見返り
??「こぉーんな夜更けに何してんの?」
アオイ「っ?!」
屋根の上から窓を覗き込んでいる青年が居た。
それは昼に出会ったあの男 ロゼだった。
アオイ(どうする?顔を見られた…口止め料を)
(いや、ダメだアイツは俺の素顔も声も)
(知られてる、メイもユキのこともだ)
(闇ギルドに俺の情報を売ったほうが)
(高値になるはずだ。)
(なら…殺すか?罪もないやつを殺すのは)
(胸が痛むっ。なら、どうする?)
(口止めが嫌なら殺しをただ)
(先の騒ぎで衛兵も気がつくはずだ。)
アオイは頭の中で思案を巡らせている
ロゼ「ん〜ここも騒がしくなりそうね。」
「ちょっと、しっつれーい!」
「よっこいしょ!」
アオイ「っ!?ちょっ!バカ降ろせ!!」
ロゼはアオイをタワラかつぎして
屋根伝いに 移動していく。
ロゼはアオイを持ち上げながら軽々と
屋根を飛んでゆく。
担がれながらアオイは星夜亭の方を見た
騒ぎを聞きつけた衛兵が来たらしい。
だが、星夜亭の戦士と神官が、いた部屋は
もぬけの殻だ。
影に連絡をして預かってもらった もちろん
足がつくような証拠は全て消去した。
メイもユキも回収済みバレることはないだろう。
…………この男にはバレたが…。
アオイ「バレないように深夜を狙ったのに」
「よりにもよってどうしてお前なんかに」
「バレるんだよ…。」
ロゼ「にっしっしっし〜」
「出会ったときからなぁーんかあるなーとは、」「思ってたんだよね~つ ま り 」
「俺と会ったのがアンタの運の尽きだよ。」
アオイ「分からない、一体」
「俺をどうしたいんだ?」
「何をさせたい?金か?暗殺か?」
ロゼ「えぇーなあーんか物騒でやだよ(笑)」
アオイ「いや…ならいい。」
(駄目だ 変に考え過ぎて何がなんだか)
(分からなくなってきた…。)
そんな風にぼんやり考えていた。
ロゼ「さぁーて、ついたついた〜。」
ついた先はどこかの寂れた屋敷の様だ。
ロゼ「じゃーん!ここが俺の根城」
「どー?素敵じゃない?」
そこは、ホコリ臭く寂れており暗くて
とてもじゃないが素敵とは思えない。
アオイ「ホコリ臭い0点。」
アオイは手で口を覆う。
ロゼ「おおう、随分とまた 手厳しい〜。」
アオイ「それで、お前俺になんのようだ。」
「こんなところに連れてくるとは さぞ重大」
「なんだろうな?」
ロゼ「んー別に特にって程でも無いんだけどさ」
屋敷の中を歩き階段を登りバルコニーのある
寝室部屋へとついた。
ロゼ「アイツラなんか悪い奴らなんでしょ?」
着いて早々ロゼは突然話す。
アイツラはたぶんあの戦士達のことだ。
ロゼ「ああ、隠さなくていいよ〜」
「俺も裏の人間だし。
「まっ、お互い様でしょ。」
「今回のことは晩酌してくれたら忘れる。」
「俺もお前も無かったことにするそれでいい?」
アオイ(案外話が分かるやつだな。)
(まぁ、助かった…か。)
フードを外し素顔のまま対面する。
「ああ、俺もそれで構わない。」
「だが…俺はバルバロスだが言いのか?」
ロゼ「ぜーんぜん良いよ〜」
「俺はそんなの気にしないし」
「楽しく行こーよ。」
アオイ「ああ、分かった。」
こうして二人はワインやビールで乾杯する。
ロゼ「おぉーいい飲みっぷりじゃーん」
「飲むときはペース早い方?」
アオイ「こういうのは一気に飲むに限る。」
数十分後
「だいたい、裏の奴らは」
「愛想も悪いし礼儀もないしなにより」
「騙してくる奴らもいるからたちが悪いし」
(あーだこーだうんたらかんたら〜。)
ロゼ「なはは!あんた飲むと喋るね〜(笑)」
「良いよ、良いよ〜楽しくなってきた!」
アオイ「…それに俺には叶えなきゃ」
「いけないことがあるんだよ。」
ロゼ「ん?なにそれ?」
アオイ「…言わない。」
「誰もが口を揃えて言う馬鹿げている」
「というきっとお前も笑うさ。」
ロゼ「え〜言ってみなって気になるじゃん。」
アオイ「誰にも言わないか?」
ロゼ「言わない言わない〜。」
「裏の人間は情報命ってね?」
アオイ「…蛮族と人族の共存。」
「種族差別の無い世界それが俺が追い求める」
「理想だ。」
ロゼ「ほぉ~ん?」
