第4話 彼氏製造キット EKM-0515
<彼氏が欲しい女子のみんな!ナマステー!私の名前はメルティー!神様系女子だったら誰もが憧れる神々女学院の1年生だよ!好きな食べ物はらっきょうとギョーザ、ちょっとお転婆でドジっ子だけど、みんな私と仲良くしてくれると嬉しいなっ!あっ、そうそう、メルティーはね、みんなにこのキットの使い方を説明するナビゲーターに任命されちゃったんだー!ヤッター拍手~!パチパチパチ!これからメルティーはみんなのために頑張ってナビゲートするよ!よろしくねっ!>
何と言えばいいか、めっちゃ微妙なキャラクターのイラストが描いてある。
つーか、ナマステーって何だよ。メルティーはインド人か?
それに神様系女子? どんな女子だ?
で、らっきょうとギョーザが好きなのか。ちゃんとブレスケアしとけよ。
<まずはキットの準備から始めるよ!あ~っ!すぐに彼氏を造りたいと思ってウズウズしてるそこのアナタ!”慌てる乞食は貰いが少ない”だぞ!>
メルティー、いきなりどんな諺をぶっ放してんだよ・・・ダサイを通り越して失笑モノだよ・・・
<スマホを用意して、下のQRコードからアプリをダウンロードしてね!>
ほう・・・一応アプリなんて用意してあるのか。
私は何となく興味が湧いてきて、QRコードをスマホでスキャンしてみた。するとすぐにダウンロードが始まり、30秒ほどで終了した。
そしてアプリを起動すると・・・
<彼氏が欲しい女子のみんな!ナマステー!私の名前はメルティー!神様系女子だったら・・・>
おい、またその下りかよ、しつこいぞメルティー。
<アプリをダウンロードしてくれてアリガトー!ここからは製造する彼氏のスペックをこのアプリで設定するよ。まずは彼氏のお名前を入力してね>
名前かあ・・・彼氏の名前って言われてもなぁ。そんなの考えた事無かったから分からないよ・・・名前ねぇ・・・
<ここでメルティーからのワンポイントアドバイス! 彼氏のお名前が決まらない時は、好きな芸能人やアイドルの名前をつけるのもステキだよねっ!理想のアイドルが自分の彼氏と同じ名前なんて、メルティーは考えただけでもドキドキしちゃうなあ!>
好きな芸能人ねぇ・・・あたしゃそーゆーのに疎いからねえ・・・
その時、あの山下新之助の笑顔が目に浮かんだ。あのミーティングで私だけに微笑んでくれたあの笑顔!思い出すだけでオシッコ漏れそう。
「よし、名前は”新之助”にしよっと!」
アプリ画面の入力欄に『しんのすけ』と入力して変換ボタンを押し、決定ボタンを押す。
---あなたの彼氏の名前は 【珍之助】です---
ああっ!入力間違えた!戻って修正修正と・・・あれ?あれっ?戻れないぞ!?
<決定ボタンを押したら修正はできないよ!よく確認してから決定ボタンを押してね!メルティー言い忘れちゃったよ!テヘッ!>
テヘッ!じゃねぇよ!言い忘れんなよ!そんな大事なコトは事前に言っとけよ!
まあ、しゃーない。
あたしの彼氏の名前、”珍之助”かよ・・・
<次は彼氏の体型を決めるよ。下の中から2つ選んでね!>(※相反する体型 ex.肥満+細身 などは選択できません)
〇中肉中背 〇細身 〇ガリガリ 〇小太り 〇肥満
〇筋肉質 〇虚弱 〇普通 〇マッチョ
別に極端な体型じゃなければ問題無いし・・・
私は『中肉中背』と『普通』を選択して決定ボタンを押した。
---あなたの彼氏の体型は 【中肉中背・普通】です---
<次は彼氏の性格を決めるよ。下の中から5つ以内で選んでね!>(※相反する性格 ex.社交的+内向的 などは選択できません)
〇朗らか 〇饒舌 〇無口 〇無表情 〇熱血漢 〇知性的 〇野性的 〇親分肌 〇冷酷 〇わがまま 〇短気
〇優しい 〇冷たい 〇おっとり 〇献身的 〇ノリがいい 〇チャラ男 〇子供っぽい 〇大人っぽい 〇傲慢
〇のんびり 〇せかせか 〇好奇心旺盛 〇謙虚 〇人懐っこい 〇感情表現ゆたか 〇積極的 〇暗い
〇責任感が強い 〇注意深い 〇おおらか 〇負けず嫌い 〇楽観的 〇素直 〇単純 〇我が強い
〇誠実 〇行動力がある 〇社交的 〇内向的 〇真面目 〇センスがある 〇神経質
えーー!?この中から性格を決めろって?人の性格なんて、こんなふうに一言で言い表せるモノじゃ無いと思うけどなあ。
例えばこの中の『冷酷・わがまま・傲慢・短気・暗い』を選んだら、まるで悪魔のような彼氏が出来上がるのか?
