第24話 リュートのビルド

 探索を終えて帰宅すると、玄関で鈴が待ち構えていた。


「ただいま鈴」


「お兄ちゃんおかえり! C級に上がったんでしょ!?  おめでとうお兄ちゃん!」


「あ、ありがとう。なんで知ってるんだ?」


 連絡した覚えはないいんだが……

 

「お兄ちゃんインタビューされなかった? その時の動画がDニュースで特集されてるよ!」


 Dニュースとは主にダンジョンに関する情報を扱うサイトで、Dリーグの情報や探索者の特集を主に配信している。


 まあ、インタビューを受けたからどこかに載っていると思ったが……特集されたのか。


「見てみて! ほら!」


『大剣の英雄の再来か!? 天霧ジュニア圧倒的勝利でC級へ! Dリーグ参戦を表明』


 随分と大袈裟な見出しだな……


 見出しと共に、試合の映像とインタビューの映像が流れている。


 試合映像も出ているのか、まあ「龍纏」はシンプルな強化のスキルだから対策のしようがない。

 気にしなくても大丈夫だろう……多分。


「まだC級だし、そんなに騒ぐことかな?」


「お父さんが有名だから期待されてるんだよ」


「まあ、それが理由だよな……」


 父さんは世界中のS級探索者やユニークジョブ持ちが出場する国際大会で3連覇している。

 さらには協会の「ダンジョンデータベース」を作ったきっかけが父さんだ。


 それまでS級ダンジョンでは死者が後を立たなかった。

 ユニークジョブとスキルを持っていない探索者でも攻略ができるように、詳細なダンジョンの情報を提供した。

 おかげで死者は激減し、上級ジョブだけのパーティーでもS級の攻略が可能になった。


 世間は父さんを、ダンジョンのパイオニアだとか、大剣の英雄だとか持ち上げていた。


 だけど父さんは、死者を減らすためにとか、そんな高尚な志を持っていたわけではない事を知っている。


 ***


『ねえ、父さん。ダンジョンたのしい?』


『んあ? あ〜、最近はそうでもねえな』


『じゃあなんでダンジョンいくの?』

  

『なんでって、俺は探してんだよ。強え奴をな』


『つえーやつ?』

 

『強え奴と戦いてえんだけどよ〜、なかなか居ねえもんだ』


『じゃあおれが父さんよりつよくなる! そしたらたのしくなるよ!』


『……プッ……ハハ! そいつは楽しみだな! 期待してるぜ?』


 ***


 父さんは戦闘狂だ、それが「狂戦士」というジョブにも現れている。


 多分ダンジョンの情報を提供したのも、それで下の探索者が育って欲しかったんじゃないかな?

 まあ、今では聞くこともできないけど。


「お兄ちゃん? どうしたの?」


「ああ、ごめん。少し考え事してたみたいだ」

 

 その後はいつものように夕食を食べ、忙しい1日が終わった。



 

 リュートが仲間になって3日が経った。

 この三日間、俺はリュートのビルドを作るための魔石を集めて過ごした。

 俺のレベルは40に上がり、リュートは16になっている。

 

 この三日間は最初に行ったC級ダンジョンで狩りをしていた。

 魔石もそこそこ貯まったし、そろそろリュートのビルドを作っていこうと思う。

 

 家の庭でリュートを出す訳にはいかないので、リュートを召喚したC級ダンジョンに行くことにした。

 

 尻尾と角があるし、あと普通に喋れるから説明のしようが無い。

 魔物を召喚したり使役するようなジョブはそもそも確認されていないから、尚更説明に困る。


  


 ダンジョンに入場すると、一層の入り口付近で見覚えのある探索者がいた。


「やあみんな! 僕はアーサー。今日はこのC級ダンジョンで、最近噂の異常個体の魔物を討伐しようと思う。僕が華麗に、そしてあざやかに魔物を屠る姿を見ていてくれたまえ!」

 

 あの人は確か……俺がD級昇格試験を受けた時にC級に上がっていた人だ。

 

 金色の鎧に槍を持っていて、シーカーリングでおそらくカメラを起動しているんだろう。

 長い金髪をかき上げながらカメラに向かって喋っている。


 多分あれは配信者というやつだろう。

 ダンジョンを攻略する様子を、Dチューブという専用のサイトにアップしている人たちだ。

 人気な人はダンジョンの報酬よりも稼ぐ人もいるんだとか。


「今日はアーサーチャンネルにとって歴史的な日になるだろうね。それを目撃する君たちは運がいい!」

 

 アーサーさんは生きた魔物を倒せるのかな?

 そんなに強そうには見えないな……


 少しアーサーさんが心配だが、俺は予定通りにリュートのビルドを仕上げるために第一層の人目につかない場所を目指した。




 結界石で安全地帯を形成し、リュートを召喚する。


「おはようございます、王よ。今日も魔石を集めに行かれるのですか?」


 こいつは毎回跪いた状態で出てくる。

 俺が特に指示しているわけでは無い。


「今日はリュートのビルドを構築しようと思ってるんだけど、得意な武器種とかあるのか?」


「王から賜る武器であれば、どんなものでも使いこなして見せましょう」


 うーん、どういうビルドに仕上げようかな?


