悪役令嬢は聖女の妹と教皇の後ろ盾を手に入れた
「さてセリカ、第二計画は成功、次は第三計画である派閥集めを行うわよ」
「はい、分かっておりますともマリアンヌ様、では、今のところの我が連合に参加をしてくれる派閥を紹介します」
「ええ、お願いするわ」
「はい。ではまず最初に騎士団長の息子・脳筋の元婚約者であるエリイナ様の父親であり当主カリリス様含めその派閥である。北方面の3割の貴族を支配する中規模派閥・カリリストマス派閥。
次に元々こちら側に揺らぎかけていましたが。第二王子・ゴミクソの婚約破棄を見て完璧にこちら側についてくれました。第二王女・マリリン様の率いる女性貴族中心の大規模派閥・薔薇百合。
そして、魔導士団の副隊長が率いる、小規模派閥・魔法千覇。ただし、この魔法千覇は今の団長が嫌いで彼を引きずり落して自分が団長になるためにこちら側についてくれました為、規模としては非常に小規模ではあります。ただメンバー全員が魔法に非常に特化している魔導士なので第五計画の時には非常に役に立つと思います。
後は元第一王子の後ろ盾をしていた派閥をいくつか第五計画を伝えるという形で引き入れました。もちろん裏切らないと思われる信用出来る人物のみに第四計画は伝えてあります。こちらは今の所は小規模派閥が幾つかある程度ですが、第四計画実行時には第五計画の内容を大々的に明かすのでおそらく残りの元第一王子派閥全員を無理やり引き入れることが可能だと思います。そうなればおそらくではありますが大規模派閥2つ分までいくでしょう。
そして、最後は元々我ら公爵家が率いている大規模派閥・純正貴族です」
「なるほどね、分かったわ。そうなるとこちら側に引き入れたいのは、・・・そうね・・・まずは第四計画の為にも正教会の派閥。そして、第五計画の為にも騎士団の方の派閥もいくつか引き入れたいわね。
後は・・・そうね・・・よし、取り敢えずは正教会と騎士団の派閥を増やした後、中立で日和っている派閥共、一匹オオカミを気取ってる貴族にエサをぶら下げて一気に引き込むのが正解かしらね。
あ、でも第五計画が成功した時のこの国の未来を考えれば辺境にいる貴族共も引き込んだ方がいいわね。
というわけで、セリカ正教会に行くわよ」
「はい。分かりました。マリアンヌ様」
マリアンヌとセリカは防音能力の非常に高い元父親の部屋を出た後、護衛とメイドに執事と今年6歳になる妹を引き連れて正教会に向かった。
――――――――――
マリアンヌは王都にある一番大きい正教会に入った後シスターにこう言った。
「私の妹が聖女になったわ」
と
もちろん、嘘である。
だけど本当である。
つまり、どういう事かというと、よくある事なのだ。
貴族が正教会に自分の娘や妹を連れて聖女になったと言い、莫大な寄付金を払うとともに、正教会の持つ権力を聖女というのを通して借りるのはよくある事なのだ。
もちろん、それを聞いたシスターは全てを理解した。
「それは、それは。おめでとうございます!新しい聖女様の誕生ですね。今教皇様の面会室へご案内しますね」
「ええ、よろしく頼むわ」
――――――――――
そして聖女となったマリアンヌの妹は聖女としての教育の為に、聖女という名前のお飾りとなる為に別室に連れていかれた。
もちろん、悪いようにされる訳ではない、美味しい食事にフカフカのベットを用意されてから聖女としていかに民衆を喜ばせるか。笑顔を振りまいて、強烈な信仰心を生み出させれるかのレッスンが行われるのだ。(今でいうところのアイドルです)
―――――――――――
「教皇様。こちら寄付金となります」
マリアンヌは控えている騎士に、人が一人丸々入るくらいの大きな袋に入った金貨の山を持ってこさせて教皇の間にある机の上に置いた。
「これはこれは、ありがとうございます。マリアンヌ様には神の導きと幸運がきっと訪れることでしょう」
