第83話 バンドやろうよ!
「―――丹菜に報告がある」
「何ですか? 神妙な面持ちで……」
「今日、クラスの女に言われたんだが……俺……クラスで一番モテてるらしい……」
「わぁ♪ 皆さんやっと正吾君の格好良さが分かってきたようですね」
「あれ? 嫉妬しないの?」
「嫉妬する必要なんてないですよ。だって、正吾君、私しか見えてないでしょう?」
「まぁ、そうだな」
「なら問題ありません。心配の必要もありません」
「そっか……想像してたリアクションと違ってちょっと戸惑ってるぞ」
「私は正吾君の婚約者ですからその位じゃ動じません」
「そうか……そう言えば、文化祭、丹菜達のクラスは何やるんだ?」
「普通の喫茶店です」
「普通のか?」
「普通のです」
「よく周りが普通ので納得したな」
「してませんよ」
「へ?」
「最初メイド喫茶って決まったんですけど、陽葵が全力で拒否しました」
「なるほど」
「正吾君のクラスは何やるんですか?」
「お化け屋敷」
「またですか?」
「そう。でも、丹菜のクラスだって、去年喫茶店やった奴いるだろ?」
「いますね」
「それと同じだよ」
「なるほどです。そう言えば、バイトはどうするんですか?」
「既に時間は前の時間に戻して貰った。だからまた帰りが遅くなる」
「分かりました。ちょっと私のやる事の流れがスムーズになりますね」
「それ言われるとなんか複雑だな」
「気にしないで下さい」
・
・
・
———昼休みの部室で、いつもと同じく六人でお弁当を食べている。
「愛)文化祭まで後少しだね。空、私が揚げた唐揚げとそのシュウマイ交換しよ。はい、あーん♡」
「空)あーん♡ モグモグ……美味い。愛花、はいシュウマイ。あーん♡」
「愛)あーん♡ モグモグ……美味しい♪」
いつもの光景だ。愛花ちゃんのこんな姿、多分、誰も想像出来ないだろうな……空君もだけど……。
「正)そういえば全然顔出した事ないけど部活ってどうなのよ?」
「空)ほぼ毎日部活っぽくやってるな……あーん♡」
「大)ただ、ちょっと悩むところもあってな」
「正)なんだ?」
「空)大河、文化祭出たがってんだよ」
「正)———悩ましいな」
「空)俺らは出たくないんだが……あいつらの事を思うとそれも酷な話なんだよな……あーん♡」
「正)確かにな……出てもいいんじゃ無いか?」
「空)たださ、『ハイスペックス』として出たいらしい。俺らは前回のローブとマスク、処分される前にそこに確保してるから問題ないん……あーん♡……モグモグ……ゴクン……だけど、あいつら普通に素顔で出るつもりなんだよ」
「正)『ハイスペックス』としてって、メンバーになったつもりなのか?」
「空)俺らと毎日のように練習してるから、一緒に弾いてるやつとバンド組むのが筋だろって事らしい」
「正)まぁ、正論だな。普通のバンドなら」
正吾君はそう言うと私の方を見た。
「空)俺もそう思う。普通のバンドなら」
空君も私を見る
「大)やっぱりそう思うよな? 普通のバンドなら」
大地君まで。
「陽)普通ならね」
陽葵もかい!
「丹)何で私を見るんですか?」
「正)お前が普通じゃ無くしてるからな」
「陽)そ、丹菜が居なけりゃただ上手いだけのバンドなんだけどね。丹菜が居るお蔭で自分のレベル越えなきゃ付いていけないって……毎回必死だよ」
「大)ま、お蔭で毎回ライブは最高に満足してるけどな」
「正)あいつら、ホントのハイスペックス知らないからな。知らずに出たらあいつら音楽そのものを辞めかねんぞ」
「空)そうなんだよ……丹菜が入って練習しても練習の時の本番と全然違うからあいつらに教える事も出来ないし……」
「正)説明して諦めてもらうしか無いな」
結局ハイスペックスとしてステージに上がる事になるんだけど……困ったね。
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