第40話 成長する武器

 モンスターに『王剣グラル』を突き刺す。するとモンスターが剣に吸収される。気が付くとモンスターの痕跡は跡形もなく消え去っていた。


「『暴食』を発動すると常時『空喰』が発動している感じ。所有者から魔力を吸うって考えると上手く使えば敵からも魔力は吸えそうだが」


 煉は、東藤会長を来栖に任せ特級ダンジョンで『王剣グラル』の試用をしていた。グラルの性能は想像以上に高いものであった。攻撃面も防御面も『暴食』の効果的にかなり優れていた。不安視されていた所有者の魔力を喰う点もモンスターの攻撃や、モンスター自身を喰わせることによりある程度カバー出来そうである。

 ただしこれらの評価は『暴食』の発動のタイミングや強弱を間違えないことが前提である。『暴食』のデメリットを魔力に限定したためか、なにも考えずに使えば途轍もなく燃費の悪い魔剣である。攻撃でも防御でも適切な発動時間と強度を選択しなければならない。

 ただ、煉とグラルの相性は良く、煉は感覚で適切にグラルを扱えているので特に問題はなかった。


「しかも『亜空』の在庫処分もできてグラルの性能も上昇するのは有難いな」


 そして『暴食』の特徴の1つ。喰らったモノを自身の糧とする能力はグラルにもしっかりと引き継がれており、試しに『亜空』に収納されていたいらないモンスターの素材を喰わせてみると、グラルの性能が上昇したのだ。


「成長する武器はロマンがある」


 そのため煉は『王剣グラル』をとても気に入るのだった。


「あとは何かできそうなことは…グラルに選択したモノだけ喰わせることができれば解体とか楽なんだが…何とかしつけられないか?」


 ―――――――――――――――


 アメリカの探索者協会において協会直属のとあるパーティがある動画を視聴していた。その者たちのうち、一番大柄な男が不満げに呟く。


[それで? このガキが何だってんだ?]

[ジャパンの英雄だよ。最近のトレンドだぞ]

[ジャパン? そんなダンジョン後進国の英雄を俺たちが見て何か意味があるのか?]


 映像に写っていた少年を扱き下ろす男。しかしすぐに横槍が入る。


[オルガ…本当にあの動画を視聴してそう思ったのなら君は探索者として才能が無いよ]

[おいおい、ジャック。それは本気で言ってるのか? じゃあこんなガキの方が俺様より才能があるって言いたいのか!]

[残念ながら現時点で才能も実力も上だよオルガ]

[なっ…]

[少なくとも君はドラゴンキングを単独で撃破できないだろう?]

[そんなの…]


 反論しようとしたオルガは、リーダーであるジャックに見つめられことにより言葉が出なくなる。


[君は単独でドラゴンキングを倒せるのかい? 【本当のことを教えてくれよ】]

[【ムリダ、オレニハ、ドラゴンキングハタオセナイ】]

[そうだよね。無駄な虚勢は身を滅ぼすよオルガ]

[はっ! あ、ああジャックすまない]


 オルガはジャックに問い掛けられた途端、虚ろな目をしたかと思えば本音を喋ってしまっていた。いや喋らされていた。


[別に君が弱いと思ってる訳じゃない。実際僕たちのなかで一番戦闘力が高いのは君だ]

[あ、ああ]

[だからこそ小さいプライドは捨てて相手の強さをしっかりと分析してほしい。分かったかい?]

[オーケー、俺が悪かった。許してくれジャック]

[別に怒っていないさ。さてオルガも納得してくれたようだし今回の任務をおさらいしようか]


 ジャックは笑顔を浮かべながらメンバーに作戦書を配る。


[最初は普通に契約金を提示してこの国に帰化してもらう。この際、彼が何を言っても敵意を向けることは禁止だ。友好的に話をする。これで彼が頷かなかった場合は僕が隙をみて『洗脳』を使う。僕が合図したらオルガとグリアは盾役、セーラとアリシャはデバフで『洗脳』のサポートをよろしく]

[つまりいつも通りってことだな!]

[失敬だな。僕はいつも普通に契約が締結されることを望んでいるよ。彼らが愚かだから我が国に来る栄誉を理解できないだけだ]

[ハハ、そうだな]


 彼らは探索者でありながら協会のスカウトチームも兼任している。そして現在、彼らのスカウト成功率は100%なのであった。


☆☆☆☆

登場人物が外国語を話す場合[ ]で表現しています。

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