼‼」

 おぞましい大声で桜夜は凛大に怒鳴りつける。

 「ホントごめん!ちょっと今日は余裕なくて...」

 必死に誤解を解こうとする。が、桜夜の怒りは収まらない。

 「反省してるなら何か反省の態度を見せて!」

 「たとえば?...」

 桜夜の一言に反応すると...

 「明日はずっと一緒にいるとか...一緒にお風呂入るとか...」

 「却下ぁ!」

 なんていう茶番をしていると、一件の依頼通知が入る。

 「『防衛軍より緊急応援要請』って何かあったのかな?」

 桜夜は、呟く。しかし、もうすぐ母が帰ってくることを考えると今からは出かけられない。母が寝てしまってからでないと特に依頼関係は動けない。


 「ただいま~」

 母が帰宅する。

 「なにかいい匂いがする?」

 母はなにかにすぐ築いた。

 「にゃぁ~ん」

 桜夜は、玄関で母を出迎えた。

 「あら桜夜ちゃん?どうしたの~?」

 母は桜夜を抱っこしてリビングに入った。リビングには机の上に料理が並べられている。

 「わぁ!おいしそう!」

 母は料理を見てそのまま思ったことを述べる。米、唐揚げ、みそ汁、サラダなんていう、至って普通のご飯。

 「たまにはと思って頑張ってみた!桜夜と一緒にね~」

 「みゃーぉ」

 凛大と桜夜はドヤ顔で説明する。

 「先にご飯食べる?お風呂入る?」

 凛大は母に質問した。早く母を寝かせるために。

 「じゃあ、冷めないうちにご飯を食べちゃおっかな~」

 そう言って母は席に座る。

 「「いただきます」」

 そのまま、みんなで夕飯を食べ始める。

 「じゃあ、お風呂入ってくるね~」

 母はお風呂へ向かった。

 「体は綺麗なんだけど...ほんとにお風呂入ったの?」

 桜夜は凛大に質問してきた。それは、夕飯を作り始める前...


 「分かったから。とりあえず、早く任務に向かうために母を早く眠らせることだ。そのために夕飯は作っておこうと思う。お風呂も済ませておかないとね...」

 「じゃあじゃあ!一緒にお風呂入れるの?」

 「まぁお風呂入る準備してくるから待ってて」

 そのまま、荷物を置いて寝間着を取るために、自分の部屋に向かった。桜夜はリビングで落ち着きもなくヒト型のまま歩き回っている。準備を終えて...

 「よし、桜夜をしっかり洗わなきゃね...」

 「念願のお風呂...」

 桜夜は、待ちわびたように鼻息をフンスフンスとたてている。

 「”桜夜の体”はね?」

 「え?」

 凛大は指をパチンと鳴らす。依頼から帰った時などに使っている、体を清潔にする能力である。

 『そうだった...お風呂に入らずとも綺麗にできるんだ...でも!まだだ!まだ覗けないわけでもないんだ!凛大の入浴中に覗けば...』

なんていう、桜夜の下心は凛大に筒抜けである。

 「よしヒト型は綺麗になったし、ネコになってもらおうか?」

 おとなしく桜夜はネコ型になる。

 「霊魂隔離れいこんかくり

 凛大の詠唱が桜夜に影響を与える。気づけば桜夜は体が薄く透けていた。さらに言えば、”動いていない普通の体”と”動いている透けた体”に分かれている。何もわからず、桜夜はされるがままになる。

 「霊魂捕縛れいこんほばく

 凛大の詠唱で、透けている桜夜は、ほぼ動けなくなった。

 「じゃあ桜夜とお風呂入ってくるから。おとなしく桜夜は待っててねぇ~」

 嘲笑うかのように凛大は桜夜の体を持ってお風呂に入った。お風呂から上がったとき、桜夜は透けたままヒト型になって顔を赤くして悶えていた。

 「私の体が洗われてる...凄い...触ってる感覚がそのまま伝わってた...」

 その桜夜の一言で凛大はすべてを理解した。

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