第58話 新学期
―――始業式が終わり、教室に戻ってLHRまでの空き時間、皆雑談をしている。
俺の左隣に座る女と目の前の女がどうやら友達らしく、二人で俺に話しかけてきた。
「葉倉さんってなんか堅いイメージあるんだけど、実際どうなの?」
「———普通の子だな。冗談も言えばイタズラもする。お前らと変わらんよ」
「ふーん……でも、御前君と付き合い始めてから笑顔増えたよね絶対」
「かもな。俺には分からん。付き合い始める前から一緒に居たからな」
「ちょっと待って! え? 何? 付き合う前から一緒にいたってどう言う事?」
「———言葉のままだよ」
最近、丹菜やら陽葵やら普通に色々話してるからそんなノリで余計な事言ってしまった。危ない危ない。
「しかし、御前君優しいよね。ちゃんと彼女のリボンしてあげてんだもん。葉倉さん羨ましいよ」
「———丹菜に言っとく」
月曜から「ネクタイ女子」が増えるのだが、「リボン男子」は増えなかった。というより、俺も流石にリボンはやめた。丹菜にブーブー言われたが、3時間目が終わる頃に丹菜とネクタイを交換したら、「香りがフレッシュ」と喜んでいた。良かった。
・
・
・
―――LHRが始まった。
「改めて、私が担任の
・
・
・
「御前正吾です。あ―――趣味は音楽鑑賞です。宜しくお願いします。リボンの事は突っ込まないで下さい」
自己紹介の順番は五十音順だ。俺の前までに半分以上の人が既に済ませている。
俺の番までに皆、自己アピールで、所属の部活とか趣味とか話しているが、俺はその辺の情報は一切話すつもりは無かった。ただ、それだとちょっと素っ気無い感じなので、「趣味は音楽鑑賞」にして貰った。実際はギター演奏だけどな。
・
・
・
自己紹介のあと、委員とか係とか決めてLHRは終わった。終わり間際、先生から、
「来週月曜日、新入生の歓迎会あるから宜しく」
―――そう言えば、俺ら部活始めたんだな……部活の紹介どうすんだ?
・
・
・
―――放課後。今日は午前中で終わりだ。俺は丹菜を迎えに2-Aの教室へ向かおうとカバンを手に立ちあがろうとすると、
「正吾君お待たせしました! ハァ ハァ ハァ」
丹菜が2-Eの教室に顔を出すと、一瞬、教室内が騒然とした。
「あ、姫だ」
「凄い笑顔」
「何故御前君なのかがまだ理解できない」
「おいおい、走ってくるなよ」
「会いたかったんです。急ぎもしますよ」
「空、捕まるかな?」
「どうしたんですか?」
「来週の新入生歓迎会の部活……」
「それ、私も気になりました。ちょっと集合ですね」
すると俺のスマホが鳴った。電話は空からだ。空も俺達と同じ考えだったようだ。
俺達は部室へ向かった。
・
・
・
”―――ガラッ”
「半月ぶりですね」
「だな」
先輩から譲り受けたこの部屋は、俺達の「昼の溜まり場」になってしまっている。ちょっと先輩に申し訳ない気持ちが芽生えつつも、一応、楽器は鳴らしている。
空、陽葵、大地が揃った。芳賀さんも一緒だ。
皆揃い、空が口を開いた。
「集まって貰ったのは他でもない。来週の新入生の歓迎会だが……腹減ったな、外でメシ食いながら話すか?」
「賛成! お昼過ぎてるしね」
「何故ここに集めた?」
俺達は「喫茶希乃音」に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます