第42話
「ふーん。犬ひいたらスライムの魔王種だったって?」
「そんなことあるわけないだろう」
紬と杏奈はめちゃくちゃ不審な目で見ている。
そりゃそうだ。俺も信じない。
「まぁ、ヒーローに秘密はありますからね」
そして遥も信用していなさそうだ。
というか、ヒーローってなんぞ?
「え? ヒーロー?」
「い、いえ、何でもないです」
遥はごまかすような表情で言った。
まぁ、予想通りの反応だ。別にいいけど。
「まぁけど、正直に話したよ。信用できないのは分かっているが」
若干投げやりに言う。
「…」
「そもそも、それなら何故隠していたんだ?」
紬は考え事をしながら見ていて、杏奈はさらに聞いてきた。
「・・・・・・その日、円環が発生したからな」
「ああ、なるほど」と紬。
「円環と関連づけられるのをおそれたと。あれは関係ないのか?」と杏奈。
「関係はない、と思う」
実際、俺が不審に思っていた称号とは関係していなかった可能性が高いしな。
実際のところは分からんけど。
「ま、もし本当にそんな訳の分からない方法でレベルをあげたのなら、それも分からないな」
杏奈が言う。
まぁ、それはそうだろうけど言う必要ないやんけぇ。
「それで、ダンジョンに入っていたのはとりあえず試してみるためですか?」
「まぁ、そうだね・・・・・・。遺跡の調査もしたかったし」
遥が聞いてくる。
「遺跡?」
「円環の情報がほしかったんだよ。ひょっとしたら自分のせいかもって思ってさ」
「ふーん?」
「ほら、魔王種の情報って遺跡にあったって話だろう? だからあの円環の情報もあるんじゃないかと思ってさ。俺なら高レベルの遺跡にも行けるだろうし。その前になんかあんなボスが出てきたけど」
「…」と杏奈。
「なるほど。いろいろ考えてたわけだ。」と紬。
「すばらしいですね!」と遥。
「え?」
「い、いえ、何でもないです」
なんかさっきから遥の褒めがえぐい。何なんだ。
あの裏ボス戦の時のクール美女どこいった。
そして杏奈がなんか悔しそうな顔をしている。
「それで何故かあんなボスが出てきたと」
「ああ、あれは完全に予想外だった。」
「そういえば、出てきた理由に心当たりがあるみたいなことを言ってたけど?」
「あー・・・。さっき、スライムの魔王種を討伐した際に称号もらったって言っただろう?」
「そんなのあったか?」
「聞いてない」
紬と杏菜がそういった。
「え、そうだっけ? いやまぁ貰ったんだよ。その称号に『これよりその道が開かれる』っていう文言があるんだよね。で、あのボス戦の時にそのことを聞いたんだ」
「…そんなのあったか?」
「…聞いてない」
紬と杏菜が顔を見合わせる。
「私も聞いてないですね」
遥も思い出しながら言った。
「…そう? じゃあ俺だけだったのかな」
「ふーん」
紬が何か考え事をしている。
「つまり君の話だと、ステータスのない人物がいきなりスライムの魔王種を倒してレベル99となり、それと同時に円環が現れて、そしてあんなイレギュラーなボスを引き出した、と」
「そう…です」
胡散臭すぎる…。
こりゃ嘘くさすぎるわ。
だが俺の返答の様子を紬はじっと見て、そして遥や杏菜にうなずいた。
遥はちょっと驚いてうなずき、そして杏菜はより厳しそうな顔をした。
「で、今後君はどうするんだ? またダンジョンにこっそり潜り続ける? それとも他に伝手があるのか?」
今後なぁ。
ひとまず考えていたことを言うか。
「…いや、正直あんなイレギュラーが発生するなら潜るのやめて別の仕事にでもつこうかなと。伝手って?」
伝手ってなんだ? 親戚か? いませんが?
あそことはもうあまり連絡とってないしな。
「ダイバーとして世話してくれる人のことさ」
「いや、いない。そもそもそんな人がいたら一人でダンジョンに入ってないよ」
「…それもそうか」
いたら楽だったよなぁ。
事情を分かったうえで自由にしてくれるなら、もうちょっとスムーズに行けた。
「正式なダイバーにはならないのか?」
「シェイプシフターは発信器仕込まれるんだろ? いやだよ」
「まぁ、そりゃそうだな」
「それもこれも、あなた方が黙ってくれていたらって話だけど」
通報されるんかね。
そしたら首輪も家もない逃亡者生活か、首輪と家がある飼い犬生活か。
どっちが幸せなのだろう。
「…まぁ、そこで君にお話があるんだよ」
「お話?」
『お話』のルビが『強制』とか『命令』になってませんか?
カクヨムさん、ルビが表示されてませんよ?
バグってますよ?
「紬、まだ私は信用していませんよ」
「そう? まぁ確かに、まだ話を聞いただけか」
「ええ、そうです」
「とはいえ、全く信用できないっていうレベルじゃないんじゃない?」
「…」
なんか、二人の間で何かが進んでいるらしい。
そして紬は遥をみた。
「ふーむ。ちょっと喉が渇いたな」
「ん? あー。飲み物なんかあったっけな?」
そういえば何も出してないな。
まぁそれ以前に居場所ばれたショックで全部もってかれてたのがある。
あと換気ショックも。
「いやいいよ。ちょっと近くのコンビニまで買ってくる。杏奈、いこう」
「は? 紬?」
「いいからいいから」
え?
二人でいっちゃうの?
あれ、遥ってお嬢様じゃないの?
そしてあなた方使用人ちゃうん?
あなた方二人行ったら、俺と遥の二人っきりですが?
そんな疑問が頭を巡っているなかで、二人は外に出て行った。
バタンと扉が閉まる音がした。
「…」
「…」
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