第12話 勇者
D級ダンジョンにやってきた俺は、ディーンを龍装しながらの戦闘に慣れるために一層を回って狩りをしていた。
ホブゴブリンと2体のゴブリンの間を走り抜け、通り過ぎ様に剣で首を刎ねて魔石に変える。
『レベルが上昇しました』
『レベル20の到達を確認、「武装ガチャ」機能が解放されます』
『功績を達成しました』
レベルが20になり新たな能力を手に入れたようだ。
早速「武装ガチャ」を確認してみる。
______
「武装ガチャ」
F級魔石10個を消費して1回武器を召喚可能。
______
ん? 「スキルガチャ」の武器バージョンってことかな?
武器は既に大剣があるんだけど……。
うーん……とりあえずはスキルガチャを回すほうが先かな。
3時間ほど狩りをしていたので、時刻は17時半を回っていた。
俺は探索を切り上げ、帰ってから功績の確認をすることにした。
______
インベントリ
魔石
・F級:89個
・E級;478個
・D級:48
______
地上に出るとシーカーリングにメッセージが送られてきた。
確認すると天道支部長からで、帰りに協会によってくれとのことだった。
協会に着くと、中は探索を終えた探索者たちで溢れていた。
窓口に向かって歩いていると、探索者学校の制服を着た5人組の男女が俺の前に立ち塞がる。
「おいおい! マジでステ無し君じゃん!」
「だから言ったっしょ〜この前見かけたって〜」
こいつらは確か……中学で俺によく絡んできたギャルとチャラ男のグループか。
探索者専門の学校は高校からで、中学まではステータスやジョブに関係なく同じ学校なのが普通だ。
ステータスがなかった俺は、周りからは「ステ無し」と揶揄されることが多かった。
「てか、こいつ俺らと同じD級!?」
「ウッソ? マジ!? あり得なくな〜い?」
「どうせ親のコネでも使ったんだろ?」
こいつら相変わらず面倒な奴らだな……。
顔は覚えているが正直名前は一人も覚えていない。
無視して受付に行こうとすると、鎧を装備した大男と凜とした綺麗な女性が声をかけてきた。
「お取り込み中のところ失礼。クラン「ブレイバーズ」の
ブレイバーズ?、そんな大物がどうしてこんなところに……。
クラン「ブレイバーズ」は勇者が立ち上げたクランだ。
S級のユニークスキル持ちが立ち上げたクランということもあり、日本では圧倒的人気のトップクランだ。
「ブレイバーズだって!? ついに俺たちにもクランの勧誘が来たみたいだな!」
チャラ男の一人が誇らしげに騒いでいる。
ん?……ブレイバーズの金田さんという人とは、ずっと目が合っているんだが……気のせいなのか?。
俺に声をかけてきたと思ったんだが……。
「ちょっと、あんた達じゃないわよ。用があるのは天霧英人君の方よ」
弓使いと思われる、ポニーテールの女性が訂正する。
まあそうだよね、今初めてそっち見たもんね……。
「はあ? だとしたらそいつはやめたほうがいいぜ?、そいつにはステータスが無いからな! 将来性は皆無だ」
こいつらは昔からこんな感じだ、話の通じる相手ではない。
ステータスが無かったらそもそも探索者登録すらできないし、D級になるのも不可能だ。
「……。コホン、では天霧君、応接室を借りているのでそちらで話しをさせていただきたい」
どうやら金田さんも早々に対話を諦めたようだ。
「それは構いませんが、支部長に呼び出されているのでそちらが終わってからでも大丈夫ですか?」
「その心配は無用よ。あたし達が天道支部長に頼んであなたを呼んでもらったのよ」
なるほど、ブレイバーズがお前に話があるってよ、みたいなことか。
「わかりました」
「それでは行こうか」
俺は金田さん達に着いて行き、応接室に向かう。
「テメら無視すんじゃねえ!」
「何あいつら、チョームカつくんですけど」
「あいつが使えないって分かればすぐに手のひら返すさ」
俺たちはそのまま無視してエレベーターに乗り、応接室に向かう。
「彼らはおともだち?」
「いえ、名前も覚えていません」
「それは安心したわ」
「……。」
応接室の扉を開けると、誕生日席の一人掛けソファに天道支部長、向かい合うように並んでいるソファに一人の青年が座っている。
「連れてきたわ」
二人が立ち上がり、天道さんが隣の男性を紹介する。
英人君、こちらブレイバーズの代表の
「初めまして天霧君、僕はブレイバーズの代表をしている御崎
この人が日本最強のS級探索者か。
