神が好きな島

白蛇 飴亜

トロピカル因習アイランド

 青い空、ジリジリと肌を焼く太陽、日差しを照り返して輝く広大な海に──テンションの上がった、薄着の男女。

 ビキニをつけた女性や海パンの男性が、老若男女、歳を問わず笑顔を見せ、島に着いた船を歓迎している。

 小さな島だと思っていたが、意外と人口が多いのだろうか? 人々の歓迎する声は、一人一人の顔すら認識できぬうちから届いていた。

 ずっと抱いていたリュックを背負い、船から降りる乗客の列に並ぶ。ゆっくりと進む列から意識を逸らし、数日滞在する予定の島を眺めた。

 船着き場はあまり大きくはなく、人工物も少ない。目線を少し上げれば飛び込んでくる緑いっぱいの自然こそがこの島の本当の姿なのだろうと思わせる。つまり、田舎なのだ。

 思っていた通りとはいえ、滞在中の生活について少し不安に思った私の目に、『ようこそ!』と書かれたカラフルな横断幕が飛び込んできた。

 何がそんなに楽しいのか踊りながら歓迎する人々の姿に若干引いたところに、ビキニの上にTシャツを一枚だけつけた女性が横から現れて、私に微笑んだ。

 「さぁどうぞ。足元に気をつけてくださいね」

 島まであと一歩のところまで来ていたようだ。

 格好はともかく、対応はまともな女性にエスコートされながら、私は大地に降り立った。




 今、ネットでは、因習があると言われている島がにわかに話題にのぼっている。

 因習というのも、生け贄だとか、夜這いだとか、そういうセンシティブなものばかりがあげられており、一周回って胡散臭い。

 そもそも、交通の便が発達し、誰もが持ち歩く小型の端末で目の前の景色を残しておくことが当たり前になったこの時代で、本当に生け贄なんて人殺しをしていたら捕まってしまうだろうと思う。

 ……しかし、来てしまった。

 というのも私は、昔から幽霊などの超自然的な存在に憧れがあった。

 町に一つはあるようなありきたりなスポットから、ネットで調べれば簡単に見つかるような名所まで……小学生の頃に始めた幽霊探しは、三十の後半に差しかかった今でも続いている。

 だが、本物は見たことがない。

 それどころか、体調がおかしくなるようなことも一切なく、最近ではこれを旅行の一種だとすら思っている。

 場所さえ良ければ温泉に浸かったり、珍しい料理にありつけたり、今となってはそっちの方が目的になりつつあるほどだ。

 本物に会いたい気持ちがないわけではないのだが……こればかりはどうしようもないことだ。

 今回の目的地も、本物かどうか実に怪しいものの、観光地としては悪くなさそうだからという理由で選んでいる。

 しかし、島の玄関とでも言うべき場所がこうも野性味に溢れていると、快適に過ごすどころか身の危険を心配してしまう。

 共にやってきた乗客がパリピ集団にほとんど連れ去られてから、私は木陰から抜け出した。

 空からは太陽がこれでもかというほど輝いていて、元気を通り越して具合が悪くなりそうなほど暑い。

 「だいぶ暑いな……」

 「分かるよ。僕は暑さに弱いから、来たばかりの頃は年中暑いこの島の、涼しいスポットを探したもんさ」

 「……?」

 つい溢れたひとりごとに長々と言葉が返ってきて、私は振り返った。

 すると、涼やかな印象の少年と目が合った。

 ……いや、青年だろうか? 人懐っこい表情を浮かべているが、雰囲気はどこか大人っぽく……しかし、それでいて童顔だ。身長の低さも相まって年齢不詳の気がある。

 言葉に詰まった私の視線で察したのか、少年──否、青年は、透き通った声で自己紹介をした。

 「はじめまして! この島で暮らす佐津木ルイです。これでも一応大学生でして……つまり、アルバイトをしても怒られないってことなんだ」

 「……はぁ」

 営業スマイルを向けられた私は、彼のいいカモに選ばれたということらしい。




 ルイと名乗った青年は、この島のガイドをする代わりに、昼食を奢ってほしいと言ってきた。

 生け贄の習慣があると聞いていた私はつい警戒してしまったのだが、これでも腕っぷしには多少の自信があるし、妙なところに連れ込まれそうになったらすぐに逃げ出そう、と決め、ルイにガイドをお願いした。

