第16話 誰に調査をお願いするの?
「特にメガバンクは、日本全国の市場や企業調査を専門に行う部隊を持っているから、協力をお願いすれば色々と教えてくれると思うよ」
「すごい……私、銀行にそんなサービスがあるなんて知りませんでした」
「もちろん個人向けではないけどね。銀行も融資先の事業が拡大して取引が増えることが大事だから。それに、やはり全国企業ネットワークを一番しっかりと構築しているのがメガバンクだからね」
白馬機工のメインバンクは、所謂メガバンクの一角。
たまにM&A案件の紹介をしてくれることがあるのは知っていたが、企業調査をしてくれるとは……
「あの、費用は高いんですか?」
「話を聞くだけなら費用は請求されないと思うよ」
真奈美はこっそりガッツポーズ。
やはり、経営管理部出身だけあって、コスト感覚は研ぎ澄まされていた。
「では、早速紹介をしていただけますか?」
真奈美は満面の笑みで依頼したが……山田は渋い顔をしている。
「……な、何か問題が?」
「うん。もちろん、銀行に話を聞けばいろいろと教えてもらえるだろう。
でもね……」
山田は真剣な表情で真奈美を見た。
「他人のふんどしを借りるだけじゃ、経験は蓄積されないよね」
真奈美はハッとした。
確かに、山田の言う通りだ。
ここで安易に銀行の全国ネットワークパワーを借りることは簡単。
でも……
「……はい、それじゃ、私も成長できないです」
真奈美は安易に人の手を借りようとしたことを恥じて、俯いて答えた。
「うん。いずれ銀行にも力を借りるとして、まずはできる範囲で自分で調査してみるのがいいんじゃないかな。手当たり次第でもね」
「はい。とにかく、がんばってみます」
こう回答したものの、実は結局、何一つ問題は解決されていない。
自分で調査って、何したらいいのか?
……このそもそもの問題に答えは示されなかった。
でも、覚悟は決まった。
もう、具体的なイメージが湧かないなんて弱音は吐かない。
やれることを、全部やってやる。
そんな真奈美の決意を見た山田は、やっと表情を緩めて、優しい笑顔を真奈美に向けた。
「じゃあ、少しだけアドバイスをしようか」
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