第30話 今日の晩御飯はどっか美味しいところに食べに行こうぜ④

「「「「「「「「「「グギェギェギェギェギェギェ」」」」」」」」」」

「ちっ。うらぁぁぁぁぁぁああああ!!」


 俺は右手で持った小太刀で一匹のモンスターを切り捨て、左手に持った小太刀でその後ろから迫ってくるモンスターを切り捨てる。

 小太刀を順手から逆手に持ち替えて返す刀で三匹目、四匹目と切り捨てていく。


 モンスターたちの動きはさっきまでと明らかに違っていた。

 さっきまでは一目散に俺に向かってきていたのに、今は一匹ずつ。だが確実に俺の方に向かって攻撃を仕掛けてきている。

 何が厄介って、絶妙に距離をあけて攻撃してくるので、一度に複数のモンスターを倒すことができないのだ。

 一糸乱れぬ攻撃のため、タイミングもシビアだ。


「あああああああ!!」


 ボボボボボと、モンスターが消える音が断続的に響く。


 だが、俺は確実にモンスターを切り捨てていく。

 こんなの、音ゲーみたいなものだ。

 音楽はかかっていないが。


 襲撃の最初からやられていたら対処は不可能だったが、今の俺なら対処は可能だ。

 面倒ではあるが。


 モンスターの数もどんどん減っており、残り数十匹になっている。


「……」


 ボスは動かず、ずっと俺の方を見ている。

 ボスにとって、今の攻撃は前哨戦のつもりなのだろう。


 俺が音無の音ゲーをやっているうちに、敵モンスターの数は十匹を切る。


「グギェーー!」

「! しまっ!!」


 残り三匹となったところで、一匹の醜兎が俺の脇をすり抜けていった。

 そのまま一直線に京子の方へと向かっていく。


 やられた。

 狙いはこれだったのか。


 俺に支援魔法を送っている京子を先に倒せば、後から戦うボスはかなり戦闘が楽になる。

 そんなふうに考えたのだろう。


「……」


 迫り来る二匹のモンスターと京子に向かっていく一匹のモンスター。

 そして、迫ってくるモンスターには目もくれず、俺へと支援魔法を飛ばしてくれる京子。

 どちらを選ぶかなんて最初から決まっている。


「させるかぁぁ!」


 俺は自分に向かってくるモンスターに背を向け、京子へと向かうモンスターを切り捨てる。

 クリーンヒットはしなかったらしく、俺の攻撃を受けたモンスターは壁際まで吹っ飛んでいって、その場所でボフッと音を立てて煙となる。


「グギェェェェェ!!」


 気がつくと、『俺』の目の前には大口を開けたボスが迫ってきていた。

 おそらく、この瞬間を狙っていたのだろう。

 ボスの顔には満面の笑みが浮かんでいるように見えた。


 げっ歯類特有の長い前歯が『俺』へと迫ってくる。

 あの歯で噛みつかれるとかなり痛そうだ。

 ランクアップ現象の影響か、敵のモンスターはかなり強くなっているし、忍者のジョブは回避特化なためか、俺のHPはそれほど高くない。

 あれをくらえばかなりまずいかもしれない。


――ガチン!


 ボスの前歯が『俺』へと食い込む。


――ぽん。

「!!」


 そして、『俺』は軽い音を立てて、丸太へと変わる。


「『木遁・身代わりの術』」

「!!」


 俺はゆらりとボスの後ろに姿を現す。

 俺の後ろではボボフっと音を立ててボスに押し除けられた哀れな二匹の醜兎が煙にかえる。


 つまり、あとはボス一匹しか残っていないということだ。


「『忍法・』」


 俺は怒っていた。

 こいつは俺ではなく京子を狙った。

 俺のためにずっと支援をしてくれていた京子をだ。


 確かに、そちらの方が効率的だったのだろう。

 だがそんなのかんけぇねぇ!

 俺の大切な存在に手を出した報いを受けさせてやる。


 だから、今まで使っていなかった大技を使うことにした。

 オーバーキルになると思うが、そんなの気にすることはない。


 俺は忍者のレベルが上がった時に手に入れた大業を発動する。


「『花時雨』!」

「!!」


 スキルを発動した瞬間、周りの時間が止まったようになる。

 周りが止まったのではなく、俺が速くなったのだ。


 俺はスキルの導くままに連撃を繰り出す。


――ボフ!


 花時雨を受けたボスは煙と化して消えていく。


――――――――――

色欲の醜兎(D)×11486を倒しました。

色欲の大醜兎(D)を倒しました。

経験値を獲得しました。

色欲の迷宮(D)が攻略されました。

報酬:5843379円獲得しました。

ジョブ『見習いNINJA』のランクが上がりました。

ジョブ『見習いNINJA』が上限ランク『Ⅹ』に到達しました。

ジョブ『NINJA』を獲得しました。

ドロップアイテム:下級ポーション×153を獲得しました。

ドロップアイテム:中級ポーション×12を獲得しました。

ドロップアイテム:醜兎の牙(D)×587を獲得しました。

ドロップアイテム:醜兎の毛皮(D)×73を獲得しました。

ドロップアイテム:醜兎の骨(D)×23を獲得しました。

ドロップアイテム:大醜兎の牙(D)を獲得しました。

称号『災禍の生還者』を獲得しました。

称号『双刀の極意』を獲得しました。

称号『一騎当千』を獲得しました。

称号『一撃一殺』を獲得しました。

称号『最適解』を獲得しました。

称号『忍び、鍛える者』を獲得しました。

称号『不撓不屈』を獲得しました。

称号『守護者』を獲得しました。

称号『聖女親衛隊』を獲得しました。

――――――――――


 こうして、ダンジョンのランクアップ現象による魔物の氾濫は鎮圧された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

初のダンジョン踏破以来の称号大量獲得です。

みんながしないことをすると称号が大量に獲得できますね。

そして、サグルは聖女親衛隊に任命されました。

ユニークジョブにはこれ系の称号がたくさんあります。

『魔王の側近』とか、『勇者の従者』とかですね。

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