第8話 もしかして、俺の体、改造されちゃってる?②
「えっと。助けていただき、ありがとうございます」
「いや、気にしなくてもいいよ。助けられてよかった」
女の子は深々と頭を下げる。
かなりしっかりした女の子のようだ。
しかも相当な美少女だ。
このレベルは芸能人でもないとなかなかお目にかかれない。
俺はアニオタなので、あんまり芸能人知らないけど。
「えっと、そうだ、さっきのポーション代!」
「あ、大丈夫だよ。あれくらい気にしなくて」
「で、でも」
ポーションは一本数万円する。
こっちが勝手に使っておいて、そこまでの大金を請求するのは少し気が引ける。
この子あんまりお金持ってなさそうだし。
「それより、どうしてこんな状況になったんだ?」
「そ、それは」
とりあえず話題を変えようと思って、どうしてあんな絶体絶命の状況になったのか聞いてみたが、失敗だったらしい。
美少女女子高生は顔を伏せる。
「……実は、私、見習い剣士と見習い魔法使いとパーティを組んでいたんです」
「うん」
彼女は
京子はこれまでの経緯を話し始めた。
京子は一週間くらい前から、大学生の見習い戦士とフリーターの見習い魔法使いと一緒にパーティを組んでいた。
いつもはFランクダンジョンに潜っているのだそうだ。
京子達はこの辺りでは初心者を抜けて初級者になったくらいの実力らしい。
普段であれば、朝から潜り始めて、モンスターを倒しながらダンジョン攻略を目指し、一、二回ダンジョンを攻略できるので、一人当たり数千円の報酬が出ている。
この辺りではそれくらいの実力の探索者が結構いるらしい。
京子も自分のパーティの探索者以外とは出会ったことがないらしいが、パーティメンバーがそういっているのを聞いたそうだ。
「でも、今日は一度もダンジョンを攻略できませんでした。それに、ダンジョンにいられる時間も短かったので、モンスターの討伐数も少なくて、一人千円行くかどうかくらいしか稼げなかったんです」
「な、なるほど?」
どういう仕組みになっているのかわからないが、ダンジョンの中では外の十倍の時間が流れる。
だから、モンスターを倒して稼ぐにしても、一つのダンジョンに長くいた方がたくさん稼げるのだ。
今日は京子達の潜ったダンジョンが悉く攻略され、うまく稼ぐことができなかった。
ちゃんと出来立てのダンジョンに潜ったにもかかわらずだ。
(やべー)
俺は内心冷や汗を流していた。
京子が稼げなかった原因には心当たりがある。
多分、今日は俺がダンジョンをガンガン攻略していたからだ。
それに、ダンジョンが攻略されると、同じタイミングで中にいた探索者がダンジョンの外に出てくる。
そこから一番近くにある出来立てのダンジョンに向かえば、大体同じダンジョンに向かうことになる。
京子は運悪く俺と同じダンジョンに潜り続けていたのだろう。
「それで、ケンタ。あぁ、フリーターの見習い魔法使いのことです。彼が、このままじゃ今日支払予定のお金がたまらないって言い出して、私たちももう一週間以上ダンジョンに潜ってるし、Eランクダンジョンに挑戦してみようってことになったんです」
「おっふ」
京子達も夕方からはダンジョンの攻略ペースが上がることは知っていたらしい。
このまま潜り続けていても、大した額稼げないことはわかっていた。
そのため、一気にお金を稼ぐためにEランクダンジョンに挑戦することにしたそうだ。
Eランクダンジョンなら、すぐに攻略されることもないし、モンスターを倒すだけでも今までの十倍のお金が手に入る。
パーティなら『見習い』職でもEランクダンジョンに潜るのは不可能ではないそうだ。
ケンタは掲示板などをチェックしており、そういう情報を得ていた。
ちなみに、これは後で分かったことだが、フルパーティの五人組でかつ『見習い』職のランク『Ⅸ』か『Ⅹ』ならEランクでもなんとか通用するレベルらしい。
京子達は三人組だし、まだランク『Ⅱ』か『Ⅲ』くらいだったため、Eランクには実力不足だった。
「それで、初戦闘でさっきの蜘蛛と出会って、必死で逃げたんですが逃げきれなくて、二人が、私を、囮に……」
「あ〜。ごめん。もういいよ。大体わかったから」
「ぁ」
俺は嗚咽を漏らし始めた京子の頭を撫でる。
一瞬しまったと思ったが、特に振り解かれることもなく、京子は撫でられるがままにしている。
ダンジョンからはいつでも脱出できるが、戦闘中は脱出することができない。
一度戦闘になれば相手を倒すか、敵から逃げ切らないといけないのだ。
京子達は飛蜘蛛から逃げきれなかった。
そこで、大学生とフリーターの二人は彼女を囮にして、逃げていったそうだ。
パーティリーダーはケンタだったため、パーティも勝手に解散されてしまった。
パーティメンバーはお互いがどこにいるかわかるのだが、パーティから外されてしまうとそれもわからなくなる。
ダンジョンのマッピングはケンタが行なっており、京子には出口すらわからなかった。
どこに逃げたらいいかもわからず、必死に逃げ続けていたが、ついに飛蜘蛛に追いつかれてしまい、攻撃を受け、絶体絶命のところに俺がやってきたということらしい。
俺は京子が泣き止むまで優しく彼女の頭を撫で続けた。
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