野菜と肉と薬草の葉巻き3

 湯がいた薬草と茹でたコカトリスの肉、野菜を細切りにしたモノを薬草の上に置き巻く。それをフライパンへ移し、薬草独特の苦味を消すため師匠はみりん、しょうゆ、砂糖と甘めの調味料を作り、焦げ目が出てきたところで流し入れる。煮込むように焦げないよう時々返しながらフワッと漂うは甘い香り。


「ハク、皿」


「はい、なのです!!」


 師匠の言葉に皿を取り出し、そこに丁寧に焼き上がったものを乗せて行く。

 甘い香りと食欲をそそる匂い。それだけでは物足りないだろう、と食べ盛りなゼゼ向けに白米を炊き「さぁ、食べるがいい」とおぼんに乗せ出す。


「いいのか?」


「あぁ」


「マジで食うぞ」


「構わない。薬草巻きをご飯のお供にしても良し。タレをご飯の上に少しかけお供にするのもいい。食べ方は自由だ。薬草が嫌いなら抜いても構わない」


 真顔で師匠はそう言うとゼゼは薬草巻きを一つ箸で摘む。薬草があまり好きではないのか一度は剥がそうとするも『じー』と見つめるハクの視線に手を止め、目を瞑りながらパクリ。


「ん!? 苦く、ない。な、なんだこれ。スゲー甘くて食べやすいし。薬草の苦味が逆にアクセントになっていい。薬味代わりっつーのか? 野菜苦手な俺でも食える。マジで上手い」


 薬草巻きを一口する度、ご飯をこれでもかと口の中へ。リスのように頬を膨らせながらも良く噛む姿は相当気に入ったのだろう。傷そっちのけでお茶碗を差し出す。


「おかわり」


 お茶碗に山盛りのご飯。

 そして、追加の薬草の葉巻き。


 ガツガツと大食いでもしているのかと突っ込みたくなる見事な食べっぷり。「そんなに急がなくても」と師匠が言うも「うめーのよ」とゼゼの箸が止まることはなかった。

 ハクはゼゼの食べっぷりに必死にそこらじゅうの草を掻き分け薬草を探し、師匠は「腹が満たされるまで食え」と負けじと作る手を止めない。


「師匠、薬草無いので解毒草でもいいですか?」


「いや、こっそり持ってきた紫蘇がある。薬草とは違いさっぱりとした味わいになるだろうからソレにする。軽く洗ってくれ」


「あいあいさー」


 紫蘇を手で優しく洗い、師匠の元へ。師匠は右手で焼きつつ左手で器用に巻いてはフライパンへ放り込む。器用で早い手付きにハクは目を宝石のように輝かせ見る。


 ――師匠、かっこいい。


 んふふっ、と幸せな笑みを浮かべていると「ほら、運べ」と山盛りに盛り付けられた皿。「はい、なのです」とハクはゼゼの元へ小走りで向かうと「ん」とご飯のおかわり。


「まだ食べるんですか?」


「早くしろよ。腹減ってんだ」


「むー。食料無くなっちゃいますよ」


「んなの、知らねーよ。ほら、寄越せ」


「んー。師匠ー」


 食欲旺盛なゼゼに困り果てたハクは師匠に呼び掛けると「好きなだけ食わせとけ。食料から調達すればいい」と止める気配の無い言葉にハクは頬を膨らませ「はい」と不機嫌に渡す。

 後、具材がなくなり【豚肉と生姜の紫蘇巻き】【豚肉と薬味の解毒草巻き】と中身が代わり最後に食料が尽きる。


「あー食った食った。ごちそーさん」


 満足げにニヤリと笑うゼゼ。二人分、数日分の食料は全て食われ、師匠は溜め息。ハクは「むむっなのです!!」とゼゼに向け立つや腰に手を当てた。

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