第28話 皮算用
氷華と一緒に探索した日、上層から中層を探索したのだが、意外に新発見が多かった。成長型ダンジョンのダンジョンクリアを定期的に行っているため、成長しているだろうと予想はしていたが、ここ相模ダンジョンでは見たことの無いエリアが増えていた。
「確か大規模ダンジョンには、空や海、大自然など様々なエリアがあるらしいって聞く。ここも成長を続ければそんな風になるのか?」
このダンジョンではモンスターの素材くらいしか採取できないが、ダンジョンが大規模化していき様々なエリアが出現していけば、新たな資源が採取できるようになるかもしれない。
「あんまり俺には関係ない話しだな。ダンジョン採掘に興味はないし」
煉の目的はダンジョンであり探索。お金儲けや社会貢献に然したる興味は持ち合わせていないのであった。
「今日のダンジョンボスは何だ? この前が
今の煉には着実に成長を続けるダンジョンしか頭に無いのである
―――――――――――――――
探索者協会本部探索部探索者支援課、探索者に関することなら何でもやる、通称"何でも屋"そこには日夜様々な部署で対処に困った事案が降りてくるのだが、最近は探索者支援課本来の業務が忙しくなっていた。
「じゃああれか? 配信者みたいにダンジョンにカメラを持っていって怪我した様子を撮影しないと補償されないってのか!」
「ですから、病院に行っていただいて、ダンジョンで負傷されたという診断書を提出していただかないことには、こちらとしても対応が――」
「やっぱりな! 前にあんな不祥事があったのに全然懲りてないんだな。だから日本はいつまでも探索者弱国なんだよ!」
そういって受付で文句を延々と垂れ流してた男は帰っていった。
「大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
「それにしても最近、増えたわよね権利を主張する探索者。とくに浅層の人。多分あの人も病院に診断書出して貰えなかったのよ。軽傷すぎてモンスターにやられたのかの判定が出来ないからって。これで今月何件目?」
「5件です」
「はぁー。例の上層部のやらかしのしわ寄せがこっちに来てるのよ。まったく」
日本のみならず世界的にもトップクラスの実力を持つと証明した煉、その煉が英雄となった場所での協会の大失態。これを、盾にして協会に無理なお願いをしてくるものが増えてしまったのだ。いま世間は探索者に優しく、探索者協会には厳しいためである。
「でも正規の届出をしてきてくれる探索者さんも一杯いますし、真面目にやっていただいている探索者さんたちのためにも頑張らないと」
「ほんと真面目ね。」
そんなことを話していると、協会内でも情報通で知られる女性が近づいてくる
「聞いて聞いて。今部長と課長が幹部会議に出席してるんだけど、その内容が結構ヤバいらしいわよ」
「ヤバい?」
「ほら例の英雄くんいるじゃない」
「神埼煉さんですか?」
「そうそう。その煉くんを我が国に派遣してくれって要請が各国から来てるらしいのよ」
「ええ!」
「特に氾濫によってダンジョンブレイクしちゃった国は切実らしいの。だから今、政府と協力してどこに派遣するかとかを協議してるらしいの」
「へー、あれ? でもそれって神埼煉さんからは承諾を得てるんですか?」
「そこがヤバいポイントよ。前に無茶な探索要請に断る素振りも見せなかったからで皮算用で話を進めちゃってるの」
「な、なるほど」
「これで断られたら笑っちゃうわよね」
「笑い事では無いですけど。何かすごい不安です」
そんな職員の不安は見事的中することになるのだった。
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