第4話 生みの親

「どこの事業本部でしょうか」


 真奈美が質問すると、落合は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 よくぞ聞いてくれた、ということだろう。


「パワーロボティクス事業本部だよ」


 パワーロボティクス事業本部。

 製造の現場での力作業を補助する全身装着型パワードスーツの開発・生産・販売を行っている。

 

 この事業は、長年、中央研究室で研究されていたもので、当社の次期主力事業として期待され数年前に事業本部化された。

 白馬機工の中では最も新しい本部のため、売上・利益はまだ小さい。


「知っての通り、パワーロボティクスへの期待は強いが、今のラインナップではなかなか事業拡大につながらない。そこで、買収も考えてみたいという相談が来たんだ」


 落合は本当に嬉しそうに話す。


(なるほど、中央研究所は落合CTO直轄組織。パワーロボティクス事業本部にとって落合CTOは生みの親ってことね)


 真奈美は落合の表情を見て、微笑ましく感じた。

 事業本部が自らM&Aの相談に来たことが嬉しくて仕方がないという気持ちが溢れかえっている。


「とはいえ、彼らはどのように買収先をさがせばよいかという知識を持っていない。だから、酒井さんに相談したかったんだ」


 それを聞いて、真奈美はハッと我に帰った。


「わ、私ですか?そんな大事なお話なら、MA推進部の中でも他に……」


 慌ててしどろもどろになる真奈美を、落合は笑顔で制した。


「いや、酒井さんにお願いしたいんだ」

「……」


 なんと言っていいか分からず言葉が出ない真奈美を見て、落合は真奈美が理由を理解できていないことを察した。


「その理由はね……」






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