 一旦溜まっている魔石を分解して、それから考えてみるか。

 

 俺は魔石分解を起動して、魔石を分解していった。

 現状ではC級魔石一個でF級が64個になる。


 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:77個(+66)

 ・E級;1683個(+92)

 ・D級:515個(+178)

 ・C級:368個(+334)

 ______

 

 各魔石を200個ほど残して、全てをF級に変換した。


 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:20717個(+5600+4800+10240)

 ・E級;283個(−1400)

 ・D級:215個(−300)

 ・C級:208個(−160)

 ______

 

 F級魔石が二万個ほど溜まったか。

 

 俺は16000をスキルガチャに回して、残りの魔石で武装ガチャを引いた。


 各スキルのオーブはそれぞれ約40個ほど確保できた。

 レベル10には出来ないけど、全スキルをレベル8にできる分は集まった。


 そして龍のスキルは新たに4つほど、被ることなく手に入った。

 被らなかったのはかなり嬉しい。

 

 ______

 リザルト

 ・龍短剣術 NEW

 ・龍弓術 NEW

 ・龍感覚 NEW

 ・龍盾術 NEW

 ______


 それぞれの武器ごとに武術スキルがあるのか……ひとまずは「龍感覚」だけ俺が習得しておこう。

 このスキルが一番の当たりかもしれない。

 ______

 龍感覚

 :発動中は全ての感覚が研ぎ澄まされ、あらゆるものを感知できる。

  感知距離は消費する魔力量によって変動する。

 ______

  

 俺を襲ってくる刺客はおそらく、「魔力隠蔽」と「気配隠蔽」のスキルを高レベルで持っているはず。

 それぞれ「魔力遮断」と「気配遮断」の上位スキルで、レベル10になるとスキルポイントを使って上位スキルにできる。


 通常なら感知系の上位スキルの「魔力察知」などが必要になるが、もしかしたら「龍感覚」であれば、その隠蔽を見破れるかもしれない。


 


 そして武装ガチャの結果だけど、こっちはまあ普通かな?

 合計400連のほとんどは、低レアの「鉄の斧」とか「鋼鉄の槍」みたいなものが多かった。

 

 今回のレアな武器はこの辺かな?


 ______

 リザルト

 ・オリハルコンの槍(A級)

 ・双龍の短剣(A級)

 ・雷龍の大斧(A級)

 ______


 オリハルコン製の武器は一般的にはS級に分類されるけど、どうやら武装ガチャではA級に分類されるらしい。

 

 


 そして集めたスキルオーブで、リュートのビルドを作成した。


 ______

 名前:リュート

 種族:龍人族

 Lv 16

 HP:1600/1600(+1500)

 MP :2000/2000(+1125+800)

 龍気:1600/1600(+1500)


 筋力:1200(+1125)

 耐久:1200(+1125)

 器用:2000(+1125+800)

 敏捷:3000(+1125+800+1000)

 知力:1200(+1125)


 スキル

 ・武術系

 龍短剣術Lv8 、短剣術Lv8、魔闘術Lv7

 ・魔法系

 闇魔法Lv8

 ・強化系

 MP強化Lv8、器用強化Lv8、敏捷強化Lv8

 ・特殊系

 気配遮断Lv8、魔力遮断Lv8、魔力感知Lv8、気配感知Lv8、MP回復速度上昇Lv8、思考加速Lv7

 

 ・装備

 双龍の短剣

 瞬風のグリーヴ(龍馬)

 ______


 リュートのスキルは、少し前から考えていた斥候のビルドにした。


 先ほどガチャで当てた「龍短剣術」を起点に、「暗殺者」ジョブのような構成だ。

 

 リュートは角や尻尾が目立つ。

 だからいつでも隠れられるように闇魔法を習得させた。

 闇魔法のシャドウウォークで、俺の影に気配を消して潜んでいてもらう感じかな。


 MPの消費が多いところは、「MP強化」と「MP回復速度上昇」でカバーする形だ。


「魔闘術」と「思考加速」は、俺のスキル上げを優先してレベル7で止めておく。

 

 そして先ほど当てた「双龍の短剣(A級)」を装備させた。

 この短剣は、二刀で一つの武器で、二刀流で使用する武器みたいだ。

 刀身に龍の紋様が描かれた、深いメタリックな黒色がとても美しい。


「これは……なんと美しい剣。賜った力とこの双剣で、必ずやお役に立って見せましょう」

 

「これからは戦闘に参加してもらうから、よろしく頼むぞ」

 

「ははっ!」


 ガチャを引いたりスキルを習得させたりで、意外と時間が経ってしまった。

 

 少し早いけど、一旦昼休憩するかな。


 そうして俺は母さんに持たせてもらった弁当を食べながら、午後の狩りに備えた。

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