第104話

 探索者協会、特に特級探索者を抱えるような支部の電話が鳴り止むことはない。国内だけでも数多くのダンジョンが発生し、ダンジョン災害の頻度も上昇している現在、探索者への依頼は無限に沸いてくるのだ。


「神埼さんへの指名依頼がこんなに!」

「神埼さんへの指名依頼は緊急性のあるものをピックアップして、それ以外の依頼は摩耶さんのフォルダーに入れといて。あの人が選別して決済上げるから。でもあからさまに不適な依頼は事前に却下のフォルダーに入れるの」

「わ、分かりました」


 依頼の難易度が高まれば、達成できる探索者の数も減る。そのため特級探索者を抱える支部には各地の支部から対処不能となった依頼が回され、余計に忙しくなってしまうのである。

 さらに相模支部が抱える特級探索者、神埼煉は探索者としての腕も然ることながら、その特殊性が話題となり依頼が急増していた。


「あの~この妖精種に会いたいって依頼は...」

「そう言った富裕層の娯楽的な依頼は却下...だけど依頼人がダンジョン研究家とかで研究のためにって場合があるから依頼主を照会して振り分けて。支部長か摩耶さんがそれとなく提案するってことだから」

「うひぃ...」

「そ、それじゃあ、この『神草納品』系の依頼は?」

「それも依頼主を見て判断。医療団体とかへの株数は確保できないか交渉予定だから」

「分かりました。あ、この『難病支援者の会』は...」

「それは過去に依頼品の不正利用があったとこの関連団体だから却下! そこら辺は照会システムで依頼してきた個人名、団体名入れると分かるようになってるからね」

「あ、そうでした。すいません」


 そのため依頼の仕分け等を別部署の職員が手伝う事態となっていた。それほど神埼煉の妖精種動画の影響力は強かったと言える。


「神埼さんのは特に難しいから...いつもは摩耶さんがほとんど1人でやってるんだけど。神埼さん関連の仕事が多すぎて流石にってことだから」

「こんなのを1人で? 化物ですか?」

「依頼の仕分けだけじゃなくて、神埼さんや他機関との依頼の交渉。受付嬢業務による神埼さんのサポート、その他の雑務を日々こなしてるんだよね。あの人...」

「え...何か前に神埼さんのおこぼれで出世しちゃって申し訳ないとか言ってましたけど」

「特級探索者をサポートできる人材は同じように特級じゃないといけないのよ」


 新人の職員はその日、なぜベテラン職員たちが自分より若い摩耶が、特級探索者の専属をしていることに対して嫉妬しないのか覚るのだった


 ―――――――――――――――


 支部長室において小室と摩耶が話し合っていた。


「やはり協会に断られたため、本人に直接アプローチを掛けている団体が幾つかいますね」

「神埼さんは配信等で色々とバレていますし、アプローチしやすいのは仕方ありませんが...此方の方で対応は考えておきます」

「『神草』及び『霊草』の納品に関しては、言葉を濁していましたが反応を見るに無理そうです。...関係悪化を考えなければ何度か納品はしてくれそうですが」

「止めてください。言い方は悪いですが、神埼さんとの関係を悪くしてまで達成しなくてはならない依頼ではありません」


 摩耶の提案を即座に却下する小室。協会としても、探索者ファーストを絶対の方針に掲げる小室自身としても悪感情を抱えた状態で依頼をすることは考えていなかった。

 そんな小室の考えに一番賛同しているのが摩耶であった。


「そう仰ると思っていましたので、煉くん...いえ神埼さんには事前に幾つか代替用の依頼をお願いしていますので決済をお願いします」

「高位ポーション納品依頼ですか。流石に仕事が早い...と言うかちょくちょく私を試すの止めませんか?」

「試す? 私が支部長を? そんなこと畏れ多くてとても」

「よく言いますね...」


 煉に対して粗雑な扱いをしたらどんな目に遭わされるかと戦々恐々とする小室であった。








 ☆☆☆☆

 煉に絡んでくる大人は残念なやつばかりみたいな感想への言い訳回です。

 ご都合主義というかある程度普通の大人と煉くんが絡んだとこを描写してもと言うのもありますが、普通依頼するなら高校生に直接行かずに事務所通すよねって話です。切羽詰まってるか事務所通すと断られるような依頼や依頼者だから直接アプローチ=依頼主残念という図式です。


 一番の要因は作者の頭脳以上に頭の良い組織や人物を書けないが故になとこですが...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る