まあいいや、ここも無難なヤツにしておこう。
私は『優しい・謙虚・積極的・素直・誠実』を選んで決定ボタンを押した。
---あなたの彼氏の性格は 【優しい・謙虚・積極的・素直・誠実】です---
<あなたは彼氏からどのように呼んでほしいですか?呼んで欲しい言葉を入力してね!>
なんて呼んで欲しいか・・・キミ、お前、坂口さん、凛子、凛子ちゃん、凛子様・・・
いっその事、『お嬢様』とか呼ばせちゃうか!・・・って何浮かれてんだ、アタシ。
ここは普通に『凛子』にしておこう。
画面の入力欄に『りんこ』と入力して変換ボタンを押し、決定ボタンを押す。
---あなたの彼氏は、あなたの事を 【珍子】と呼びます---
わわわわ!何だよ!珍子じゃねぇよ、凛子だよっ!・・あああ・・・修正できないの?できないのぉぉぉ!!お願いだから直させて!
珍子って・・・珍子って・・・
スマホの戻るボタンを連打するが、画面はまったく切り替わらない。
「ハハハ・・・彼氏から珍子って呼ばれるんだ、アタシ・・・」
<これが最後の設定だよ!あなたの彼氏の身長を入力してね!>
そう言えば、男女間の身長差は20㎝がいいってどこかで聞いたなあ。
私の身長が163cmだから、20㎝だと183cmか。おお、理想の身長だよ!
画面の入力欄に『183』と入力して決定ボタンを押す。
---あなたの彼氏の身長は、 【138cm】です---
はぁぁぁぁぁぁぁぁ?ひゃくさんじゅうはち?ちょっと待て待て待て!あたしゃ『183』って入力したぞ!
い、いや・・・ひょっとして3と8を間違えて入力したかも・・・
身長138cmの彼氏。はははは・・・小学生かよ・・・
■■■ あなたが設定した彼氏のスペックは以下の通りです ■■■
彼氏の名前:珍之介
彼氏の身長:138cm
彼氏の体型:中肉中背・普通
彼氏の性格:優しい・謙虚・積極的・素直・誠実
彼氏はあなたの事を【珍子】と呼びます
<彼氏のスペック設定お疲れさま!ステキな彼氏だねっ!メルティー、ちょっとヤキモチ焼いちゃうよー!メルティーもこんな彼氏が欲しいなっ!>
138cmの彼氏って・・・ただの父っちゃん坊やじゃんかよ・・・名前が珍之介で、その珍之介は私の事を珍子と呼ぶ。
あ、悪夢だ・・・どこが理想の彼氏だ。
メルティーはこんな彼氏が欲しいんだ・・・あげるよ。クール宅急便で、着払いで送ってやるよ。
<ここでメルティーからのワンポイントアドバイス! スペックを設定したけど、やっぱりあっちのほうが良かったなぁ・・・とか思っちゃったりすることってあるよね!『女心は変わりやすい』って校長先生も言ってたよ。もし設定したスペックが気に入らなくてもノープロブレム!これから彼氏を成長させていく過程で様々な経験や食べ物を与える事によって、彼氏のスペックを変える事もできるんだよ!え?どうやって変えるのかって?それはね、ヒ・ミ・ツ!>
秘密かよ!
教えろ!メルティー、教えてくれっ!
名前が珍之助でもいい、私を珍子って呼ぶのも目をつぶってやる。
でも、でも、でも、身長が138cmだってーのは、
我慢できねぇ~んじゃぁぁぁぁぁぁ!!!
