第83話 止められないぃぃ!!
遺跡都市名物『バトルロワイヤル(第8421回)』。
―ルール―
人数は20人。
出場戦士は『ライフリング』の着用が義務。リングが破壊されたり、外れた場合はその時点で失格(外れた時は1分の猶予あり)。
戦闘力は2000前後になる様に調整され、なるべく力の差が離れすぎない様に『ライフリング』によって縛られる。
場所は閉鎖空間。基本的には生き残りだが、漁夫の利を狙うのもアリ。
人数が少なくなるか、一定時間戦闘が行われなかったら『ライフリング』の場所が全戦士に通達される。
最後に立ってたヤツが優勝。細かい問題が起こったらその都度決める。
「『遺跡都市』特有の適当ぶりだな」
「『ライフリング』が最近追加されたみたいだからな。ルールはまだ調整段階なんだろ」
オレとスサノオはモニターを見上げながらそれなりに始まったバトルを肴に酒を飲んでいた。
「初動で幾つか、ぶつかり始めたな」
大型モニターの映像は俯瞰視点から部分拡大まで自由自在らしい。
更に別の表示モニターには戦士達のオッズと『ライフリング』の反応から脱落者と生存者の有無を常に表示していた。
ステージの“孤島”は『市街地』『森林』『海岸』という三つのエリアに分けられる。カイル、レイモンド、クロエの三人は別々のエリアに転移した様子なので、初っ端から身内同士で戦う事は無さそうだ。
「ローハンも知り合いが出てるんだろ? まだ残ってるか?」
「ウチのはそう簡単にはやられねぇよ。探索クランだからって弱いワケじゃねぇぞ?」
『星の探索者』のメンバーをマスターが選ぶ目安の一つとして、ある程度の戦闘力を気にしている。
未開の地へ侵入したり、得たいの知れない敵との突発的な戦闘が考えられる事からも、ある程度の水準は求められるのだ。
非戦闘員であるクロウの例外はあったものの、基本的には柔軟な対応と思考が求められる。のだが――
『おーっと! 【銀剣】! 戦ってた二人に割り込み、二人とも戦闘不能に追い込んだ! まるでバーサーカー! 嬉々として笑っているぞ!』
観ている観客達にだけ聞こえる実況がカイルの戦闘力に注目する。モニターは敵二人を撃破した後のカイルの姿を映していた。
「おー、戦ってた二人もそれなりに腕のある奴らだったのにやるなあの娘。けど潰し合って消耗したところを狙う方が――どうした? ローハン」
「いや……なんでもねぇ」
アイツ、楽しんでるな。まぁ三日はずっと、マホー! って叫んでたワケだし。相当溜め込んでたか。
と、上空から観られてる事に気づいたカイルはカメラに歯を見せて笑った。おっさん、観てるー? と手を振ってくる。子供っぽさが抜けない良い笑顔だ。
「なんか……【銀剣】イイなぁ」
「街で見かけた時は胸と太ももだけのうるさいガキだと思ってたが……」
「クるのがあるぜ、これは」
大型モニターを観てる奴らがカイルの健康笑顔に注目している。なんやかんやで、強い奴に惹かれるのが遺跡都市の荒くれどもなのだ。
加えてカイルは、よく考えずに動くところがあるから、ほっとけない感、があるんだよな。でも今回ばかりは――
「“考え”ないとクロエとカグラには勝てねぇぞ」
さっきの一位から三位までの参加者ランキングは現地にも流れたハズだ。
クロエの奴も空気読んでカグラを狙ってくれよ……
「相席を良いか? 【霊剣】ローハン・ハインラッド」
すると、意外な人物――レクス少佐が余ってる椅子に手をかけてきた。
「いいぞ。そんでもって【霊剣】の方で呼んでくれんのか?」
「その件に関しては後に謝罪に伺うつもりだ。貴方からすれば謝れば良いと言う話ではないと思うが……」
どうやら『ギリス』陣営でのオレに対する反応は決まったらしい。
「過去を笑い話にするのがスローライフの秘訣でね。まぁ、別に生きてるし、今後ジャンヌ大佐が絡んで来なくなるなら、もう気にしないぜ」
「ありがとう」
許す事で殺し合いの出会いから隣人へと成るのだ。これ、長生きの秘訣ね。
レクス少佐は席に座る。
「レクスです。階級は少佐」
「俺はスサノオ。よろしく」
スサノオはヤマトやカグラと違って社交的なヤツだから、レクス少佐の相席も問題なく受け入れてくれた。
「二人は身内が参戦しているのですか?」
「敬語はいいよ、レクス少佐。堅苦しいのは苦手だ」
「オレも」
スサノオが眷属である事は周知の事実。取り繕って場が固くなる事を嫌うオレらは対等な会話を望んだ。
「そうか。二人は身内があっちに?」
あっち、とはモニターの中の遺跡内部の事だ。
「俺は一人」
「オレは三人。少佐は?」
「こちらは一人」
『ギリス』から一人来てるのか。別モニターの参加者名簿を見ると……おっ。
『おおっと! ここで! ビッグマッチが決まってしまったぞぉ!! 出会ってしまったら止められないぃぃ!!』
実況者が俯瞰映像から『海岸』へモニターを拡大する。
『市街地』――
「…………」
能力的にも優位な『市街地』に転送されたレイモンドは息を潜めて、廃ビルの一つから中庭にぽつんと佇む少女を見下ろしていた。
優位な位置で距離もあると言うのに、ぞわぞわとした悪寒が止まらない。
「あれが……“眷属”のカグラか」
『森林』――
カイルは割り込みにて戦っていた二人を同時に相手にして退場させると剣を鞘に収めた。
「よし! 次だな!」
今の一戦でウォーミングアップも済んだし、気分も上がってきた。何となく、マホーが使えそうな気がする!
「マホー!」
手をかざして何か出ろ! と思いを念じるが何も起こらない。
うーん……ま、いっか! これからなんか起こるだろ!
「相変わらず、間抜けな事をやってるわね」
「ん? あ! お前は!」
少し離れた岩上から俺を見下ろすのは……馬車道を封鎖してた『ギリス』の! やたら強かった! ええっと……
「レクスしょーさ!」
「違うわい!」
そいつは岩上から飛び降りて着地すると手に着けた手甲が、ガシャン、と動いた。
「ソーナよ。階級は二等兵」
「俺はカイル! 【銀剣】だ!」
「知ってるわよ。ここで会ったが100年目ぇ! ぶっ殺す!」
なんか、凄い殺意だ。なんでここまで怒ってるのか、さっぱりわかんないけど……
「いいぜ! 戦ろう!」
「キィー! 死ねぇ!」
あの時はおっさんに中断されたけど……俺が勝つ!
『海岸』――
「これは運命だと思うかい?」
「さぁ? どうかしらね」
ザァァ、と波が満ち引きする音をBGMに、オッズ
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