 ガイドを名乗るからには島に詳しいであろうことと、ルイ自体が小柄であるため、彼がおやじ狩りや、あるいは生け贄を選ぶための使者だったとしてもどうにでもなりそうだと思ったからだ。

 しかし、幽霊や超自然的な存在に会いたくてやって来ているのに、真に警戒すべきは人間なのだから、夢を見るというのは難しいものだ。三十にもなって夢だの言っていると笑われるので、人に言ったことはないが。

 南の島だというのに妙に色白の肌のルイは、島にある唯一の村に案内する、と言って、私より少し前を歩き出した。

 舗装されていない、少し坂になった道を上りながら、私はルイにここに来た目的を話した。

 すると、特に嫌な顔もせずに答えてくれた。

 「あぁ、あったなそんな話。今はもうないんだよ、因習」

 「……じゃあ、昔はあったんだね」

 ホッとすると同時に落胆も感じつつ、ルイの言葉に耳を傾ける。

 「うん。一ヶ月に一度、島の人間のなかから一人、神様に差し出してたんだ。神様は生け贄をもらう代わりに、島のささやかな繁栄を見守っている……というのが、島の人間の信じていることさ。実際、疫病や災害で村が壊滅状態に陥ったことはなかったみたいだ」

 ルイの言い回しが気になり、私は額の汗をさりげなく拭いながら聞いた。

 「そういえば、出会ったときもそんな話し方をしていたけど、君はここの人間じゃないのかい?」

 「そうだよ。……あぁ! もちろん、だからといってガイドをするってのが嘘なわけじゃないよ。僕の母がここの島の出身でね。その頃は因習がまだあったから、嫌になって逃げ出してきたらしい。でも、ネットで因習のことが取り上げられて、噂になってから興味を持ったんだ。僕の故郷はどんなところなんだろうってね」

 この島についての噂が広まったのは、あるサイトが見つかったのが始まりだ。

 それは、この島の人間が作ったらしい、観光地として広めるためのウェブサイトだった。

 詳しく調べてから分かることだが、そもそも外との交流が少なく、元は排他的な村がひとつあるだけだったこの島の人間が、パソコンを使い、ウェブサイトを作って公開したというのは、それだけで興味を引かれる面白い出来事だ。

 その事実に気づいた者から島について調べ始め、どこから流れたのか、因習が根づく島なのだと噂が広まっていった。

 この時代に情報があまり出回っていない辺鄙な島、村というのは、それだけで話題にのぼり、更に一定以上の不特定多数から因習の話が持ち上がれば、人々が非日常を夢見る対象になってしまうのは自然なことだ。

 しかし、家族がこの島の人間だったというルイにしても、同じことだったのだろう。結局は、ルイも当事者ではないのだから。

 因習がなくなり、ルイのように陰惨な歴史の当事者ではない者が現れたことを考えると、おこがましくも、物語の幸福な結末の先を見ているようで、感慨深い気持ちになる。砕けた口調が特徴的な変わった青年だが、その過去ありきで見ると、のびのびと育って良かったなぁ、という気持ちだ。