写真で見たことがあるけど、本当にイケメンだなこの人。
なんでもトップアイドルよりも人気があるんだとか……
「あたしは
「俺は金田
「みなさん初めまして、天霧英人と申します」
挨拶を済ませた俺たちはソファに向かい合うように座る。
「単刀直入に言おう、僕達のクランに入る気はないかい?」
「どうして俺を? まだD級に上がったばかりですよ?」
「この間の昇格試験、観させてもらったよ。君はいずれS級になるだろう、僕の勘がそう言っている」
クランか……。
喜んでYESと返事をするのが普通だろう。
「ブレイバーズ」は日本のトップギルドだし、探索者として箔が付くのは間違いない。
だけどクランは自分で作ろうとしていたところだ。
クランは設立すると、A級やS級ダンジョンの権利を得ることができる。
そのダンジョンをクランが独占するのもOKだし、無料で開放するのもクラン次第になる。
その代わり、A級とS級のダンジョンから得られる魔石やアイテムの一部を、毎月協会に納めないといけない。
俺のスキルは魔石の消費が激しい。
クランを作って、所属している探索者に魔石を一部納めてもらえれば、魔石の心配が無くなるかもしれない。
将来的に大型の眷属が召喚できるようになった場合、スキルの確認ができる場所を確保したいというのもある。
申し訳ないけど、今回は断らせてもらおうかな。
「お話は嬉しいのですが、すみません。断らせてください」
「そうか……、まあそうじゃないかと思ったよ。君には何か目的があるんだろう? そう言う男の目をしている」
勇者は穏やかな口調でそう言った。
「折角誘っていただいたのに、期待に応えられず申し訳ありません」
「全然いいさ、目的があるんだろう? 困った時はいつでも僕らを頼ってくれ」
御崎さんはそう言って立ち上がり、俺に手を差し出してくる。
「ありがとうございます」
俺も立ち上がり、握手を交わす。
「フフ、良い手だ」
「手?」
「一体どれだけ剣を振ったんだい? 生半可な努力ではないよ」
そう言われて掌を見ても、自分ではわからない。
少しゴツゴツしているかな?
「君がS級になるのを心待ちにしているよ。そしたらどうだい? 息抜きに僕らと一緒にダンジョンを探索するのは」
一緒に……か。
それも良いかもしれないな。
「ぜひ、お願いします」
そう約束をした俺は、もう一度全員に挨拶をして、池袋支部を後にした。
***
SIDE:???
時は遡り、英人のステータスが開花する少し前。
新宿S級ダンジョン前にて。
「フム……。ここがニッポンという国ですか……」
この国で見つかると良いんですけどねぇ。
今までの国はハズレでしたし、そろそろ私もゆっくりしたいですねぇ。
いつも通り、まずは協会で調べてみましょうか。
「おい、そこの君。ダンジョンの外でそこまで気配を消すのは、あまり褒められた事じゃないよ?」
おや? 私の隠密を見破りますか……。
もしかして、彼が「勇者」でしょうかねぇ?
厄介ですねぇ、聖なる力というものは……。
「潤、どうした? 誰に話しかけているんだ?」
「何!? おい亮! 君ならあの男が見えているだろう!?」
「み、見えません! ぼ、僕の気配察知には何も引っかかりません!」
ククク、当然ですよ。
あなた方人間如きが見破れる隠密ではありませんからねぇ。
「総員警戒!」
「ちょっ! 一体どうしたのよ!?」
おやおや、気が早いですねぇ。
勇者に暗殺者、聖騎士に弓使いと、おそらく魔術師の少女。
流石に5対1は分が悪いでしょうかねぇ。
私は正面戦闘は苦手ですし……、ここは引きましょうか。
「勇者」はあの方達の仕事です、私ではありません。
「勇者パーティの皆さん、もう会うことはないでしょうから名乗ることは致しません。それではごきげんよう」
「待て! 逃がさな」
ふう……。
さて、探し物を始めましょうか。
______
あとがき
これにて第1章「開花編」は終了となります。
ここまで読んでくれている読者の皆様、本当にありがとうございます。
読みにくいところも多くあったかと思いますが、今後とも読んでいただけたら嬉しいです(^^)
次回からは第二章「王の道編」が始まります!
次回の更新は4月5日(水)を予定しております。
もしよろしければ、いいねやコメント、レビューで応援していただけたら泣いて喜びます。
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