アオイ「どうせお前も他のやつと一緒で」
「嘲笑うのだろう…。」
ロゼ「それめっちゃいいじゃん!」
アオイ「………はっ?」
ロゼ「それってさ!蛮族の奴らとも」
「酒飲みしてもいいってことでしょ?」
「俺もダークドワーフ?とかコボルトの」
「作る酒もっと堂々と飲みたいしね〜」
「あれ表では出回ってなくて」
「苦労すんだよなー。」
アオイ「ない…のか?」
ロゼ「ん?何が?」
アオイ「嫌わ…ないのか?」
「蛮族のましてや…敵との」
「共存を罵らないのか?」
(蛮族とは精神をダモクレスにより凶暴的に)
(作られた存在それ故に全てのものが)
(悪逆無道の残虐者というレッテルを)
(貼られている…全員がそう思っていると)
アオイ「どうして。」
ロゼ「んなの簡単じゃん」
「俺はもっと色んな奴と楽しく」
「生きてたいだけだよそこに、蛮族も人族も」
「関係ないってだけ。」
アオイ「………。」
ロゼ「え?!いやどしたの!?」
「俺なんか変なこと言っちゃった??」
アオイ「あっい、いやっそうじゃっな」
いつの間にか泣いていたらしい。
こんな事初めてだ…。
追い求めた理想の初めての理解者
夢物語だとも思われたこの長い戦争で
蛮族も人族も安らかに暮らせる場があまりにも
少ないだから父上と母上は自らの領地を
蛮族と人族が暮らせる共存圏として
中立の立場を保っていた。
穏健派のラミアやコボルト、アーマンなどが
ひっそりと暮らしていただが誰もが
その人達とも仲良く暮らしていた。
俺は知っている種族の壁など越えて信頼あえる
ことを…きっといつかまた実現させてみせる。
そう、誓ったが誰もが罵倒し愚弄し嘲笑う
その理想を恐れ誰しもが怖がる。
化け物共と暮らすことなど不可能だ…と。
誰も彼もがなりたくて化け物となった
わけでもないだろうに。
化け物の私から見れば…人族の裏に隠した本性も よっぽど悪魔の様におぞましく
恐ろしいと思うがなだからこそ…
こんなに純粋に喜んでくれた事が嬉しくて
…救われた気がしたんだ。
…………………………………………………………
ロゼ「水飲んで少しは落ち着いた?」
様々な感情が滝のように流れてきて
零れ落ちた涙を止められずにいた
アオイの手を握りずっと隣にロゼは居てくれた。
アオイは上手く声に出来ないので首を縦にふる。
ロゼ「ははは!案外お前って泣き虫なのな?」
「…あ~もう大丈夫だからさ。」
「ほら!にぃーって!」
アオイの頬を少しつねって引っ張り上げる。
アオイ「なっ、なんひゃっ!」
「やめひょろ!」
ロゼ「なはは!笑った~。」
アオイ「なんだよ…ぷっははは。」
ロゼ「なぁ、話し聞かせてよ。」
「ロゼ兄さん聞きたーい。」
アオイ「誰が兄さんなんだよ…。」
ロゼ「じゃあお前何歳よ?」
アオイ「27 」
ロゼ「うぇ?!年上〜まじか…見えね〜。」
アオイ「それはどういう意味だっ!」
「たくっ。」
ロゼ「まっまぁまぁ~話し聞きたいってのは」
「ホントだから。」
アオイ「…長くなるけど…いいのか?」
ロゼ「おう。今日は雨が降ってて俺も」
「寝れそうにないからさ。」
「とことん話そ〜。」
アオイ「そうだな。アンタの夜更かしに」
「付き合おう聞いてくれないか?」
アオイは、話した貴族公爵の家柄に生まれ
幸せに過ごしてきた日常があっという間に
蛮族軍に壊されたこと、そしてその裏には
薄汚れ貴族や隣国の思惑があったこと。
今は囚われの身で強制労働の身であること。
誰に話しても夢を認めてもらえず
罵倒されてきたこと。
今までの事を話した。
ロゼ「そっか。」
アオイ「…それだけなのか?いや気が楽で」
「助かるんだが。」
「驚いたりはしないんだな。」
ロゼ「まぁ〜このご時世生きてりゃ」
「色々あるでしょ俺もだしね。」
アオイ「そういうお前は話しないのか?」
ロゼ「俺〜んーそうだなぁ。」
「アンタさ俺見ても態度かえないよね〜。」
アオイ「ん?」
ロゼ「異国っぽい服装ってだけでここの人達」
「最初は目も合わせてくれないやつ」
「いたからさ〜アオちゃんみたいな奴は」
「新鮮だったかな。」
アオイ「父が大和の国出身なんだ。」
「それ、大和の羽織だろう?」
