第9話 いつかの記憶

 ***


 『父さん!おれもダンジョンいきたい!』


 『あん?なんだ英人。お前まだ5歳だろ? もっとデカくなったら連れてってやるよ』


 『えー。じゃあおれにもすてーたす? がでたらいっしょにいってもいい?』


 『いいぜ! お前が俺くらい強くなったらな! ガハハ』


 『ぜったいだよ!? やくそくだからね!』


 ***


 窓から差し込む朝日で俺の意識が覚醒する。


 なんだか懐かしい夢だ、ダンジョンに向かう父さんに俺も連れていけとねだった時だ。

 でもなんだろう……この場面には何か続きがあったような気もする。


 しばらく思い出そうとしてみても何も思い出せなかったので、日課の鍛錬に行くことにした。


 日課の鍛錬を終えた後、功績を確認していないことを思い出した。


 ステータスの功績をタップする。


 ______

 功績

 ・レベルが10に上昇する:達成

 ・???

 ・???

 ______


 項目をタップするとアナウンスが流れる。


『功績の達成報酬により「指定スキル確定チケット」10枚がインベントリに贈られます』


 これは!?


 すぐにインベントリを確認して、チケットをタップすると次のように表示された。


 ______

 指定スキル確定チケット

 :習得済みの基本スキルの中から一つを選択して入手するチケット

 ______


 なるほど……、これで上げたいスキルのレベルを上げることができそうだな。

 何にしようか……。


 少し考えて、候補をいくつか絞りこんだ。


 「剣術」、「魔闘術」、「火魔法」、「魔力感知」の四つが候補に上がった。


 まずは「剣術」だが、現在はレベル2で余っているスキルオーブはない、そのためレベル3に上げるにはオーブが3つ必要になる。

 レベル3になると、通常のMPを消費する剣技が新たに使えるようになるし、「一閃」や「龍閃咆」の威力も上がる。

「剣術」を上げるのは決まりでいいだろう。


「魔闘術」も現在レベル2で、余りオーブが0個だから三つのオーブが必要になる。

 レベル3に上がると、確か「空歩くうほ」という空中に足場を形成し、ジャンプしたり方向転換できる闘技が使えるようになるはずだ。

「魔纏」の倍率も上がるし、こちらも決まりでいいだろう。


 次は「火魔法」、俺の場合ソロだから、開幕で敵の数を減らすために魔法をよく使うので候補の一つだ。

 ただD級魔石で召喚できるようになる眷属が、戦闘力の高い眷属であれば使用頻度が下がる可能性があるので保留とした。

 現状の威力でも雑魚敵を減らす分には問題ないしな。


 最後に「魔力感知」だが、昨日天道さんに忠告を受けた、「何者かが接触してくるかもしれない」という件で索敵のスキルが役に立つかもしれない。

 

 しかしもし接触してくる何者かが、「魔力遮断」のスキルを高レベルで持っていたら俺の「魔力感知」は無力になる。


 しばらく考えて、チケットを7枚消費して「剣術」をレベル4。チケット3枚を消費して「魔闘術」をレベル3に上昇させた。

 「龍剣術」で新しいスキルが使えるようになったので、龍気が溜まったら一度試してみよう。


 そして昨日手に入れたF級魔石100個で10連ガチャを回す。


 ______

 リザルト

 ・槍術

 ・水魔法

 ・投擲術

 ・思考加速

 ・耐久強化

 ・知力強化

 ・遠視

 ・魔力感知

 ・毒耐性

 ・火耐性

 ______


 今回のガチャで、「魔力感知」と「毒耐性」以外のスキルが全てレベル2に上昇した。

 「魔力感知」も後一回当たればレベル3に上昇する。


 レアスキルは出ないか……


 