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
何で私はこんなに息切れしているんだ。
<設定した彼氏のデータをEKMジェネレーターに転送するよ!EKMジェネレーターの電源コードをコンセントに差し込み、側面のパワースイッチを押してね!>
「EKMジェネレーター?何だそりゃ?」
先ほどダンボール箱から取り出して並べたものの中に、家庭用ゲーム機ほどの黒い機械がある。その機械の側面に『EKM Generator』の白い文字。
「ああ、こいつか」
私はその『EKMジェネレーター』から出ている電源コードを壁のコンセントに差し込み、EKMジェネレーターの側面にある『Power』と小さく書かれた文字の横のスイッチを押した。
すると、ピッ!と言う短い電子音と共に上面にある小さな液晶ディスプレイのバックライトが光り、『Ready to data receive 』の文字が表示された。
<EKMジェネレーターのスイッチは入ったかな?ディスプレイに『Ready to data receive 』って表示されていればオッケーだよ!ちゃんと出来た人は大きな声で返事をして手を挙げて!>
「はいっ!」
私は思わず返事をしながら手を挙げた。
あ、何やってんだよ、自分。ヒーローショーに来ている学童か。
<次はスマホとEKMジェネレーターをUSBケーブルで接続してね!>
えーっと、USBケーブルどこだっけかな・・・あ、あったあった。
これをスマホに差して、こっちをこの機械の・・・えーとどこだ?えーと、えーと、あ、ここか。
USBケーブルをEKMジェネレーターに差し込むと、ディスプレイに表示されていた文字が『Transferring data』に変わった。
携帯のアプリ画面も『データ転送中』と表示されており、ミニキャラにデフォルメされたメルティーがピョコピョコと画面内を走り回っている。
10分経った。
15分経った。
20分経った。
30分経った。
ちっとも終わらねぇじゃんか!
と、思った時にピピッ!っと電子音が鳴り、EKMジェネレーターのディスプレイ表示が変わった。
「おお、やっと終わったか・・・待ちくたびれたよ」
EKMジェネレーターのディスプレイには『Transferring error code:A103』と表示されていた。スマホの画面でピョコピョコ動いていたメルティーのアニメーションも固まっている。
何だよ・・・いきなりエラーかよ。ちゃんとメルティーの指示通りに設定したよね。
どこか安い海外の下請けにでもアプリ作らせたんじゃないの?
どうしようかな・・・あ、そう言えばハゲが困ったら電話で問い合わせろって言ってたな。
電話番号、電話番号・・・あ、これか。
私はマニュアルの裏表紙に書いてある電話番号に電話してみた。
『プルルルル、プルルルル、プルルルル、カチャッ、♪ちゃゃらら~ん♪ちゃららら~ん・・・』
受話器の向こうから聞こえる安っぽいBGM。
『彼氏が欲しい女子のみんな!ナマステー!私の名前はメルティー!神様系女子だったら・・・』
メルティー!またお前か!
『イケメン彼氏製造キットEKM0515に関するお問い合わせは1,ステキ彼女製造キットSTK0631に関するお問い合わせは2,淫乱マダム製造キットINR0883に関するお問い合わせは3,その他の製品に関するお問い合わせは9を押してね!』
この会社、イケメン製造機以外にも色々やってんのか。何だよ、”淫乱マダム製造キット”って。超胡散臭いなあ・・・まあいいや、1と。
『イケメン彼氏製造キットEKM0515に関するお問い合わせだね!今から担当者に繋いじゃうよ!ちょっと待ってね!プルルルル、プルルルル、プルルルル、カチャッ・・・うーい、えーっと、株式会社神様ァ、おっ客様相談室担当のォ、神葉衣留どえーっす』
は?
神葉衣留って、お前、あのハゲじゃんか!
確か名刺の肩書には”営業部部長”って書いてあったよな?
何で営業部長がお問い合わせ電話に出てるんだよ。
「おい!このハゲ!お前が送り付けてきたあのキット、マニュアル通りに設定したけどエラーで止まっちゃったじゃんかよ!」
「あれ?その声は凛子ちゃん?おおー!久しぶりー!元気?」
元気?じゃねえよ、さっき会ったばっかだろ。
「あの機械な、スマホに繋げてデータ転送したらエラーが出て固まったぞ」
「え~!マジで?おっかしいなぁ?そんなハズはねぇんだけどなあ・・・ちょっと待ってえな。ガタッ・・・(おーい、EKMのこと分かるヤツ誰かいるー?エラー出たんだってよ、あ?みんな新人歓迎会に行った?しゃあねぇな、え?あ、そう、んじゃぁそうしてもらえる?うん、大丈夫だってぇ、貧乳で気の強い女だけどさ、悪いヤツじゃねぇから、うん、ちょっくら行ってさ、テキトーにチャチャっと済まして来てよ、おれらトリキで待ってるから)」
おいハゲ!そーゆー話をする時は電話を保留にしとけよ!社会人の基本だぞ。つーかテメェ、また人のこと”貧乳”って言いやがったな!
『坂口様、お手数をお掛けいたしまして大変申し訳ございません。すぐに弊社の技術者を派遣いたしますので少々お待ちくださいませ。っつーわけでな、それじゃあ凛子ちゃ~ん、ちょっと待っててねー!バイバ~イ! ガチャッ・・・・』
勝手に切りやがった。
技術者を派遣?こんな時間にか?
「ボンッ!!!」
「わっ!」
目の前でいきなり鳴り響く爆発音、そしてそれに伴う白い煙。
またあのハゲか?
その煙の中に現れたのは・・・
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