「…深紅の布地丁寧な刺繍これを作った方は」
「それは素晴らしい針子なのだろうな。」
「俺も一度習いたいものだ。」
柔らかい微笑みを浮かべる。
ロゼ「っ…」
ボソッ「やっば…コロッと落ちそう」
ロゼ「あ~えと後、アオちゃん連れてきたのさ」
「実は本当に雨の日って寝れないんだよね。」
「だから、酒のんで夜開けないかなーて。」
「昼にあった時から気になってたしさぁ〜。」
アオイ「雨、苦手なのか?」
ロゼ「昔、ちょっとね。」
アオイ「そうか、無理には詮索しない。」
ロゼ「まぁ…アオちゃんと大体おんなじ」
「俺んちは人族に襲われたけど。」
アオイ「…そうか、一緒だな。」
ロゼ「はは、そうね。」
アオイ「そうだ寝れないと言っていたな。」
「ちょっと来てくれ。」
ロゼ「え?ちょっ何??」
アオイはロゼの手を引っ張る。
そしてベットに横たわり…ポンポンと叩く。
ロゼ「ちょ…えぇ~。」
目で早く来いと訴えてくる。
「はいはい、もう、分かりましたよ〜。」
ロゼはおずおずとベットに寝転ぶ。
アオイ「よしよし、寝る体制になれたなら」
「いけるな。」
ロゼ「いや、俺は雨音聞いてると」
「ダメなんだって。」
アオイ「ああ、だからこうする。」
アオイは自身の胸にロゼの頭を持っていき
抱きしめる形になる。
アオイ「こうすれば…聞こえづらいだろう。」
トクトクと心臓が動いている音がする。
呼吸をしている音がする。
それになにより
ロゼ「うん…温かいわぁ…。」
アオイ(眠れない夜に母様は…)
(こうしてくれていたな。)
頭を撫でられた。
ロゼは驚いたがそれよりも撫でられたことで
安心したのか力が抜けていく。
アオイ「ん…お休み。」
そして夜が明けた。
ロゼ「めっちゃ寝た。」
「やば…こんなに寝たの何年ぶりだろ。」
「おおーいい天気だしサイッコー。」
アオイ「ん…。」
ロゼ「お?起きた?おはよー。」
アオイ「ん…眠…い。」
ロゼ「おぉーと?」
「よし、ここは元気よく〜」
「おっはよ~!!」
アオイ「…」(イラァ)
アオイ「……………………………ロゼ」
ロゼ「ん?なに?」
アオイ「食べれないのあるか?」
ロゼ「ん?野菜!緑の奴とか!」
朝食は緑野菜たっぷりポトフになりました。
ロゼ「ううっごめんってぇ〜。」
「起こそうとしたたけなんだってば〜。」
アオイ「次はもっとちゃんと起こしてくれれば」
「良いぞ…まったく困った奴だ(笑)」
ロゼ「次こそはちゃんと起こすわ。」
アオイ「後、作り置きしといておいたから後で」
「火にかけてまた食べるといい。」
「携帯食も無さそうだから作っといた。」
「裏の仕事してるなら戦闘時の食料も」
「必要だろうと思ってな。」
ロゼ「アオママァ〜♪」
アオイ「やめろバカ。」
「じゃあ俺は行く…言わないと思うが」
「もし、このことを流したら」
ロゼ「それはお互い様でしょ?」
アオイ「それもそうだな。」
「それじゃあな。」
アオイはメイに乗り飛び去る。
――――――――――――――――――――――
ロセ「ーー…あれが例の悪夢のカラス…ねぇ?」
「まさか、アステラ・クロウが持っている」
「隠し玉がこんなに綺麗な色男とはねぇ。」
闇ギルドアステラ・クロウ
カラスが目印のギルドで裏切り者や内通者
自身のシマを荒らすものを絶対に許さない
怖がられている最強格の闇ギルドだ。
「聞いてた通り確かに蒼眼に漆喰の髪」
「そして…カラスのような耳と翼。」
アオイの耳は黒い翼の様になっている
背中には折りたたんだ翼があるのを確認済みだ。
「そして首についた奴隷紋も。」
「けど、殺すって依頼だもんなぁ〜」
「………。」
アオイの事を思い出す。
ツンケンして怖い人だが…
信念があって根は優しくて温かい人だった。
「やーめた、んなことよりアオちゃん」
「のこともっと知りたいし〜。」
「…邪魔するなら依頼者消すまでだし〜。」
「俺、気に入ったら手放さないタイプだから」
「よろしくねア〜オちゃん♪」
こうして奇妙な出会いをしたのだった。
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