第200話 眷属会議
Side:天道 レイナ
私は我道さん(キンちゃん)と大地が療養している病室にやってきた。病室に入ると、我道さんが私に気付いて声をかけてくる。
「あらレイナちゃん。お見舞いに来てくれたのねん」
私はベッドに近づいていきながら、具合を尋ねた。
「調子はどう? 二人とも」
「アタシは見ての通りよん。すっかり元気になったわ」
「俺も問題ない。レイナ、すぐにでも体を動かしたい。模擬戦の相手を頼めるか?」
二人とも元気そうでよかったわ。
「今日一日は寝てなさい」
「……分かった」
大地は一瞬不満そうな顔をしたけれど、私の無言の睨みが効いたのか、布団をかぶって寝始めた。
案外素直ね……
「この子から全部聞いたわ……大変なことになってるみたいねん。英人ちゃんは無事なの?」
ベッドには、我道さんに抱きつくように眠っている未来ちゃんがいた。
我道さんは未来ちゃんの頭を撫でながら、英人の容態を尋ねてくる。
「わからないわ……一応生きているとの事だけれど、いつ目覚めるかは不明よ」
「そう……アタシが気を失わなければ、結果は変わってたかしらね……」
やっぱり、みんなの中に共通の認識としてあるみたいね。
ネメアとまともに対峙するどころか、配下の侯爵でさえ苦戦を強いられた。
二人一組で行動していたから勝てたものの、一対一だったら勝てるかも怪しいわ。
もっと強くならないといけないわ……
S級に昇格したからS級ダンジョンに入れるけれど、クランの仕事でそれどころじゃない。
しばらくは、クランハウスで空いた時間にトレーニングするしかなさそうね。
こうして二人の具合を確認した私は、我道さんと大地の病室を後にした。
***
Side:リュート
箱庭にある王城の一室で、サクヤとリュウキ、それから何人かのドラゴニュート達を集めて会議が行われている。
「王が回復する目処は立っていない……我々はどうするべきだと思う?」
私は円卓を挟んで向かいに座るサクヤ達に問いかける。
「サクヤにはわからないのです〜」
サクヤは円卓に突っ伏し、力無さげにそう言った。
「どうするって……主人が戻ってくるまで、ひたすら強くなるしかねえだろう?」
「リュウキの言う事は尤もだ……我等もそうだが、部下達のレベルももう頭打ちだろう。これ以上どう強くなる?」
先の戦いで、私を含めドラゴニュートの大半がレベル100に到達した。
レベルは頭打ち、後は各々で技能やスキルの扱いを極めていくしかないが、それでもネメアレベルの敵と肩を並べられるほどではないように思える。
「どうって、ん〜」
リュウキは頭を抱えてしまった。
「発言よろしいでしょうか? リュート様」
発言を求めてきたのは、一人のドラゴニュートだった。
彼女には戦闘の才はほぼないが、知脳がずば抜けて高い個体だった為、私の側に置いている個体だ。
彼女の助言で助かった場面は多くある。
「許可しよう。何かいい案はあるか?」
「我々配下の経験値は、陛下にも分配されているとの事でした」
軍隊編成というスキルの効果で、王が得た経験値が配下に分配され、配下が得た経験値も王に分配されるというものだ。
「ああ、それがどうした?」
「私の推測では、陛下のレベルはもう時期100になる頃合いかと……これまでキリの良いレベルで、様々なスキルが解放されてきたと伺っております。であれば、陛下のレベルが100になることで、何かしらの変化があるのではないでしょうか?」
なるほど、そうか……王のレベルが100になれば、新たなスキルを習得なさるかもしれない。
そのスキルが軍隊編成のような、我々にも関係するスキルであれば……
そこまで考えて、私はある疑問が芽生えた。
「その通りかも知れないが……王のレベルが既に100という可能性は? あれだけ吸血鬼を倒したのだ。既にレベルアップしていてもおかしくないだろう?」
「そうかも知れませんが、真祖吸血鬼ネメアの経験値はおそらく入っていないかと思われます。だとすると、100にギリギリ届かないレベルで止まっている可能性があります」
ネメアの最後はこの目で見た。
その時既にレベルが100だった私は、経験値が入ったかどうか分からない。
あの場に居た者全員、おそらくレベルアップしていないはずだ。
「ふむ……その可能性は大きいかも知れないな」
王のレベルは、確か私たちより遥に上がりにくかったはずだ。
前にサクヤや私のレベルが先に上がったことで、少しだけ愚痴をこぼしていた記憶がある。
私と部下のドラゴニュートがそう話していると、リュウキが口を挟む。
「よく分かんねえけどよ……レベルが100になっていないとしたら何なんだよ?」
脳が筋肉できているリュウキの質問に、彼女が答えた。
「レベル100で得られる恩恵は、これまでの比ではないと考えられます。もしかすると、陛下が目覚めるきっかけになるのではないかと……」
「「「っ ! ?」」」
この場の全員が、雷に打たれた様に体をびくつかせる。
しばらくの静寂の後、リュウキが徐に立ち上がり言った。
「こうしちゃいられねえ! おいリュート! さっさとダンジョン行くぞ!」
私は逸るリュウキを宥めた。
「落ち着け。これまでもダンジョンの周回を行なってきたが、もう王のレベルは上がらないという話だっただろう?」
ネメアの襲撃以前まで、眷属だけでダンジョンを周回していた。
魔石は大量に集まったが、王のレベルは90あたりで止まったはずだ。
「もっと脳みそ使えよリュート。俺たちが周回してたのはA級だぜ……もう一個上のダンジョンがあんだろ?」
ぐっ……こいつに言われると腹が立つ。
だがリュウキのいう通りだ。
主人の探索者階級が上がった事で、S級ダンジョンにもう入れるはずだ。
我々が無断で入って良いかはともかく……
「各自準備しろ……すぐにダンジョンに向かうぞ」
「おうよ! 狩りまくるぜ!」
その後慌ただしく準備が行われ、我々はS級ダンジョンへと向かった。
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