 昨日の成果の確認と朝食を終えて池袋に向かう。


 今日と明日で残り二つのダンジョンを攻略してしまいたい。




 俺は探索者協会には寄らずにE級ダンジョンに直接やってきた。


 今日攻略するEダンジョンは昆虫系の魔物が出現する森林型のダンジョン。

 主に出てくるのはキラーアントやキラービーと呼ばれるE級の魔物で、蜂の方は毒の攻撃に加えて空を飛んでいるためそこそこ厄介だ。


 早速第一層から攻略を開始した。

 今の俺のステータスはバフを合わせて2000を超えている。

 E級ダンジョンに出てくる魔物は大抵のステータスが1000程のため、油断しなければ余裕を持って攻略できるはずだ。


 ダンジョンに入場すると、そこには見渡す限りの森が広がっている。

 整備された道はなく、獣道のようなところを進んでいかなければならない。


 森に入ってしばらくすると、キラーアント3体に遭遇する。

 昆虫系の魔物には火属性の攻撃が有効で、パーティーに一人は火魔法が使える魔術師を入れることが推奨されている。


 しかし前回のボス戦で、龍気が残り50まで減ってしまっているため、MPはできるだけ温存して龍気に変換したい。


「「「ギチギチ」」」


 キラーアントは顎を鳴らしながら近づいてくる。

 

 俺は剣を召喚して、キラーアントに突貫する。


 突進の勢いをそのまま剣にのせて槍のように一体のキラーアントを貫く。

 

 突き出した剣をそのまま回転させるように、残りのキラーアントを薙ぎ払い魔石に変えた。




 俺はその後も順調に進み続け、4時間ほどかけてボス部屋へと到達した。

 このダンジョンは、今の所使い道がないE級の魔石しか手に入らないため、戦闘はできるだけ避けながら進んできた。


 ボス部屋の扉をあけて中に入ると、そこにはキラービー2体とキラーアントが6体いた。


 すぐさま「魔纏」を発動し、ここまでの道中で思いついた戦法を試してみることにした。


 まずは飛んでいるキラービー目掛けて大剣を投擲する。

 投擲術のレベルが上がったのと、俺の筋力ステータスのおかげで、風切り音を立てながら高速で剣が飛翔する。


 キラービーは敏捷値が高く素早い動きが厄介だが、それを超える剣の速度に反応できず、串刺しになる。


「送還!」


 その直後、俺自身が投擲した剣の側に送還される。


 擬似的な転移に成功した。

 

 そのまま剣を握り、「魔闘術」レベル2で使える「空歩」を発動して空中でもう一体のキラービー目掛けてジャンプする。


 そのまま2体目のキラービーを両断し、キラーアントの背後に着地。


 目標を見失ったキラーアントは背中を向けて俺を探している。

 見つかる前に素早く2体のキラーアントを両断して数を減らすことに成功した。


 残りの2体は俺に気づいたようだが、もう遅い。

 

 高い敏捷値を生かして素早く懐に飛び込み、残りの2体も難なく討伐した。


 ここにくるまでに思いつきで、大剣のそばに俺自身を「送還」できないか試してみたところ、なんとできてしまった。


「召喚」と「送還」はMPを使わないから、この戦法が使えると分かったのはかなり大きい。

 緊急回避にも使えそうな気がするな。


 俺は出現した宝箱を開ける。

 中には解毒ポーションが三つ入っていた。


 俺は魔石とポーションを回収し、転移魔法陣にのってダンジョンを後にした。


 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:2個

 ・E級;336個

 ______




 次の日は三つ目のE級ダンジョンに朝から潜り、難なく夕方には攻略することができた。


 出てきた魔物はF級のスケルトン、E級のスケルトンソルジャーに、E級のゾンビが出てきた。

 

 ゴブリンと強さはそう変わらない。

 光魔法による攻撃が弱点で、ボスでさえ光魔法レベル1で使える「ライトボール」で勝負がついてしまった。

 まあ知力のステータスが高いおかげだと思うけど。

 

 ボス部屋の宝箱の中身は銅のインゴットだった。


 俺のレベルもE級ダンジョンを二つ攻略したことでレベル15に上昇し、リトスのレベルは20に到達した。

 俺よりもリトスのレベルアップの方が早いのは、俺の必要経験値が高い可能性がある。


 ジョブのレア度でレベルアップに違いがあり、レアなジョブほど必要経験値が高いと言われている。

 おそらく俺の特殊な能力によって必要経験値が高いのだろう。


 三つのE級ダンジョンを攻略したので、D級にランクアップすることができる。

 

 D級からはボスドロップの確認に加えて、昇格試験なるものがあるらしい。

 内容は試験官との模擬戦だったはずだ。


 家に帰り、明日の昇格試験に備えて早めに眠りについた。

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