第12話

 空腹にあえぎ、幾度もの死を恐怖し、未来への希望もなく……死ぬことも出来ないままただ生きているだけの僕。

 僕が心のうちにどれだけ不満を抱えていようと、僕は教祖として生きていく他ない。

 流れ作業のように日々の日課をこなし、生きていくのが僕だ。


「こんばんは。レーシア」


「……こんばんは」

 

 朝、奉仕活動に勤しみ、昼、家の清掃に勤しみ、夕方、玲香とゲームし……そして、深夜。

 初めてあった日から毎晩訪れるようになったレーシアとの静かな邂逅が僕の日課となっている。


「どうぞ」


 僕は正座して座り、自分の膝を叩く。

 今、僕の目の前にいるのは今日も今日とてやってきたレーシアである。


「失礼します……」

 

 レーシアは恐る恐る僕の膝へと頭を乗せ、体を床へと横たわらせる。


「今日もお疲れ様」

 

 僕は自分の膝に乗ったレーシア……彼女の頭を撫でながら、優しく声をかけてあげる。

 僕は彼女が一体何をしている人なのかは知らない。

 しかし、それでもレーシアが救いを求めたそうにしながら僕の元にすり寄られれば教祖として、僕は彼女を拒絶することは出来ない。

 僕は未だに彼女の名前しか知らないが……それでもかなりの交流を交わしていた。

 

「……」

 

 レーシアは何も言わず、ただ僕に体を預け、されるがままとなっている。

 僕はそんな彼女に対して時折声をかけながら、ただひたすらに頭を撫で続ける。


 レーシア。

 腰まで伸びる白銀の髪に輝く黄金の瞳を持った美しい女性。

 グラビアアイドル顔負けの抜群のプロモーションに、体のラインが実にわかりやすいピッチリタイツを身にまとう彼女の姿は実にこう……エロいの一言である。

 ……僕も普通に性欲を抱える高校生である。

 毎晩深夜にやってくるエロいお姉さんなど、色々と僕に刺激を与え、不満を増大させるが、僕は教祖。

 彼女に自分の欲望をぶつけることなど出来るはずがない。

 生殺しである……泣きそう。

 僕はただ、自分の一部分がエクスカリバーにならないよう注意を払いながら頭を撫で続けることしか出来ない。


「……ねぇ」

 

 いつも、最初の挨拶以外は言葉を交わそうとしないレーシア。


「ん?どうしたの?」

 

 僕はそんな彼女が自分に向けて言葉を発したことに対して驚きを覚えながらも口を開いた。

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