第38話
フィールドの中央に行くと、いつの間にか水の竜巻が発生し、その中央に遥がいるのが見えた。
水の牢獄。
見えているのは水の竜巻だが、人がとらわれ得ているのをみて、そうみえた。
そしてその前にまた別の水が集っていく。
装甲をまとった水龍が生まれた。
「いたぞ!」
「見えてる!」
紬が答える。
同時に発見したようだ。
俺は水の牢獄を壊すべくハンマーで殴りつけるが。
「な!」
ハンマーが水の竜巻からはじかれる。
力900台をはじいた!? どんだけ固いんだ!
水流が常に流れているからか、ハンマーが入らない。
手を入れようとしても入らない。
無理に入れようとすると手がことごとくはじかれる。
本当に水の牢獄だ。
そして水龍は目の前に水の球を作っている。いや、光が募っている?
「あれは!」
あの光は、最初の蜘蛛型ボスの!?
まずい、あれが放たれたら死ぬ。 遥は確実に死ぬ。
焦って水龍を殴りに行くが、今度は逆に感触がない。
これ、水の部分はただの飾りか!
今度は水龍の中央にある核を殴りに行くが…。
「邪魔だ!」
水龍がまとう装甲がボスの身の回りから離れ、自由自在に動き回り、俺に攻撃を仕掛ける。
起用にハンマーだけ避けて、俺の体だけを核に近づけないようにしている。
「クソッ!」
どうすれば…。どうすればいい。
焦りを募らせて考えていると、魔法狙撃が飛んできた。
アイテムも飛んでいる。
エマと紬だ。
ボスの核に向けて多くの攻撃が飛んでいた。
もうヘイトとか知ったことかと魔法狙撃を連発している。
向こうもこのままではまずいと思っているのだろう。
だが、こちらも同じく浮遊する装甲にはじかれている。
攻撃を検知すると装甲が自動で動いている。
オートガードかよ!
最後の最後でそんな隠し玉なんて!
いまだ、水龍を落とせていない。
何か手はないか。何か…。
その時、俺はステータスを開いた。
何か惹かれるものがあった。
そして、そこに今まで見えていなかったものが見えた。
擬態対象:
スライム(100%)
天河瑞樹(100%)New!
天河瑞樹…?
さっきの盾の子? いつの間に!?
なんでもいい!
この状況を、変えるためのスキルを!
遥を守るために必要なものを!
そして俺が『天河瑞樹』に擬態するとスキルが表示されていた。
『上級守護術』
まだ何もしてないのに、スキルがコピーできた?
何故?
「使えるスキルなら何でもいい!」
そしてスキルの説明を読み、起動する。
俺の体が遥と水龍の間へと飛ぶ。
そして水龍の攻撃が放たれるのと、俺が盾を起動するのが同時だった。
「やっべええええええ!!!!!」
水龍の攻撃が盾を圧迫する。
圧力が腕にかかり、ミシリと音がする。
この攻撃は明らかに最初の『蜘蛛型ボス』の一撃よりも重い。
展開された『中級盾術』による魔力層が崩壊していっているのがわかる。
「押される! 押される!」
いざ『上級守護術』で飛んだが、何も解決になってねぇ!
このままだと死ぬ! 俺も死ぬし、遥も死ぬぞ!
どうにかできないのか!
俺は腰にあるポーションを全てがぶ飲みしていく。
「くそ!」
魔力層がまた一枚割れ、HPが減っていく。
『中級盾術』がいけないんだこれ!
『上級守護術』があるなら『上級盾術』もあるだろ!
スキルをよこしてくれよ!
だがスキルはいまだ『中級盾術』のままだった。
「畜生、一か八か、試すしかねぇ!」
試しに擬態率を少し上げる。
だが何故か擬態率が一気に跳ね上がった。
意識が・・・・・・。
俺が消えていく。天河瑞樹になっていく!
「アバババババババ」
力が抜けていく。盾がもろくなっていく。
何故?