 「ルイ君の両親はここに来ていることを知っているのかい?」

 「ん? あぁ、知ってるよ。ここに知り合いがいるから母も時々は連絡を取るんだ。だから、生け贄を捧げなくなったことも知ってる」

 「ふぅん」

 周りの景色が森から抜けたところで会話が途切れたと同時、ちょうど遠くから、男に声をかけられた。

 「やぁ! ルイ。またガイドをやってるんだね」

 「あぁ、加見さん。どうも」

 二十代後半くらいだろうか? 精悍な顔つきの男性で、それでいて柔らかな物腰だ。

 近づいてきたので頭を下げる。

 「はじめまして」

 「はじめまして! 近くの牧場に勤めている加見です。観光ですか?」

 「はい。着いてすぐルイ君に見つけてもらったので、案内をしてもらっています」

 「ルイはガイドとしては一流ですが、見返りの要求が大きいので気をつけてくださいね」

 「ちょっと加見さん!」

 子どもっぽいルイ君の様子に、思わず笑みが溢れる。

 「ところで、どんなご関係で……?」

 「普通に顔見知りってだけですよ。小さな村なので、助け合って生きていくうちに、集落ごと家族のように付き合うのが当たり前になってしまっているんです。なので、よく会いに来てくれるルイのことも、村の人間みんなが知っていますよ」

 「なるほど」

 「おじさん、もう行こうよ」

 「ん、あぁ。では」

 「えぇ。ルイもお気をつけて」

 ルイ君にとってお兄さんのような存在なのだろうか。機嫌を損ねたルイ君の後を追って、私は再び木々に囲まれた細い道に入っていった。




 枝葉が頭上を覆っているせいか日の光が遮られ、だいぶ暑さが緩和されている。

 ルイ君は加見さんと出会ってから口を閉じたままだ。機嫌が悪いのだろうか。

 雰囲気が悪いままなのはよくないと思い口を開いた瞬間、ルイ君が声をかけてきた。

 「おじさん、船が着いたときのみんなの様子、見ただろ?」

 「えーと、すごく歓迎していたね。びっくりしたよ」

 「実は、あれは今日が特別だったからじゃないんだ」

 「?」

 ルイ君の足が止まる。

 何が言いたいのか分からず、私はルイ君の背中を見つめた。

 「ここの人たちは、年中あぁなんだ。客人が来ようが来なかろうが、常にお祭り騒ぎ。当たり前に生計を立て、笑いながら日々を暮らし、酒を飲み、踊って、充実した生活をしながら、

 「──え、なに?」

 「気味が悪いと思わないか? 生け贄の選出は完全にランダム。若かろうが老いていようが、生まれたての赤ちゃんだろうが今この瞬間にも息を引き取ろうとしていようが、男だろうと女だろうと宇宙人だろうと、神様の気の向くままに生け贄は選ばれる」

 突然浴びせられる言葉の意味を理解できぬまま、振り向いたルイ君の顔を見る。

 その表情は深く思い悩んでいるのか、それとも既に絶望してしまっているのか、はかることができない。

 どんよりと曇りきった瞳が、私の心まで覗き込むかのようにじっと視線を向けている。

 「つまり、いつ死んでもおかしくないということさ。『今』だよ! ほら、『今』さ! いつだっていいんだ。一ヶ月に一度なんかじゃない、一ヶ月に何度でも、何回でも、だ」

 ゾワリ、と体が寒気を感じとる。

 ついさっきまでダラダラと汗をかいていた筈なのに、だ。

 ここが南国であることを、頭だけは理解していた。つい数秒前まで、むわっとした暑さを感じていた記憶があったから。

 しかし、今はどうだろう。指先の感覚がなくなりつつある。これは、寒さによる現象ではないだろうか? これまで生きてきた記憶は、そう判断したいと言っている。

 「イカれてる、そう思うだろう? 僕は元々陽気なやつと気が合うタイプじゃないんだけどさ、それにしたって異常だ。この島の人間はみんな、目の前に死があるのに、今この瞬間を大切に生きて、明日のために支度をして眠りにつくんだ」

 しかし、目の前の青年の言葉は、真に迫っていた。眠ったように動かなかった私の脳は活動を開始し、現実を見ることに決めたらしい。

 ──つまり、次の瞬間、私は、死ぬ可能性がある?

 生け贄の選出方法を知っているわけではない。もしかしたら、島に暮らしている人間だけが選ばれるのかもしれない。

 それでも、たった数日の滞在の間に、人が死ぬところを何度も見る可能性があるということだ。ルイ君が言う通りならば、人々はそれを当たり前のことだと受け止めて、淡々と処理をするかもしれない。

 ──ッ、気味が悪い……!

