第8話ミランダ




けたたましい声で眼を覚ました。

なにやら外から「エイ、ヤー!」と掛け声が聞こえるぞ。


呼び鈴を鳴らして、マリアを呼んだ。


「何なんだ、あの声は・・・」


「あれは、ダルタ様の剣の早朝訓練でございます」


「訓練をしても大丈夫なのか、体も体調はどうなのだ」


「はい、すっかり元気になり2日前から訓練をしてます」


「そうか、元気になったのか。仕度を頼む」


「かしこまりました」


窓から外を覗くも訓練風景は見えなかったが元気な掛け声は聞こえる。




執務室でたまった書類を確認していると、例の黄土病の食材資料が目に付いた。

それは新しい黄土病の患者の資料だった。

8つの必要養分の2つしかと取れていない。偏食が酷過ひどすぎるぞ。


取れてない6つの薬も作るとして、処方箋しょほうせんを書く必要がありそうだぞ。

養分別の薬を作り置きして、不足分を日々飲ませる必要がありそうだな・・・



ノックの音がして「ナルタです、いいでしょうか」


「入れ」


ナルタと一緒に女性が入ってきた。


「彼女がミランダです」


「わたくしが、ミランダですよろしくお願いします」


私の世界が止まった。目からは涙が流れた。



「どうかなされましたか」


「いや何でもない・・・眼が疲れていただけだ。もう下がってよい」


一人になり・・・私は泣いていた。ミランダは母に似ていた。

だから叔父上は、母の名を与えたのだ。


私には母の記憶は余り無い。父の執務室には母の絵が飾ってあった。

1度だけ忍び込んで見た事があった。母の記憶は、それだけしかなかった。




その日は、何もしなかった。

執務室で椅子に座ったまま天井を見ていた。




ノックの音がして、ドアが開いて入ってきたのは叔父上だった。


「ミランダに会ったそうだな」


「はい、会いました母に似た人に」


「カルエルには、早く言っておくべきだった」


「そうですね・・・そうすれば心の準備もできました。突然だったので、余り話もしていません。今はもっと話ができそうです・・・」


「ミランダはいい娘だよ」


その言葉を残して叔父上は、部屋を出て行った。




眼を覚まして叔父上の訓練に付き合う事した。

今まで剣など握った事も無く、木剣を素振りしているだけだ。


叔父上もしばらく見ていたが、自分の訓練に戻った。

叔父上のHPが少ない事を自覚しての行動で、まだ完全復帰ではない。

無理な回復もできない訳ではないが、今後の事を考えてゆっくりと回復させたい。



自分の身は自分自身で守らないといけない。


魔法頼みだけでは、生きて生けないのが今の現状だ。

何処に敵がいるか分からない。

鑑定の儀式のように薬を盛られたくない。


訓練等をすれば、HPは少しずつ上がる。

魔法を使えばMPが少し上がるのと同じだ。剣などのスキルがあればもっと上がるのだが。

私には戦闘スキルは無い。

まれに戦闘スキルを鑑定の儀式後に取得する事も有るらしい。それは稀だ。


古代の文献にスキルオーブなる物が有ったと記されている。

しかし、今は発見されていない。



そこで思い出した。

そうか今まで盾や剣に付与を与えて、貸し与えたりしていたが自身が装備すればいいのか・・・

手っ取り早く強くなる方法としては、持って来いだろう。

ローランド辺境伯領を盛り上げる事に集中し過ぎて、自分の事など考えていなかった。


早速護衛官2名を引き連れて、武器店・武具店・宝飾店へと向かった。



片手剣を鑑定していると思わず取って鑑定してしまった名品。


細身の片手剣


名:ビュテオ


ランク:☆☆☆☆


凄いと思いつつ「この剣の値段は」


「あ!お客さん買って下さるですね、金貨2枚です」


「安過ぎではないか、それでいいのか」


「お客さんそんな細い剣、誰も買いませんすぐ折れそうで」


「そうか私はこの剣が気に入った」


「本当にいいんですか、折れたから金を返せは駄目ですよ」


「ほれ、金貨2枚だ」


「確かに頂きました」


後、弓矢を鑑定したが星付きがなかった。

他の武器にも星付きは無かった。店奥の在庫も鑑定させてもらったが無い。



星の数だけ付与を与える事ができるのだ。付与魔術師ラーランの原本に書かれていた。

世間に余り知らない事実だ。そもそも付与魔術師は、物を鑑定できた。

付与魔術師は、その事を秘密にして生きていた。鑑定師の権力に恐れて隠したのが原因らしい。


その鑑定師も、今はどん底に落ちた。




次は防具店に入って見て回るが、ここでも1点しか星付きはなかった。


革のブーツ


名:ナシ


ランク:☆


やっぱり名ナシだ。星3つ以上で名が付く。

それは製作した者の思いが、製品に名を与えるとラーランが言っていた。


金貨3枚で購入した、次は宝飾店に入ると宝飾類がズラリと並んでいる。

ここでは指輪を探し求めている。できれば3つは欲しい。


指輪の付け過ぎは厳禁で指輪なら2つが限界だ。

付与の力が互いに打ち消し合い、付与を駄目にするらしい。


なんだ!結構あったぞ。

星3つが1個、星2つが1個、後は星1つが5個もあった。全部購入だ。


指輪


名:サージ


ランク:☆☆☆


金貨45枚を支払い城へ戻る事にした。



付与魔法は何種類もの魔法を取得していないと付与できない。

ラーランは付与魔法以外無魔法・雷魔法・精神魔法を取得していた。

この複数魔法を取得してないと付与魔術が使えない。

精神魔法なら精神を付与して身体強化を実現出来たのだ。


執務室で付与魔法を使って付与していく。私の魔法で私だけの付与魔法。

そして試行錯誤して付与した品々。


細身の片手剣


名:ビュテオ


ランク:★★★★

切れ味10倍:切れ味が10倍になる

損傷修復:剣の損傷や歪みも自動修復する

堅固:固く折れ難い

雷属性:魔力を流す事で雷が剣に流れる


革のブーツ


名:ナシ


ランク:★

敏捷:速く動くことができる


指輪


名:サージ


ランク:★★★

魔力向上:魔力が上がり、魔法威力が上がる

魔力回復:魔力の回復が早くなる

魔法抵抗:魔法攻撃に対して抵抗力が上がる


指輪


名:ナシ


ランク:★★

身体強化:身体能力が上がる

気配探知:周囲10メートルに入った気配を精確に探知する


指輪


名:ナシ


ランク:★

鑑定:触った物を鑑定できる


この指輪をミランダとダルに渡して、☆付きを探してもらおう。


今後のローランド辺境伯領で、付与付き武器や武具で戦力アップをする予定だ。



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