第46話 蟲の女王
福岡の大規模ダンジョンのダンジョンボスが、『蟲の女王』であることが発覚した。なぜ発覚したかと言えば下層に設置されていた定点カメラに、おびただしい数の蟲、詳しく説明するなら
軍隊の中には
「最下層に『蟲の女王』下層に既に軍隊蟻が形成されている現状を踏まえると、下層より下は多種多様な蟻たちで埋め尽くされた地獄と化しているでしょう」
とのことであった。こうなってしまえば『蟲の女王』を討伐するしかない。
「福岡の大規模ダンジョンは不可逆型のダンジョンということで、今まで誰も最下層に行こうとしなかったことが繁殖を防げなかった要因と言えます」
大規模ダンジョンという金の成る木を崩壊させたとしても。
朝、煉が福岡ダンジョンのニュースを見ながら学校に行く準備をしていると、朱里が神妙な表情で喋り掛けてきた。
「凄いことになってるね」
「そうだな」
「私はダンジョンの詳しいことは分かんないけど、この騒動を食い止めようとしたら探索者さんたちに凄い被害が出るよね」
「そうだな」
「…でもおにいは行くんだよね?」
「え? いかないよ。なんで?」
「やっぱ――え?」
予想外の煉の反応に朱里が言葉を失う。
「逆になんで俺が行くと思ったんだよ」
「だ、だっておにい、いつも変なダンジョンには何も考えずに向かってくじゃん」
「別に今回は興味深いダンジョンでもないだろ。『蟲の女王』がダンジョンボスだったってだけだ。世代を極限まで重ねた蟻の相手は面白そうだけど別に蟻単体で見ればそこまで強くもないだろ」
「えーと?」
「今回の事件は、渋谷の異常氾濫とかクリアフィの蠱毒ダンジョンと違って興味深いダンジョンじゃないし、前と違って九州とか関西の探索者が大勢いる状況で俺が行く必要もないだろ?」
「確かに。おにいはそういう考えの人だったね」
「これでダンジョンの異変があったり、ボスが特殊だったりすればすっ飛んでくんだが」
今回の場合、ダンジョンにもモンスターにも今のところおかしなところはない。不運な積み重ねの結果の事故としか言いようがない状況である。
残念ながらこれでは煉の興味を引くことはできないのであった。
―――――――――――――――
探索者協会福岡支部の元に協会本部経由で煉の要請拒否の連絡が届けられた。
完全に頭数にいれていた、絶対的な戦力から断れたショックは大きい。
「な、何でだ! 何故、今まで多くの危機を救っていたのに、ここだけ断られるんだ!」
「ど、どうするんだ。大手クランや上級以上の探索者の中には煉が参加することを前提に考えている者も多い。煉が参加できないと分かれば参加を見合せる者も出てきかねん!」
「そんなことよりもだ。そもそも煉抜きで今回の事件は解決できるのか?」
福岡支部内は完全にパニックとなってしまっていた。
協会本部でも探索者の収集を行っているのだが、最有力候補に断られ
「もう一度連絡を! 此方からも連絡を試みるか?」
「おそらく逆効果です。止めてください」
「ならどうしろと!」
「煉以外の探索者を収集するしか」
「他の探索者も煉が行かないならと断ってきます!」
「そうか…もうどうすれば!」
探索者協会はこれまで煉を比較的フリーに使ってきた代償を支払うこととなるのだった。
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