第4話 進路相談②
俺が頭を下げてから数秒。母さんがはぁ~と深い深いため息をついた。
「もう何を言っても聞かないんでしょう? とりあえず頭を上げなさい」
「……」
「隼人が本気でやりたいというのは分かったわ。私はFPSはあんまりだからよく分からないけど、すごく強いっていうのもお父さんがいうから間違いないと思う。でも、どうしても心配なの。だから、大学には行ってちょうだい。意味はないかもしれない。でも、この国では大卒というだけで就職するときに違いが生まれる。入ってしまえば関係ないけど、選考の段階ではね。だから、気休め程度の保険にはなると思う」
「でも…それは無駄な金にならない? それならいっそ高卒でプロになるために集中した方が」
「あなたの大学費用はお父さんと用意してるの。別に途中で生活の目途が立ったなら辞めてもいい。でも、ダメだったときのために進学はしなさい。あなたも、いいでしょう?」
「そうだね。由美がそれで納得するなら構わないよ。進学するのは悪いことじゃないしな。実際俺は大学で碌に勉強なんてしちゃいないけど、大卒と高卒で新規採用のときに給与額違うし」
「俺、こないだの模試の偏差値50ちょいだけど」
「ま、選ばなけりゃ受かるとこはあるから心配ないよ」
2人ともとりあえず大学には行けって言うけど、入れるとこに入って、モチベーションなく通って、果たしてそんな生活に意味はあるのだろうか。大学に通うとなればそれだけでもお金がかかる。2人に負担を強いて、こんな気持ちで大学に進むのが果たして正しいのか?
「進学は隼人の将来を思ってとはいえこちらのエゴだからお金のことはいいわ。あと、私が少しでも安心して隼人の夢を応援できるように頑張ること! それを約束してちょうだい」
「いいの?」
「どうせ言っても聞かないなら、私だって応援してあげたいもの。素人の私でもすごいって思えるようなプレイヤーに早くなってね」
母さんはきっともっと俺に言いたいことがあるはずだ。でも、それをぐっと飲みこんで俺の意見を受け入れてくれた。
大学も通うだけになるだろうことも分かってると思う。それでも行かせてくれるというのなら、俺が断る理由はない。
「本当にありがとう。俺、死に物狂いでやるから。TBでプロになって、母さんも安心できるくらい稼げるようになってみせる」
「よかったなぁ隼人。母さんに感謝しろよ?」
「父さんもありがとう。2人を説得しなきゃいけないと思ってたよ」
「お前にFPSを教えたのは俺だからなぁ。まさかこんな化け物みたいになるとは思ってなかったけど。プロになったら俺のことをキャリーしてくれ」
「それブースティングじゃない?」
「おっと、BANされちまうな」
はっはっはと大笑いする父さんにつられて母さんもクスリと笑みを零す。
こうして俺の進路については話がつき、そこから俺はTBに一層のめり込むことになったのだった。
高校でも2年までは赤点取るほど成績が悪いわけじゃなかったし病気以外はちゃんと通ってたから出席日数も問題ない。
それからはTBにかける時間をさらに増やし、受験勉強に取り組む同級生のように、TBに死に物狂いで取り組んだ。
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