第107話 作者が終わらせようとした作品たち
今でこそ、コナン・ドイルと言えば「シャーロック・ホームズ」の生みの親であり、「名探偵コナン」のネーミングの元ネタとして有名ですが(笑)、元々は推理作家ではなく、歴史作家を目指す「医師」でした。
患者を待っている暇な時間を利用して短編小説を書き、雑誌社に投稿。
小遣い稼ぎになったものの、ヒットとは言えません。
そして、出版社の依頼で、探偵を主人公とした小説を書くと、それが大ヒット。
シャーロック・ホームズが登場する作品の第1作目「緋色の研究」です。
その後、「シャーロック・ホームズ」シリーズが爆発的人気となり、医者を辞めて専業作家となります。
ですが「本当は歴史作家として名を成したい」ドイルは、「ホームズ」の評判が高くなりすぎたことをよく思っていませんでした。
「最後の事件」という作品で、ホームズをライヘンバッハの滝に落として、シリーズを完結させてしまいます。
そして思う存分に歴史小説を書きますが、「ホームズ」ほどには売れず、出版社や読者からは「ホームズの続きを!」と熱望する声が届きます。
「実はホームズは生きていた」設定にして、「シャーロック・ホームズ」シリーズを続けることになるのです。
児童文学で有名な「ドリトル先生」や「ピノキオ」にも、そんな逸話があります。
動物の言葉が分かる不思議な獣医を主人公とした児童文学「ドリトル先生」シリーズは、作者のヒュー・ロフティングがシリーズを重ねるうちにマンネリ化を感じ、第8作目の「ドリトル先生 月へゆく」で、ドリトルを月に置き去りにしたまま、最終回としました。
この作品もやはり、ファンからの熱い要望で続編を執筆することになり、次作の第9作「ドリトル先生 月から帰る」で、ドリトルは無事に生還を果たすことになります。
ディズニーのアニメで、世界的にも有名になった「ウソをつくと鼻が伸びる、子供の姿をした人形」の「ピノキオ」。
原作はカルロ・コッローディが生み出した、新聞連載の児童小説「ピノッキオの冒険」ですが、実は借金返済のために受けた仕事だったそうです。
コッローディは、ギャンブル癖があり、多額の借金がありました。そんな時に知り合いの編集者から、児童文学の依頼が来ます。
「ギャラが高ければ引き受けてもいい」と言ったところ、予想以上の金額を提示されました。
新聞連載の小説は、一回ごとにギャラが支払われ、十数回の連載で借金が完済できたので、もう用済みとばかりに「ピノキオ」を首吊りで殺すという唐突に残酷な結末で、連載の仕事を辞めました。極端すぎる人だなー。
もちろん、抗議の声が殺到し、「実は生きていました」パターンで続編を書く(書かされる?)ことになるワケですが……。
人気が出ても、作者サイドには様々な思惑があるようです。
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