 確たる証拠はなく、全て想像に過ぎないにもかかわらず、私は胃から何かが這い上がってくる感覚に襲われた。

 口のなかに唾液が溜まる。

 吐き気から、咄嗟に手のひらで口を押さえたところで、ルイ君が再び声を出した。

 「でも、理由はあるんだ。彼らが神様の勝手を許す理由だ。『この島の神に殺されれば、霊魂も残らず消え去ることができる』……これなら、納得できると思わないか?」

 ルイ君が何を言いたいのか分からず、私は吐き気を忘れて彼を見た。

 すると、その目にはこの場に相応しいとは言えないだろう──希望が、宿っていた。

 「つまり、どれだけ善行を積み重ねても、どれだけ罪を犯したとしても、最後には何も待っていないということさ! 死後、天国で二度目の人生を過ごすことはなく、罪を裁かれることもない! 世界なんて今この場所だけで十分なんだ。二度も世界を彷徨うつもりはない」

 まるで中学生がノートに書き記した『かっこいい文章』を読み上げるみたいに、ルイ君は年相応のキラキラした表情で語る。

 「僕にはどうしようもない性癖があってね……。そのせいで苦しんできたんだ。だが、どうだろう。この島ならば、何をしても、待つのはだ! あぁ……素晴らしいな……。そう思うだろう? おじさん」

 ルイ君が何を言いたいのか、はっきりとは分からないが、呼ばれた瞬間、何をしたいのかは分かった。

 彼の目は、まさしく獲物を見る目になっている。

 推測するに、恐らく、彼は私を襲うつもりなのだ。手段や目的は分からない。だが、私の用心は間違っていなかった。現実において真に恐ろしいのは、人間なのだ。

 「……」

 一歩分、ルイ君とは離れている。彼が何かしようとすれば、それに応じて逃げても間に合う距離だ。

 思考が研ぎ澄まされ、体を蝕む暑さが戻ってくる。

 何があっても対応できるように、足先、手の指先にまで静かに緊張を走らせる。

 ルイ君の体は動かない。

 下手に背中を向けるのも悪手だ。ナイフなどを持っているのであれば投げられる。

 相手が異常な身体能力を持っていないことを祈る。そして、彼がその『神様』でないことも。

 自身を奮い立たせ続けるための思考が終わったそのとき、彼が動いた。

 次の瞬間──私は、それまでの冷静な思考を踏みつけるように、すぐに背中を向けて走り出した。

 