ああ、そうか! ステータスが下がったんだ。
これではまずい!
飛びそうな意識の中、俺は叫んだ。
「だめだ! ステータスが下がればさっきの二の舞だ。彼女を守り切れない!」
擬態率が一時的に止まる。
「俺のままでスキルを使わないと!」
思わずそういうと、どこかから声が聞こえる。
『遥を守って!』
誰の声? 誰でもいい。
「わかった! 遥を守るから力を貸してくれ!」
『よろしくね』
声が消えていく。
ステータスが元の俺のものに戻る。
スキル『中級盾術』が『上級盾術』に変わる。
盾への衝撃が一気に和らいだ。
空中で今にも倒れそうだったが、普通に立てる。
敵の攻撃はまだ終わっていない。
だが、最初の盾を試したダンゴムシの時のような感覚。
「そうか、『上級盾術』になって盾の防御力が上になったんだ」
余裕ができて、俺は『上級盾術』の使い方をイメージする。
そして紬とエマに声をかける。
「魔法を跳ね返す! エマ、紬さん、合わせてくれ!」
「…! わかったよ!」「承知」
乱発していたエマの魔法狙撃が一時的にやみ、詠唱に入った。
「そなたは冥界の王、善悪を裁くもの」
「今の声、誰だ?」
何やら莉奈が変なことを言っている。
スキルの影響で疲れているのか?
「審判の時を願わん。」
敵の攻撃の勢いが弱くなっていく。
相手の攻撃の終わりが近づいていく。ボス戦の終わりも近い。
「敵なるは罪照らされし醜き魔物」
「ありったけの爆薬を喰らえ!」
紬がアイテムを次から次へと上空へ飛ばしていく。
「今、かの地にて裁きを受けよ!」
そして敵の攻撃が終わった。
「はねかえせええええええええええええええ!!!!!」
俺の盾から先ほどの水龍からの攻撃がそのまま放たれる。
勢いよく敵の核へと向かうが、そこに宙を自在に動いていた装甲が一斉に動き、何重の盾となる。
だが、もろい。先ほどの防御力ほどではない。
一枚ずつ貫通されていく。
「ヘルズゲート!」
エマの魔法が発動する。
装甲がなくなって裸になった核を中心に重力場が作られる。
黒い球体が発生し、その周囲に稲光が待っていた。
そこに紬が投げたアイテムが吸い込まれ爆発していく。
重力によって圧縮された爆発は何倍もの威力をたたき出した。
核の周囲を守っていた固い水がはがれ落ちていく。
そして盾による反射攻撃もすべての装甲を割る。
そしてもろくなった核に、反射されたボスの攻撃が刺さった。
核へと届き、ひびが入り、少しずつ削れ、塵となっていった。
「第1試練突破を確認しました」
「はぁ・・・・・・。終わった」
やっと終わったよ。ボス戦。
もう戦えん…。
俺の体がゆっくりと落ちていく。
後ろの竜巻が消えていくのを感じた。
『遥を守らないと』
どこかから声が聞こえる。
そうだ、遥。
遥が落下し、俺も落下していく。
遥は体が動かなかったので、俺がつかんで岩の上に乗せる。
「大丈夫か、遥」
遥は体を少しずつ動かしながら、こちらをうっすらとした目でこちらを見る。
「うん…。あれ、あなた、誰ですか?」
遥の表情は俺を見ると不審そうな表情に変わっていた。
「え?」
どういうこと? 記憶喪失?
こんな短時間で?
「その顔…。いやその服装は旭?」
「あ、やべ」
しまった! さっき天河瑞樹から戻った時だ!
今、俺は自分の素の顔をさらしている!
慌てて顔を適当な顔に変える。
「え? 顔が…。 シェイプシフター?」
「ああ! さらにやばい!」
バカかよ! シェイプシフターってばれたよ!
やばい! にげろ!
駆け出す。
「ちょっと、待って!」
遥の声を後にして、俺は逃げ出した。
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