王の道編

第13話 異変の始まり

 勇者の御崎さんと話した翌日。

 日課を終えた俺は、昨日手に入れた「武装ガチャ」と、功績の確認をしていた。


 ______

 「武装ガチャ」

 F級魔石10個を消費して武器を召喚可能。

 ______


 ふむ……、今持っているF級魔石は89個。

 10連には足りないんだけど、武器を10個召喚してもしょうがないんだよなぁ。


 武器は大剣があるし、ひとまず一個だけ召喚してみるかな。


「武装ガチャ」をタップすると、ステータスボード上に魔法陣が現れる。


「1回」をタップすると、召喚演出が始まり武器が召喚される。


 ______

 リザルト

 ・鋼鉄の短剣(D級) NEW

 ______


 鋼鉄の短剣か、D級と書かれているということはS級やA級もあるのかな?


 やっぱり後回しだな……。


 短剣なら「投擲術」を使えば、戦闘で使用できそうだけど。

 弓とか斧が出てきたら、インベントリで肥やしになるのは間違いない。


 今まで入手したスキルで一番意味不明な気がするな。


 まあ、ひとまず置いておくか。

 次は「功績」だな。


 ______

 功績

 ・レベルが10に上昇する:達成

 ・レベルが20に上昇する:達成

 ・???

 ______

 

 報酬は何かな?


 項目をタップするとアナウンスが流れる。

 

『功績の達成報酬により「指定スキル確定チケット」10枚がインベントリに贈られます』


 前回と同じか……。

 これはレベル10毎にもらえると見て良さそうだな。

  

 今回は何に使おうか?


 俺はステータス画面を開き、レベルを上げるスキルを精査する。


 ______

 名前 天霧 英人

 Lv 20 

 HP:2100/2100(+200)

 MP :2100/2100(+200)

 龍気:2800


 筋力 :2200(+200)

 耐久 :2200(+200)

 器用 :2100(+200)

 敏捷 :2100(+200)

 知力 :2200(+200)

 

 スキル

 ・武術系

 剣術Lv4、弓術Lv2、槍術Lv2、斧術Lv1、短剣術Lv1、盾術Lv1、魔闘術Lv3、投擲術Lv2、

 ・魔法系

 火魔法Lv2、水魔法Lv2、風魔法Lv1、地魔法Lv1、光魔法Lv1、闇魔法Lv1、回復魔法Lv1

 ・強化系

 HP強化Lv1、MP強化Lv1、筋力強化Lv2、耐久強化Lv2、器用強化Lv1、敏捷強化Lv1、知力強化Lv2、

 ・耐性系

 火耐性Lv2、水耐性Lv1、風耐性Lv1、地耐性Lv1、光耐性Lv1、闇耐性Lv1、毒耐性Lv2、麻痺耐性Lv2

 ・特殊系

 気配感知Lv1、気配遮断Lv1、魔力感知Lv2、魔力遮断Lv1、危険感知Lv1、HP自然回復速度上昇Lv1、MP自然回復速度上昇Lv1、思考加速Lv2、夜目Lv1、遠視Lv2、言語理解Lv1


 エクストラスキル

 龍剣術Lv4、龍圧    

 ______


 今ネックになっているのは集団との戦闘。

 一対一で魔物と戦うことはそう多くない、基本的に魔物は集団で行動している。


 そうなると今回は遠距離のスキルを伸ばそうかな?


 一応「龍剣術」のレベル4で使えるスキルが遠距離なんだけど、やはり龍気の消費が激しい。


 ______

 龍剣術

 LV4:龍燕斬りゅうえんざん 龍気の斬撃を飛ばす。

 消費龍気の最大は龍剣術のレベル×2000、最大20000。

 ______


 毎回の戦闘で使えるスキルではない。


 余っているE級魔石を龍気に変換することもできるけど、E級魔石1個で龍気10とすこぶる効率が悪い。

 魔石が有り余っている時か、本当に緊急の時以外はやらない方がいいだろう。


 そうなると今回は「火魔法」と「投擲術」、あとは「魔闘術」をあげようかな?


 三つとも余りのスキルオーブはない。

「火魔法」と「投擲術」はオーブ三つずつでレベル3、「魔闘術」はオーブ四つでレベル4になった。


「火魔法」の「ファイアーウォール」が新しく使えるようになる。

 敵の分断には最適なスキルだろう。

「投擲術」と「魔闘術」は倍率が上昇した。


 さて、今できることは終わったし、そろそろダンジョンに行くか。


 ダンジョンに行こうと玄関に向かう途中、後ろから声がかかった。


「ちょっと待ちなさい英人。あなた、お昼ご飯はいつもどうしてるの?」


 声をかけてきたのは母さんで、昼の食事はどうしているのか尋ねてきた。


「ん? 昼はいつも食べてないよ?」


 そんな時間があったら一匹でも多く魔物を狩って、どんどん先を目指したい。


「だと思ったわ……。これ、持って行きなさい。ちゃんと食べるのよ?」


「これ……、明日はいいよ? 毎日作るの大変でしょ?」


 母さんが渡してきたのは弁当だ。

 大きめのサンドイッチが包まれている。


「はぁ……、バカなところまでお父さんに似なくていいのに……。毎日作るに決まってるでしょ」


「う、うん……。ありがとう母さん」


 俺はバカなんだろうか?