教皇もとい、初老の老人はしわくちゃの顔で人の良さそうな笑みを浮かべてそう告げた。しかしその目は袋に入った金貨の山に釘付けだった。ようは今の教皇はかなりの俗物であったのだ。
先代の教皇は清廉潔白な強い信仰心を持った人物ではあったが、お金を稼ぐ能力がなかった。
その為、一時期正教会は資金不足によりかなり困窮していたが今の教皇に代わってからはその手腕であっという間にお金を稼ぎ、ひたすら稼ぎ、稼ぎまくった。
そしてその稼いだお金を使い様々な慈善事業を行い、孤児施設を増築させ、学校を作り、治癒魔法士を育成させ、正教会の権威をより高めた偉大なる俗物であったのだ。
「そうですね。神の導きと幸運はきっと私に訪れますわ。というわけで教皇様。私の可愛い妹であり聖女である彼女を認めて貰う為に正義心の強い神父様を付けて下さい。いいえ、それだけでは不十分ですわね。貴族や商人の息子であり無駄に権力のある欲に溺れた神父様方々もつけてください。私の妹の信仰深さできっと改心させてあげますわ」
マリアンヌはさも当然のように言い放った。
もちろん、改心させる気もなければ、自分の妹を認めてもらうために使うわけではない。
目的はただ一つ、自分が扱いやすい駒を派閥を作るためだ。
正義心の強い者は頭が少々硬い為に今の俗物的な正教会に王家に嫌気がさしていて、少し唆せば簡単にこちら側につく。
欲に溺れた者は欲に忠実である。だからこそ公爵家という大きな権力を持つ甘く大きな果実に簡単に食いついて、こちら側についてくれる。そうなれば簡単に正教会で派閥を作れる。
そう、その二つの人間を教皇様がマリアンヌにつけてくれさえすれば。
・・・・・・・・
暫く沈黙が続いた後、教皇はそのしわくちゃの口を開く。
「いいでしょう、すぐに用意しましょう」
教皇は欲に忠実な俗物的な人間であった。だからこそ、金貨の山を目の前に簡単にオッケーの返事を出した。
だが教皇が本当に欲に忠実な人間であればさして考えずに即答していたであろう。
しかし教皇は暫く沈黙を持って答えた。
つまり、考えたのだ、マリアンヌという新しい公爵の意図を、そしてこれから起こるであろう展開を。
その上で教皇は許可を出したのだ。つまりそういうことだ。
「ありがとうございます。教皇様」
「マリアンヌ様、その道は一歩間違えれば地獄へ落ちますぞ」
教皇は非常に聡い者であった。でなければ世界で二番目に巨大な宗教、正教会を束ねるなど出来るわけがなかった。
だからこそ教皇は一応警告をした。もしここで揺らぐようであればすぐに見切りをつけるために。
「フフフ。何を言っているのですか?地獄なんて落ちませんよ。私の前にあるのは勝利の道のみです」
堂々とそう言い切った。
そこには王としての風格すら感じられた。
「では微力ながら儂もマリアンヌ様の為に力を貸しましょう。その代わり成功した暁には期待をしていますよ」
教皇はマリアンヌに賭けた。
といってもローリスク、ハイリターンの賭けである。
今この場においてはマリアンヌとその護衛・教皇にその護衛しかいない。そして両者の護衛共に非常に信頼のおける口の堅い人物であった。
つまり教皇がマリアンヌのとある計画に力を貸すというのがバレることはないのである。
そして教皇がマリアンヌの派閥に手助けをしても、別にさして問題はないのである。何故なら教皇は俗物であるからである。王家も他の貴族達も、「嗚呼、莫大な寄付金を渡したのだな」そう思うだけなのであった。もしも危機的状況になれば逆に買収してやればいい、そう思わせるだけである。
もちろんそうなったら教皇は買収に応じる振りだけしてお金を貰って、そのままマリアンヌに協力をするだろう。何故ならその方が利益に繋がるのだから。
マリアンヌは正教会に新たな派閥を作り出すことに成功しただけではなく、教皇という非常に大きな協力者を手に入れることに成功した。
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