第77話 話題
———始業式、体育館に移動だ。
「えっと……名前教えてくれませんか?」
浅原妹が俺に声を掛けてきた。こいつの事は正直好きじゃ無いが同じクラスだ、名前くらいは知ってないとな。それに、転校初日で不安もあるだろう。そんな中、知ってる奴がいたら
「―――御前正吾だ」
「ありがと。御前君、体育館まで一緒に歩いちゃ駄目かな?」
「―――駄目とは言わん」
「ふーん……素直じゃ無いな」
なんか俺の顔を見て含みのある笑みをしている。
この状況、丹菜が見たら怒るんだろうな。ただ、クラスは三つも離れている。流石に俺の事は見えていない。
「ね、なんで(顔)隠してるの?」
「あっちで(顔)出してるからな。だからこっちで(顔)隠してる」
「ふーん……逆なんだ……」
しかしクラスの男共の視線が痛い。
「なんで正吾の隣歩いてんだ」
「なんだかんだであいつモテるよな」
「なんなんだ」
「葉倉さんに言いつけてやる」
「すまん! それは辞めてくれ」
普段無視するガヤだが、丹菜にチクると言われたら思わず、声を出してしまった。
「何? 葉倉さんって?」
「彼女だよ」
「彼女いるんだー…… へー ……」
浅原妹は俺の言葉を聞くと振り向いて俺の後ろを歩く男に質問した。
「ねえねえ、御前君の彼女ってどんな人?」
「正吾の彼女? 2-Aに居る学校一の美少女だよ。なんでこんな根暗ボッチに葉倉さんが……くたばっちまえ!」
「ふーん……学校一ね……」
再び含みのある笑みを見せる。なんかやだな……この微笑み。
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体育館に全校生徒が整列する頃、Aクラスはとんでもない騒ぎになっていた。
Aクラスに目をやると、丹菜と陽葵が前後に並び、陽葵の隣に浅原兄が並んでいる。
「大河、凄い注目浴びてる……って、希乃さんと……あの子一緒なのか……じゃあ、注目浴びちゃうね」
向こうの注目度が高すぎて、浅原妹は全く注目を浴びることは無かった。ただ、丹菜と目が合ったが、なんかこっちに向かって凄いわちゃわちゃしてた。
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始業式も終わってLHRだ。それまで少し時間がある。浅原妹の周りに皆群がって質問攻めだ。浅原妹は手慣れた感じで受け答えしている。席が隣の俺は居場所がなくなってベランダへ避難した。
ベランダに出て、Aクラスの方に目をやると、丹菜と陽葵が出ていた。多分、陽葵が俺と同じ席の位置だ。俺と同じで避難したんだろうな。
すると丹菜が俺に向かって投げキッスを連発してきた。俺は飛んできた投げキッスを一つ手で掴みホッペに当てた。すると丹菜は飛んで喜んだ。可愛いな。
俺は丹菜の方を見ながら教室から聞こえる声に聞き耳を立てていた。
「向こうでバンド組んでたんだけどね……」
「前の学校ではねー ……」
「彼氏? 居たんだけど……(うそ)」
「家はねー、内緒……」
「La・IN? ごめんね、前の学校でトラブってからあんまり教えてないんだ」
なんて声が聞こえて来た。バンドの話……なんか嫌な予感がした。
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