第12話 様々な事情と都合

 モンスターの発生による大騒ぎが、もし地元限定なら。

 異世界体験ツアーとか、リアル一狩りとかで、村おこしにでも使えそうだが、残念ながら世界中で発生していた。


 これのおかげで、アメリカやヨーロッパの武器関連企業はトレンドに乗り完全に好景気となった。

 さらにピックアップトラックの生産と販売が好調の仲間入りをする。

 時代は、衝突安全重視から、ぶつかろうがどうしようが壊れず走れる。丈夫な車へと逆行した。


 銃社会であるアメリカは、危険な穴はすべてモニターして自動対応タイプの攻撃設備があっという間に整備された。ただ、ベンチャー企業の開発した初期の物は、動くものはすべて攻撃するチープなものだったが、好調な売り上げを後押しに、モンスター画像認証タイプへあっという間に改良され輸出が始まる。

 そのベンチャー企業。地元では、ジョブズの再来と言われるまで一気に会社が大きくなった。


 ヨーロッパでは、アメリカの様に銃をガンガンと撃ちまくるわけにはいかないが、何処からか、センサー式のレーザー照射式システムが売りに出された。

 一説によるとこの商品。武器商人たちが開発をしていた、対人レーザー武器が元だと言われており、聞いたこともない会社はフロント企業だと噂された。

 だが、地面を掘り返したりせず、景観の保全が重要とされるヨーロッパでは静かに設置が進んだ。

 ただ馬鹿みたいに電気が必要だが。


 日本では、穴の中で何かの動作を感知すると、パチンコ玉を撃ちだすものが開発され実際に販売されたが、人に当たると怪我をすることがあると問題になり、材質を変更するまで販売が停止された。

 その間に、どれだけの人が氾濫でけがや死亡しても問題とならないのか? そんな事がまた問題となって論争が起こった。

 大手からの圧力があったとか、無かったとか。

 だが、皮肉な事に日本の企業が作ったこのシステムは、海外では売れた。

 湧いて来ても、数匹で湧きが終了するため。通常の生活を脅かさないレベルとなっていた。何しろ、安くて効果的。大電力も食わない。


 ネットでは大人気となった。


 メーカーが、製品の販売停止された後。

 海外販売拠点を持たないため、大手通販会社へ一個100ドルで掲載した。

 そのため、海外でバカ売れした。

 まあ構造的にセンサーと射出装置の簡単な物。 

 撃ち出す玉の質量数とスピードが重要なだけで、製品自体は玩具レベル。

 撃ち出しも、湧き初めに1発撃つのみ。距離が20mまでなら穴の両側に1個ずつ設置するだけ。非常に画期的だった。当然従業員数人の会社は一気に中堅へとジャンプアップした。

 そんなこんなで、1月もすれば海外は、意外と早く平和な暮らしを取り戻して行った。

 次のステップに行くまでは。



 さて、突発的な災害を受けた広瀬家。

 家には、上段と下の段に家がある。

 上は、元々おじいさんの親が住んでいた家、下段には爺さんが家を建てた。


 とりあえず、荷物を置き話し合い。

 面倒だから俺と妹の部屋へ子供たちはまとめて、親たちは上の家の仏間を使ってもらうこととなった。

 食事は、下の家の仏間で、風呂は上の家に隣接。

 車は、いくらでも駐車できる。


 もともと、この所紗莉は家に来ていたし、問題はない。

 弟翔太君。高1だけが、あまり知らない。

 だが噂を知っていたが、俺が実際に退治をしている姿を見て単純にすごいと思ってくれたようだ。

 最初、部屋に来た瞬間から、ちわっす。お世話になります。状態で、目がキラキラだった。



 結局、広瀬家は次の日に大工さんに見てもらうと、

「こんなもの、建て替えだ。直した方が金がかかる」

 すげなく一言だったようだ。


 建て替えとなった為、週末。

 みんなで荷物運びの手伝いに行った。

 家の農具小屋や長屋と呼ばれるガレージには、物を置けるロフトのようなところがある。特に困らないものは畑に作られた農具小屋へ移して、場所を開けた。


 どんどん荷物を軽トラに積み、家へと運び込む。

 途中で、広瀬お母さんの断捨離令が発動して、お父さんが泣いていた。



 落ち着いたところで、焼肉パーティという飲み会(お客)が始まる。

 ご近所さんも手伝ったので、かなり人数が増えたがいつものことだ。


 中には皿鉢が用意されているが、最初は肉だな。


 そこで、俺の話になり、どこであんな力を得たと聞かれて、実はあの日神隠しに会い。

 よくわからない世界に連れていかれて、100年ほど修業したと、法螺を吹いた。

 本人は冗談のつもりだった。

 だがなぜか、納得されてしまった。

 困った。こんな話、なんで納得するんだよ。

 隣で、翔太君が兄貴ついて行きますぜ状態だし。


 妹の紬だけが、変な顔をしていた。

 そうか見ていないのは、こいつだけか?


 見せてやろう。

 ビールを冷やしていた、クーラーボックスに氷を補充すると、妹の目が丸くなった。

 ふっふっふ。どうだ誉めたまえ。君の兄が持つ力だよ。


 そう思ったら、

「そうだった。早く言ってくれたら氷を買わなくて済んだのに」

 そう言って、親から叱られた。


「なんでだよ。この前説明しただろう」

「いや制御ができなくて、練習するって言っていたじゃないか」

 父さんから突っ込まれた。

 そう言えば、問題になったゴブリン退治の時。ちょっと炎の槍と思ってすごいのが出たとしか言っていないな。


「もう大丈夫だから」

 そう言うと、

「じゃあお前は、風呂焚き当番だな。最近燃料(灯油)も高いからな」

 父さんがそんなこと言うから、周りのみんなも、家のも頼むよと大合唱が始まった。

「えっ本気?」

 と聞くと、

「来てくれるなら、誰も文句は言わん」

 周りは酔っ払い。本気にしないでおこう。


 俺はそう思っていたが、家の当番は本気だったようだ。

 学校から帰れば、水魔法高圧洗浄機バージョンで風呂を洗い。

 だばっと水を入れる。

 外へ出て釜に薪を入れる。

 釜の中にそのまま火をつけるから、12cm程度の太さで三角形に割られた薪を釜の中に1本斜めに差し込む。

 その木を枕にして、その上に橋、つまり隙間ができるように重ねる? 乗せる。

 それで魔法を使い火をつける。

 家の250Lの浴槽なら、夏場は3本あれば十分風呂が沸く。

 後ろで、紗莉が見ていて、

「便利だね」

 と言っている。


「まあ、生活には便利だね」

 魔法を欲しがっているのは分かっているのだが、一度、洞に見に行ってみるか。

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