第64話 天下†夢想の公爵令嬢 Ⅱ ③

 少し時を巻き戻します。


 共和党の残党を連れて国境に逃げ出した、ドナルドギャンブル=カンピロバクターは苛立っていました。


「ストリキニーネがドジを踏んだせいで、私まで捲き込みおって !

 本来なら次のポイズン共和国の大統領には、私が成るハズだったのだ。

 フェイクニュースを流して奴を引きずり落とすハズが…………

 私の計画は完璧だったのに、ストリキーネが思ったより使えないのは誤算だったわ ! 」


 ドナルドギャンブルが酒を呑みながらボヤいていました。

 逃げ込んだ山中を拠点として山賊をしながら資金を貯めて再び返り咲きを狙っているようです。


「親分、どうやら帝国の貴族令嬢と少数の騎士が国境を通り抜けるようですぜ ! 」


 山賊の手下が親分である、コブラ=ヘモトキシンに報告しています。


「上物だったら異国に高く売れるぜ、兄貴 !

 お前たち、女は傷つけるなよ !」


 そう言い残して、弟のパイソン=ヘモトキシンが手下を連れて出て行ってしまいました。


 スネーク兄弟、元・共和国ではドナルドギャンブルと組んで悪事を働いていたヤクザグループのリーダーであり、クーデターの時にはいち早くドナルドギャンブルと逃げ出した兄弟でした。


「おい、何か酒のツマミを持ってこい !」


 酔っ払ったドナルドギャンブルが怒鳴ると、拐われた女性達の中からメイドが現れて、


「簡単で美味しいオツマミを用意しますので、少々お待ちください 」


 他の女性達が恐怖で震えている中で平然としているメイドに誰も疑問に感じていないようでした。


 ♟♞♝♜♛♚


【クッキーside】


 クッキー、ピ~ンチ !

 だけど、わたしには秘密兵器があるから大丈夫 !

 ウイスキー公爵家で見付けた、アーティファクト・黄金のカスタネット。

 まさに、わたしの為に用意された秘密兵器よね !

 説明書もあったからバッチリよ !


 わたしは、歌を歌い上げながらカスタネットを鳴らした。


「 楽しいこと探して旅をする~♬

 何処かで、きっとあるはず~ ♪

 子供の頃には、いっぱいいっぱいあったハズよ

 大人は笑いながら子供の頃だけの話しだと言うけど~♪

 夢を忘れた大人には成りたくないよぉ~ ♬」


 黄金のカスタネットを鳴らしながら歌うと、皆が敵も味方も踊りだしたわ。


 やったね、大成功 !


 皆で踊り続ければ、戦闘には成らないし くたくたになるまで踊り続ければ、無駄な争いなんてしないよね !


 でも何故か、山賊だけでなく味方の騎士までが わたしを恨みがましく睨んでいる気がするのは気のせいかしら。


 わたしは、こんなに元気なのになぁ~。

 次の歌も行こうかな。

 もちろん 作詞作曲は、わたしクッキーよ !

 自分の才能が恐いわ。


「 ヘイ ヘイ ヘイ、 山猿なんて言われたのは、もう昔~♪

 今では、可愛い女の子~ ♬

 ふたつの胸のふくらみは、伊達じゃないのよ~♪

 わたしが微笑みを浮かべれば、男の子たち皆が夢中になるわ

 わたしのウインクひとつで、イチコロよ~♬

 胸のない娘シエスタには出来ない、わたしの必殺コンボよ~♬………」







 日が暮れるまで続けたせいか、流石に疲れたと思った時に、ジークフリートが辺境伯軍を率いてきたわ。

 アッ、カタリナも居るわ !

 わたしは、歌うのを止めて、


「おーい、ここだよ~ !

 遅かったから待ちくたびれちゃったよ !」


 踊り続けていた山賊や護衛騎士たちは、疲れ果てたのか、皆が座り込んでぐったりしていた。


 山賊たちは、ジークフリートが連れて来た辺境伯軍の騎士たちに、あっさり捕縛されていたわ。


 計画道理よね、たぶん。


 カタリナが通信魔法で誰かと話し終わったら、


「山賊のリーダーのコブラと共和党の残党のドナルドギャンブルを捕縛した連絡がありました。

 この先に敵の拠点があるので、ニール様とゾルザルは小隊を連れて向かってください 」


 カタリナが命令すると騎士たちが駆け足で向かって行ったけど、…………

 キモデブだったニールが細マッチョに変身していたのには驚いたわ。


 うん、これにて 一件落着ね、めでたし めでたし !


は、私とお話をしましょうね 」


 後ろから、シエスタの声が…………


 今ごろは、新婚ホヤホヤで領都に居るハズのシエスタが、何故ここに居るのよ !


 ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ


 ゆっくり振り返ると、ニッコリ笑っているシエスタが居た。



 …………終わった……。

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