第14話 修行再び

 結局4人。

 日本酒を2本抱えて出発をした。

 これは、親たちに持たされた。


 鳥居をくぐり、社への階段を上り、歩いて行く。


 その途中で、俺はふと聞いた話を思い出す。

 綾織姫は洞に供えらえた後、一人で総数300とも言われる深き段の底に住んでおった洞の主を、1000日をかけて滅した。

 その時、洞のすべてを手にして神となった。


 それが何100年前の話か知らないが、それからずっと一人か。

 それもつらい話だろうな。

 あいつも、寂しかったのだろうな。

 そんなことを考えた俺は、時々遊びに来ることを決意した。



 社に着いて、一応みんなでお参りをする。

 そして、奥へと続く道を進み、洞へと到着。

 何時ものように、しめ縄をくぐり、中へと入る。

 そして今回は、石を越えるときに、あの粘った感じの境目を潜ったのが分かった。


「思ったのと違い、人数が増えとるのう」

 呆れた感じで、綾織がそう言うのは分かっていた。

「ああすまない。妹たちが増えた。その分手土産だ」

 そう言って、なぜか今回ちび鬼ではなく。本来の姿。

 美人さんバージョンで現れ、マントを着てどこの渡世人だよと思った綾織に酒を渡す。


「ぬっ。まあいいじゃろう。小僧小娘。死なぬように気を付け先へと進め。一応ついて行ってやる。ああ和也。今更お前はそっちに行っても何にもならん」

 綾織がそう言うと、もう一つ穴が開いた。

「そっちへ行け。ただし触られると、喰われるからの気をつけよ」

 そう言って、俺は押し込まれた。

 触られると喰われるってなんだよ? ゾンビか?




 紗莉は、昨夜からドキドキしていた。

 魔法が使える。

 これで、和也の役に少しは立てるかもしれない。


 初めて、洞へと入る。

 ここは子供のころから、決して近づいてはいけないと言われている場所。

 和也は慣れた感じで、前をふさいでいる岩を越えていくが、私にはきつい。

 すると、岩の向こうから腕を伸ばしてきて、赤ちゃんにやる高い高いの要領で私の腋にためらいもなく手を差し込み、持ち上げられた。

 むー。私は和也に女として見られていないのだろうか? 


 そして中へ入り、初めて綾織姫を見た。

 青い着物。

 なぜかこんな洞窟の中で、それもかなり暗いのにはっきりと見える。

 深い青色。その上に川の流れの様に白やピンクの花が描かれた、そんな高そうな着物を着て佇む。ものすごい美人。

 会った瞬間に、なぜか私を見て、ふふんという感じで笑った?

 

 和也から、お酒を貰うと嬉しそうに目を細めてほほ笑む。

 お酒と一緒に、着ていた艶やかな着物が消え、羽織袴 で膝まであるマント姿に変わった。

「小僧小娘。死なぬように気を付け先へと進め」

 そう言って目の前に開いている穴へと促される。


 みんなで行こうとしたら、

「和也。お前は今更、そっちに行っても何にもならん」

 綾織姫がそう言うと、もう一つ穴が開いた。

 和也の手を取り引き寄せる。

 背中側から抱き着いた状態で、和也の耳元に何かささやいている。

 そうして、和也は別の穴に押されて入ってしまった。

 そんな光景を見て、私は胸が痛い。

 和也。いつの間にか、私の中で、彼の存在が大きくなっている。

 彼の横に誰かが立つ。

 いやだ、そんなの考えるだけでつらい。

 でも今は、力もなく、姫に比べて体型も少し? 負けている。

 けれど頑張る。横に立って恥ずかしくないように。


 不思議なことに、押し込まれて穴へと入った瞬間に、彼の姿は見えなくなった。

 そんな彼の入った穴を見ていると、声がかかる。

「ほれさっさと行け、先に進まねば帰れぬぞ」

 私たちも、穴に押し込まれた。

 その時何か、見えない膜を越えた感じがした。




 あー、見た目はあまり変わらない、洞穴。

 ずんずんと進んでいると、気配がやって来るが、なにも、みえなぁぁぁ。

 白い影。人型の何かがこちらへとやって来る。

 俺は思わず、後ずさる。


 俗にいう幽霊と違い、足はあるようで歩いて来ているが、あれ倒せるのか?

 ふと思い返される、綾織の言葉。

「ただし触られると、喰われるからの気をつけよ」

 あの光っているのが、ひょっとして雑食の虫で、触るとたかられて喰われるのか?

 そんな怖い考えが、頭に浮かぶ。

 それだと一度に、焼く感じかな?


 試しに、広く包む感じで炎を撃ちだす。

 あっさりと、白い靄のような者は青白い炎を出して消えて行った。

 虫の集合体ではないようだな。


 安心したのもつかの間、奥の方で湧くのが感じられた。

「やべえ。奥の方に、あの湧き出す場のようなものがあるのか?」

 俺は走り出す。

「やっぱり」

 そう言って、包囲する感じで雷を撃ちだす。


「これって、次々処理していかないと、やばいことになるんじゃ」

 そんなことを思っていると、また奥の方に沸いた感じが分かる。

「ちくしょう」

 そう言って、休む間もなく走り始めた。

 特性を理解していなかった俺は、しばらく休む間もなく走り続けることになった。



 一方、綾織と初心者組。

「ほれ来たぞ。さっさと倒せ」

「なにも見えないんだけど。よし、これか。行くぞ」

 翔太が音を頼りに、張り切って突っ込んでいく。


 馬鹿正直に突っ込んで行き。

 蹴ろうとしたところをかわされ、回り込まれて、こん棒の一撃をカウンターで食らいダウン。

「うげっ」

 と言って、蹲るところへ、追撃が来る。

「翔太」

 と叫びながら、紗莉が自分の前で棍棒を振り回しながら救出に向かう。

 紬は、持っていた小型ライトを当て小鬼を見た瞬間、「ひっ」と言った後、足が生まれたての小鹿になって、まともに立ってもいられない。


「なんじゃこれは?」

 綾織はため息をつく。

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