第61話 天下†夢想の公爵令嬢 ④
【テリーside】
「道ならぬ恋、バーボン伯爵家の子息アルフォンスに恋をしたシエスタは、初めての経験に戸惑いを隠せませんでした 」
♬♫♪♩♬♫♪♩
俺の曲とナレーションに併せて、
「あぁ~、この胸が熱く苦しいのは何故 !
アルフォンス様を見詰めているだけで幸せになる、わたしはどうしてしまったの ?
教えて、クッキー 」
シエスタの役をしている、クッキーは迷女優だな。
「 シエスタ、それは『恋』と云うものよ。
ウブなシエスタは初めての経験だから、戸惑っているのね。
恋愛マスターのクッキー様に任せなさい !
わたしにかかれば、シエスタの薄い胸でもアルフォンスをメロメロにするテクニックを教えてあげるから安心しなさいね ! 」
ゾクッ !
何故か、寒気がしたぞ !
辺りを見回したけど、見学している人々しか居ないよな。
「ありがとう、クッキー ……いえ、クッキーお姉様と呼ばせてください !
わたしもクッキーお姉様みたいにスタイルが良ければと羨ましく思っていました。
わたしの貧弱な胸でも大丈夫でしょうか、クッキーお姉様 ! 」
「大丈夫よ、シエスタ。
恋愛マスターのクッキー様に任せなさい !
真珠の涙を浮かべたら、男の子の一人や二人イチコロよ !」
ゾクッ ゾクッ!
寒気が……風邪でも引いたのかも知れないな。
しかし、クッキーの恋愛知識は何処からきているのだろうか ?
「大親友のクッキーお姉様が居れば、百人力どころか億人力だわ !
わたし頑張るね、クッキーお姉様 ! 」
よくやるよな、クッキーも……おぉーっと、メロディーを変えてナレーションとアルフォンス役を入れるのを忘れるところだった !
♪♬♩♫♩♬♫♪
「一方、アルフォンスも悩んでいました。
クッキー、どうして君はクッキーなんだ !
美の女神の化身とも想える姿に夢中に成ってしまうとは……仕方ないことだと想いつつクッキーを諦められない自分が居る。
ジークフリート王子殿下やキャスバル公爵子息までクッキーに夢中だから、僕などにはクッキーは勿体無い存在だと判ってはいるんだが……」
はっ 恥ずかしい !
よく、こんな恥ずかしいセリフを言えるよな、クッキーは!
「アルフォンス、貴方の気持ちには応えられないわ。
わたしには、すでに心に決めた殿方がおります。
想うより想われた女性と一緒に成る方が幸せに成れるわ、アルフォンス。
シエスタは胸は残念だけど、とても良い娘よ。
貴方を一途に慕っている優しい娘だから考えてあげてね 」
寒気が止まらなく成ってきたな、本格的に風邪を引いたようだ。
おっと、ナレーション、ナレーションとアルフォンス役だな。
♬♩♫♪♫♬♩♪
「想いは叶わなかったアルフォンス。
しかし、ふと気が付くと自分を一途に愛してくれる存在に気がつきます」
「あぁ、僕の赤い糸は君と繋がっていたんだね、シエスタ。
僕の運命の
僕と結婚してください ! 」
目を潤ませたシエスタ役を演じているクッキーが、
「愛しています、アルフォンス様 !
末長く、よろしくお願いいたします 」
よし、ラストのナレーションで終わりだな。
「そして二人は永遠の誓いをして結ばれたのでした。
その後、シエスタの本当の身分が解りますが二人の気持ちは変わることなく幸せに暮らしていくでしょう 」
最後のナレーションが終わると沢山の拍手と共に見物客から沢山のお金がギターケースに集まり溢れていた。
クッキーの言う通り、シエスタの初恋物語は大成功だった。
見物客が帰り始めたので、クッキーがお金を回収しようとしたら、帰らずに近寄って来る客がいた。
最近、増えてきた俺達のファンだろう。
「ごめんなさい、サインは有料なの。
1枚、3000エンジャァを頂くことに成っているの 」
すまなそうに謝るクッキーだが、意外にお金にはシビアなんだよな。
「ずいぶんと楽しそうな商売をしていますね、クッキーお嬢様。
話は、後からゆっくりしましょうね。
私の著作権は高いから覚悟してください、テリー 」
「ゲェー ! シエスタ、何でココに居るのよ !」
シエスタがクッキーの手を掴んでいた。
「ずいぶんと私の胸のことに
「ヒイィィィィー ! ごめんなさい、シエスタ ! お願いだから、わたしの胸をもがないで !」
ハッ !
後ろを振り返ると、アルフォンスにキャスバル、ジークフリート王子殿下までが、顔はニコニコしながら立って居た。
「なかなか面白かったぞ、テリー。
男は男同士で語り合いをしようじゃないか 」
ジークフリート王子殿下は、ニコヤカに言っているが信じられるか !
その後、しっかり説教をされた俺達二人は、帝国に連れ戻されて、二人して領地経営の勉強をすることに成ってしまった。
まったく、クッキーと一緒に居ると退屈しないな。
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