 ──逃げられる、逃げ──


 直前、彼の手が懐に回るのを見ていた。

 やはり、ナイフを持っていたのだろうか。


 前のめりに倒れながら、私はそんなことを考えていた。




 ……しかし、体を貫く痛みが訪れることはなく──

 「ッ……カッ、グぁ……お、まえ……!」

 体が衝突によるシンプルな痛みを訴えるなか、私は背後からそんな声を聞いた。

 苦しそうな声だ。

 私は殴打による痛みだけを感じながら立ち上がった。

 そこには──

 なんと、呼ぶべきなのだろうか。

 直径二十センチはあるだろう獣の尻尾が、ルイ君の体を拘束していた。

 それも、一本ではなく、何本も。

 尻尾──というよりは、もふもふした触手のようなそれは、ルイ君の体の後ろの空間の一点から伸びている。

 しかし、触手の主の姿は見えず、触手だけで成り立つ化け物に見える。

 ルイ君は触手に締めつけを強くされ、右手に持ったナイフを地面に落とした。

 「なんだっ、これ、は……! ガ、アァァ……!」

 「わ、分からない、私じゃない!」

 苦しそうなルイ君の姿と、この世のものとは思えぬ存在に、私はつい数秒前まで死の危機にあったことなど遠い過去のように感じながら、彼を心配した。

 しかし、彼から向けられる視線は、殺意に満ちていた。

 「ッ、おま、あがぁぁあぁぁぁ! お、ッ…ハッ、まえ、おまえおまッ……なにを、連れてきた……!」

 「……だ、大丈……なに? 何ですか? 私は一人ですよ! それより──」

 「くそっ、グッ……クソクソクソ! ハッ、こん、な、ウッ……ッ! ッ──!」

 悪態をつく彼の体は、触手によってゆっくりと、まるでオモチャのように──弄ぶようにゆっくりと、曲げられて──

 「う、あ、ぁ、ごっごめ、んなっ……っ! うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


          ▲


 旅行者の男が去った、森のなか。

 捕食者であったはずの青年は、この世から、欠片も残さずに消失した。

 肉体も、血の一滴さえも残さずに──


 唯一、彼を食らったの存在こそが、彼が消えた証となりえるだろうか。



          ▲



 「おぉ、加見さん。今日の会場は聞いたか? 信夫ん家の前でやるとよ!」

 酒を片手に、村人は陽気に私に笑いかけた。

 私はこの村が好きだ。

 もちろん、ハメを外しすぎるのが常の休まらない人たちだが、それも、こうして人間の姿で接しているからこそ起こる苦労というものだ。

 「あら、加見さん! 今日は来るわよね?」

 「いまちょうど誘ってたところだ。なんだ、昨日は来てなかったのか?」

 「えぇ。今日は行こうかと思っていますよ、パーティー」

 「ほんと? 嬉しい! ねぇ、加見さん、本当は神様って本当?」

 胸を押しつけながら腕を組んでくる女性に、私は笑いながら答える。

 「本当ですよ。今は少しお休みしていますがね」

 「じゃあ、加見さんが私たちを食べるってこと? こんなイケメンなら大歓迎じゃない!」

 「あなたたちは外見がどうだって気にしないじゃないですか」

 「まぁそうね~。でも、たかしは外から来たから怖いみたいだわ、生け贄になるの。だから、教えてあげたの。死んでも苦しむわけじゃないわ、何もなくなるだけよ、って。怖がりだから、変な意味に受け取ってたけど、それからとっても明るくなったから私も嬉しいわ。外から来た可愛い男の子いたじゃない? 彼も来た頃は暗かったけど、たかしと仲良くなってから明るくなって……そろそろ食べてもいい頃かしら?」

 「ルイは未成年ですよ」

 お酒が入ってちょうど一番楽しい段階なのだろう、女性はふわふわと話していたが、私は用事ができて、彼女に断りを入れて集落から離れた。

 「すみません、お手洗いに」

 「じゃあ私は先に行ってるわ! 絶対来てね~!」


 森に入ると、私を呼びつけた彼女がいた。

 「はじめまして。島を気に入ったみたいで。私も嬉しいです」

 人間の姿をとっている私とは違い、彼女は姿を見せるつもりがないらしい。虚空から言葉が返ってくる。

 『よいのか?』

 「ええ、喧嘩をする気はありません。私は、この島が、この島の人々が好きでして。あなたが島を壊滅させたとしてもかまいません。あるがまま受け入れるのが、私の好きなこの島でしたので。島の人間であれ、外の人間であれ──そして、神であれ、生け贄に選ばれるのが島の秩序ですから」

 『そうか』


 ──この祭りは終わらない。


 ──たとえ、人が何人消えても。


 ──たとえ、神が消えても。


 ──あぁ、あるがままの愛しい島よ。

 ──明日も楽しく過ごせますように。



          ▲



 『この島のニンゲン、いままで一緒に過ごしてきた神が食われても、顔色変えずに受け入れたぞ』

 『ちょっとおかしいんじゃないか?』

 『まぁ、わしは嫌いじゃないがの!』

 『ご飯を食べて、手隙に島を守る。悪くない生活じゃ』

 『この島はよい。人々は活気に溢れ、希望に満ち、日々を楽しんでおる。守り神として、これほど嬉しいこともないじゃろ?』

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