第159話 原因と結果
Side:レオナルド・オルティリオ
静寂が中庭を包む。
頼む……その状態から再生してくれ! 一生のお願いだ!
祈る事数秒、神は俺の願いを聞き入れた。
――ゴゴゴオ!
爺さんだった肉片から、凄まじいエネルギーが溢れ出す。
その余りの強さに、強烈なプレッシャーとなって周囲を襲う。
「いいね。そうこなくちゃ」
飛び散った血や肉片が一点に集まっている。
あれは心臓か?
集まった血が最初に形を成したのは心臓の部分だった。
そこから数秒で、爺さんの全身が構築された。
ちなみにフルチンだ。
どうやら服は再生しないみたいだね。
「クハハ! 今のはちと驚いたぞ! 小僧の能力は必中の斬撃か? 面白い!」
俺のユニークスキルを見たやつは、必ずと言っていいほど誤解するんだよ。
別に斬撃が飛んでいるわけじゃない。
ただそう見えるだけなのにね。
「ならば攻撃が当たろうが無意味な程に、我輩の肉体を強化すればいいだけのことであろう……」
単純だけど、これは正解。
それやられると困るんだよねぇ……英人も同じことしてくるし。
「呪血解放・
爺さんの姿は、それまで人間にツノが生えたりと、割と人間の姿に近かった。
だけど今は違う。
爺さんの全身は今や黒い体毛に覆われ、牙はさらに鋭く、手足に凶悪な鉤爪が伸びている。
見た目もそうだけど、感じる圧力もやばいねこれ!
「アハハ! マジモンのバケモンじゃんか!」
こんなに強いやつがいるなんて……感動で涙が出そうだよ。
こいつを殺したら……俺はどんだけ強くなっちゃうんだろうなぁ ! ?
「いくぞ小僧……早々に死んでくれるなよ?」
「こいよ!」
次の瞬間、爺さんのは俺の目の前にいた。
「まずは、こいつから……異界の鬼の力だ。
拳に膨大なエネルギーが集まるのは見えた。
だが気づいた時には、拳は俺の頬にめり込んでいた。
――ドーン!
「がはっ ! ?」
おそらくクランハウスの外壁に、俺は叩きつけられていた。
あっぶねえ……ユニークスキルが間に合わなかったら死んでたかもね。
「あぁ……いってえな」
顎に走る強烈な痛みを耐え、瓦礫の山から抜け出す。
「レオナルド ! ?」
ユミレアが遠くから俺に声をかける。
「大丈夫大丈夫……」
とりあえず頭が吹き飛ぶのは避けた。
「ほう……その程度の怪我で済んだか。しかし小僧、妙な手応えだったな。貴様何をした?」
「教えるバカがどこにいんだよ?」
俺の「因果必結」は、ある「原因」と「結果」を無理やり結びつけると言うもの。
例えば剣を振ったという「原因」があったとしようか。
剣を振ったことで得られる「結果」を、俺が無理やり結びつけているんだ。
だから剣が仮に空振りだったとしても、本来命中していた場合の「結果」を無理やり呼び起こす。
どれだけ距離が離れていようと、俺の認知できる範囲にいれば命中する。
故に必中となる。
まあ見せたほうが早いよな。
「神速無双連剣!」
さっき爺さんを細切れにした乱舞をもう一度。
俺の連撃は空を斬る、これが「原因」。
――キン! キキン!
「む? クハハ! もう先ほどまでの我輩ではないぞ?」
命中したという「結果」を結びつけ、必中させた斬撃は奴の体毛さえも斬る事はなかった。
そう……俺のスキルは使いづらい部分もあって、「原因」から大きく離れた「結果」は結びつけられない。
「原因」以上の「結果」は生まれない。
簡単に言えば、俺に斬れないものはユニークスキルを使っても斬れない。
さっき爺さんを細切れにした技も、今の爺さんには効果がない。
どうしたもんかね……
今までは良かったんだ。
俺よりステータスの高い奴はいないし、俺の攻撃が全く通らない敵もいなかった。
だけど日本に来てから、俺に斬れないものが増えた。
爺さん然り、英人のやつもそうだ。
ハァ……今が分かれ道ってわけだな。
「まだまだ我輩のコレクションはこれからだぞ小僧? 雷帝!」
爺さんが右手を掲げると、そこに血が集まり、やがて真っ赤な斧の形を成した。
――ゴロゴロゴロ!
そして真っ赤な血の斧に雷が発生し始める。
「これは雷帝と呼ばれたドワーフの技……存分に味わえ!」
これはやばいねぇ……
「因果必結」は防御にも使える。
「避ける」とか「ガードする」とか、回避や防御の「原因」となる行動を起こすことで、「避けた」もしくは「防いだ」という結果を無理やり結ぶ。
そうすることで本来回避が間に合わないはずの攻撃も、俺への被害を最小限にできる。
だけどこの爺さんみたいに避け切れないほどの広範囲だったり、防ぎ切れない程の威力だったりすると、俺のユニークスキルは効果が薄い。
「クハハ! 死ねい!
ほらな……さっきまで結構距離があったのに、もう目の前に爺さんがいる。
振り下ろされる雷を纏った真紅の大斧。
辺り一面に雷撃が放たれる。
やっべぇ……避け切れねぇ――
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