 そして父さんもバカなのか……


「じゃ、じゃあ行ってくるよ母さん」


「いってらっしゃい。ちゃんと帰ってくるのよ?」


「わかってるよ母さん。行ってきます」


 弁当をインベントリに仕舞い、ダンジョンに向かった。




 1時間後、俺はD級ダンジョンに来ていた。


 ダンジョン前の広場にはポーターと呼ばれる荷物運びの探索者や臨時パーティの募集など、多くの探索者で賑わっている。


 人混みを歩いていると、会いたくない人物たちに会ってしまった。


「よおステ無し! 一人でダンジョン探索か?」

「何言ってんだカズ、組んでくれる人がいないだけだろ」

「ねぇ〜あんまり言っちゃうとかわいそうぢゃん?」

「それもそうだな! ステ無しだもんなあ!」


「「「「「ギャハハハ!」」」」」


 楽しそうでいいなこいつらは……。


 というかこいつらもここのダンジョンを探索するのか?

 違うダンジョンにしようかな……。


「まぢ時間の無駄だしぃ、早くダンジョン行こうし〜」

「まっ、頑張れよステ無し〜」


 そう言い残して、彼らはダンジョンに入っていった。


 鬱陶しい奴らだけど一つだけ助かるのは、俺が喋らなくてもいいことだ。


 いつも聞いてるだけでいいから、こちらとしては楽だ。


 あいつら俺の声聞いたことあるのかな?……


 まあ、どうでもいいか。


 ダンジョンは広いし、中で会うこともないだろう。




 それからD級ダンジョンに入り、第3層でオークを狩りまくっていた。

 レベルは二つあがり、22になっている。

 途中で「龍圧」のスキルを試してみたところ、あまり効果はなかった。


 ______

 龍圧:龍の威圧で対象を恐慌状態にする。

 力量差が大きいほど効果は高くなる。

 消費龍気は100以上

 ______


 おそらくダンジョンの魔物が恐怖を感じないせいで、効果が無いのかもしれない。


 今後はダンジョンで使うことはないだろう。


 時計を確認すると、時刻は12時を少し過ぎている。

 弁当食べて休憩するか。


 母さんが作ってくれたサンドイッチを食べていると、どこかから狼の遠吠えのような雄叫びが微かに聞こえてきた。


『――オ〜ン!』

 

 ん? ここのダンジョンに犬系の魔物はいなかったはずだけど……。


 このダンジョンで出現するのはオークやホブゴブリンだ。


 少し気になった俺は、遠吠えの聞こえた方角へ行ってみることにした。




 遠吠えの聞こえた方角へ歩いていると、森の間にある獣道の真ん中に、一人の探索者が倒れていた。


 探索者はどうやら女性で、大量の血を流しながらうつ伏せに倒れている。


「っ!? 大丈夫ですか!?」

 

 すぐに駆け寄り、倒れている女性を抱きかかえる。


 冷たい……

 

 体に触れてすぐに気付いた。

 彼女はもう、死んでいるのだと。


 腹が大きく裂けて、そこから血が流れている。

 おそらくは失血死だろう。


 ん? この人……どこかで……っ!?


 女性は今朝方、ダンジョン前の広場で会ったギャル達の一人だった。


 俺はギャルの体を地面に寝かせる。

 名前も覚えていないし、いい思い出もない。

 それでもこうして目の前で死体となった彼女を見ると、なんだろう……少しだけ悲しい気持ちがある。


 俺は彼女のシーカーリングを外して、インベントリに仕舞う。


 ダンジョンで死体を見つけた場合、シーカーリングだけでも回収することが推奨されている。


 まあダンジョンで死ぬ人は年間で1000人もいない。

 余程無謀な攻略を実行しない限り、死ぬことはほとんどない。

 だけどここはD級ダンジョン、彼らは5人パーティのはず。


 他の4人はどうした?

 

 俺は状況をもう一度確認する。


 犬の遠吠えが聞こえてその方角に歩いてきたら、彼女が倒れていた。


 獣道の奥を見ると、遠吠えが聞こえた方角に血の跡が続いている。


 おそらく這ってここまできたんだろう。


 どうする……、一旦引き返すか?


 でも他の四人がまだ生きている可能性がある。


 安否だけでも確認しておくか。


 俺は警戒しながら、血の跡を辿って奥へ進んだ。

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