第101話

 うーん。……。

 濃厚な牛乳……?

 まるで、生クリームに近いような……。

「あ!ああああ!」

 高原とかに売ってる、瓶入りの1000円くらいする高級牛乳!

 テレビで見たことがある!あるよ。飲んだことはないけど、レポーターの人が生クリームみたいだとか言ってた。

 実際生クリームに近い……脂肪分が多いんだよね。

 さらに言えば……現代日本の牛乳は、安定化されるように加工されているけど、この世界ではそんなことはしてないはず!

 安定化、つまり、脂肪が分離しないように……。脂肪が分離しないようにしてないということは、分離するということだ!

「ああああ!あー!」

 言葉にならない。

 ワーシュさんありがとう!

 スライムを入れるために買ってもらった瓶に、牛乳が入れてあります。蓋も付いている瓶……スライムさんを入れたら蓋はしなくていいはずですが、スライムさんを入れる以外の目的で使うためには蓋がいるから蓋つきで売っているんでしょう。

 ……脂肪分の高い牛乳を、瓶に入れて蓋をしたら、やることは一つですよね?

 一つ、です、よね?

「あー、リツ兄ちゃん何してるんだ?」

「キュイ?」

 おお、二人が帰ってきました。

 ふんふんふんふんふんっ!

「おかえり、ふんっ」

 言葉をかけながらも、必死に瓶を上下に振り続ける。

「リツお兄ちゃん、何を……して……?」

 えーっと、何をしているかといえば。

「料理?」

 料理の一部といえば一部になるのかな?

 日本だと、ここから料理することはないけれど……スーパーで買ってくればいいんだから。

「え?なんか、おいらの知ってる料理と違う……」

 キュイちゃんが私の真似をして瓶を持ち上げ、前後によいしょよいしょと振り始めた。

 小さな体で、両手で瓶を持って一生懸命振っている姿……かわいい!

 おっと、かわいさに体から力が抜けて瓶を振る手がふにゃふにゃになってしまった。

 ダメダメ、もっとガンガン降らないと。

 ふんふんふんふんふんっ!

 私の前でキュイちゃんが「キュイっ、キュイっ、キュイっ」と、真剣な顔をして瓶を振っている。

 ぱちゃぱちゃと瓶の中の牛乳が音を立てている。……うう、かわいい!全然振れてないけど、かわいいから、なんでもいい。

「料理……?」

 ミック君が首をかしげて私とキュイちゃんを見ている。

 それから、うずうずと体を動かしているのが見えた。

「ミック君も、やってみる?」

 振っていた瓶をミック君に差し出す。

「うんっ!振ればいいんだよな?」

 ミック君が嬉しそうに私の手から瓶を受け取った。

 あー、ありがたい!

 ちょっと腕が疲れて来たのよね!私は腕を休めることができるし、ミックくんは嬉しそうに瓶を振っているし、ウインウインだ。

 えーっと、そう。作っているのは、バター。

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10円魔力の駄菓子ごはん ~錬金術じゃなくてただの料理です~ とまと @ftoma

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